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再会
チヌ釣り名人と呼ばれた沢木に同行し、色んな事を教わった。じゅんさん(沢木)は嘘が言えない真っ直ぐな人物。故に、そのコスイと言われる姑息な釣り人に、嘘つき、大法螺吹きと言われ、自分が娘の事故を機に釣りから遠ざかったと同時期、チヌ釣り倶楽部を解散したと聞いている。
人物的にも、尊敬出来る人だった。その優しい人柄は、この場でもそうであった。
車に向かい、
「由香里ちゃん・・しばらく見ん間にえらいべっぴんさんになったの。お父んと一緒に楽しんでくれや、のう」
にこにこと微笑みながら、洋司達の釣り支度を手伝うと、又近い内に話でもせんか・・と言いながら、沢木はこの場を離れた。次第に遠ざかって行くその車に向かって、深々と頭を下げる洋司であった。
父と娘、8年振りの釣りであった。投げ竿を3本セットし、遠近扇形に投げ分けた。




