3019/3046
最終章その3 鳩達の潜在意識
電話の向こうの沢木が、ふふっと笑い、
「ほ・・何でじゃ?その訳は」
「2羽の飛翔を見とったら、こう言う時にひょっとしたら、生かせるんかなと思うたんです」
「・・ほうか」
沢木は、やはり由香里が捉える観念的世界の奥深さを感じとっていた。
谷から吹き上げる唸る風、横から激しく揺さぶる突風に近い風、天から叩きつけるようなダウンバースト。どれも克服して来た2羽だった。それも全て承知の訓練だったと言うのか・・香月博士、自分と決定的に違うのは、先を読んだ訓練では無く、感覚的に彼女が捉えたものなのだと言う事である・・。
持ち寄り日・・そして、放鳩当日がやって来る。沢木が由香里と一緒にテラスで鳩の帰りを待っている。




