周囲の変化
又、沢木は教祖じゃと揶揄する者が居る。じゅんさんがあんたに右向け、右といつ言うたのか?洋司が厳しい口調でその者に食って掛かった。釣り仲間も今は、やはり沢木に対する回顧口調だった。あの頃が楽しくて、懐かしい・・と。洋司は思った。その人の存在があってこそ、周囲が照らされているのだ。その光ある事を当然に思うな、人を批判するよりまず自分を磨けと・・沢木の反対派急先鋒だった新浜は、体調不良を理由に、燧灘競翔連合会を脱会した。居心地が悪くなった為だが、ちゃんと松本は復帰の門戸を開けている。どんな意見の対立や相違があっても、何の為に競翔と言う世界に自分が居るのか・・それを見失うなと言う言葉がそこにある。立場が意識を決定する・・そんな哲学的な言葉より、自分の分を知る・・人間は、その礎を心に築く事・・それは、決して無理・無謀・邪心を持たぬ事だと、彼は言う。
純粋に競翔鳩を愛し、それを自分の生き甲斐や、趣味としての空間と捉えるならば、自分は他人と比較しない事である。競争原理の中に身を投じない事である。どう自分自身を位置付けるかで大きく心の在り方が違って来ると思う。
この日洋司は、八重子と由香里に店を任して、自分では未だ行った事が無い沢木の道の駅に向った。




