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陽射し
そのままで、佐々木家に到着すると、洋司が待っていた。ユニックで吊り上げた鳩舎は2階のベランダにすぐ収まり、沢木は帰ろうとする。
「じゅんさん、ゆっくりして行かんな、茶でも」
「それがの、よおちゃん、急な出張で今から名古屋まで行かないかんのよ。この足で松山の飛行場まで走るきん」
「そなな、忙しい日に済んませんでした」
「何々・・未だ飛行機の時間には充分間に合うわ。ほな」
嬉しくて、もう鳩舎に密着してじっと見ている由香里に声を掛けて、沢木は佐々木家から帰って行った。その名古屋出張が、三島親子の見舞いだったとは、佐々木家は知る由も無かった。
勇次の手術を急いだのは、沢木がその天性の勘の鋭さで感じたように、一刻の予断も許されない状況にあったからで、あの日沢木に出会わなければ、その幼い命は消えていたかも知れない・・
これが、人生に置ける運と、縁なのだ。
沢木の見舞いに、三島夫婦は立ち上がった。




