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伸びる若芽
そう言う沢木は、上機嫌。奥へ行こうと言う事で、栄子に幾分客足が鈍って来たので、パートの喜伊さんと一緒に交代してやってくれと、コーヒーを渡した。
奥の部屋では、沢木とりが、今日渡された特大おにぎりを見て、笑っていた。
「前言取り消す。とり君、こりゃ食えんわ。でか過ぎて。はっはっは。ほな、包丁でちょびっと切らせて貰うわ。丁度10時じゃ。お前、残り食うてしまえや」
「はい、ごっちゃんです」
朝の早い内から仕事をこなしているとりだ。10時と言えばお腹が鳴っている頃。沢木の気遣いがこんな些細な言葉の中にも見える。
沢木は包丁を当てたのにも少し理由がある。おにぎりの硬さを見るのと、ご飯の粒を確かめる事だ。この握り飯は、沢木が自家精米している米とは違うものだろう。又、当地の米と、伯方の塩を使っているのだろう。とりが、惜しがる程の握り飯。当然、美味いと言うのは承知している。




