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再会
今日の潮はええで、頑張ってや・・と言いながら、場所を譲ってくれた沢木に感謝しながら、洋司は煙草に火を点けた。その煙草も、数年振りであった。
「あ・・お父ん、煙草吸いよる・・何時から?」
由香里が聞く。
「はて・・何年振りかのう・・ま、ほんじゃきんど内緒の?母さんには」
「ふふ・・ええよ。黙っといてあげらいな」
由香里が、真剣に投げ分けた3本の竿の穂先に注視している。
この心落ち着く、静かな時間。愛娘の事故、信号無視で横断歩道を登校中に撥ねた若いトラックの運転手に対する激しい怒り・・その時真っ先に駆けつけてくれたのはじゅんさんだったな・・洋司は思った。殴りかからんばかりにその運転手を怒鳴っていた姿を思い出す。




