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車椅子の少女
「うち・・こなん体に事故に遭うてなってしもて、色々辛かった時期もあったきんど、川上さんや香月博士の本読みよったら、うちもレースしたい思うたんよ。おっちゃん、何でうちにええわとゆうてくれへんの?」
訴えるような眼で由香里は松本に言う。
「あんな・・競翔ちゅうのは、単に遠くへ鳩を連れて行って戻って来るのを待つだけや無いんぞ。そらな、由香里ちゃんが鳩飼いたい、競翔したいゆう事に対して、無碍に断っとるちゅうんと違うんじゃ。ちょっとだけ聞いてくれるか?お母さんも・・」
「はい・・」
松本は、この地方の連合会の事情、周辺の環境、そして鳩競翔についての過去のデータ等を示しながら、何で自分が今競翔をやりたいと訪れている母娘の対して自分が躊躇しているのかを説明した。