美香の苦悩爆発
「あんたも狭いそなな所で窮屈じゃろ、家建てる足しに私もお金出すきんとの、ほやきんどとても家を建てるには届かん僅かの金じゃった・・角店で商売もしよんのに、家出てどこで生計を立てるか、そなん事は全く考えても無い。とにかく目障りじゃったんよな、その3男の部屋が。それをわしのおばあの所に、今度はその長男の嫁が来てが口利いてくれ、3男に言うてくれ言うて頼むんよ。わしのおばあは、おじいにその事を言うた。ほしたら、おじいがうんちゅうてうなづいて、貯めて来た自分の通帳をぽんと3男に渡したんじゃ。その時、おじいはこう言うた。長男夫妻等はとうとう畜生道に落ちてしもうとる。そなな畜生と同じ屋根の下に住む事無い。わしの土地が狭い畑じゃきんどある。そこで住め。家を建てる金はそれを遣え。返してなんぞ貰わん。わしの息子も娘も、もう立派に成長してわし等は二人ここで死ぬまで居れりゃ、構わんのよ、と。その3男夫妻は、畳に頭を擦りつけて泣いたそうじゃ。それから、そなな仕打ちをした長男夫妻は、近所からも又親戚筋からも疎まれ、結局その土地を手放したんよ。それが、おじい、おばあちゅうんを尊敬し、わしは今もその事を胸に常に持ってここへ居る。美香ちゃん、人はのう、どなな鬼にも、仏にもなれる。自分ちゅうんを見失いそうな時は、自分にとって何があるんか、大事なもんを忘れんと、眺めるようにしたらどうかいの・」
美香の眼から涙が滂沱と毀れた。沢木の人生訓・・まさに祖父母の魂そのままだった。それを聞いた彼女は、どしんと胸にその言葉を響かせたのだった。




