伸びる若芽
「いいえ、私にはほんの一部しか見えていないのです。しかし、恐らく今大きな流れがあると感じるのです。それは、当時の沢木さんにもきっと得体の知れない先を感じられた事でしょう。そして、その個体がどのような変化の過程を遂げて行くのか、それが香月系への追求であり、変化と言う形を感じた沢木さんの競翔鳩史観だと思うのです。私は学問と言う形で研究論文を残し、次代にそれを繋ぐ事が出来ます。しかし、沢木さんの場合は、一代でその見極めを完成せねばならなかったのです。ですから、自分の信念と夢と、色んなしがらみもあるのが人間。進む道を選択するしかありません。洋司さんは、沢木さんのお近くに居られる一番の理解者であり、私から見ても羨ましい限りの師弟関係を築かれています。由香里さんに託された思いとは、重圧では無くて、2羽に対する深い慈悲の気持ち、心なんだと思います。動物に愛情を注げば必ず答えてくれます。又、それは結果では無くて、飼育者の気持ちが以心伝心すると言う事なのだと思います」
「・・何となく仰られる意味、理解しました」
洋司が頭を下げると、香月はにこりとした。




