夢に向かい
おおっ!・・周囲がどよめいた。沢木の周囲には何重にも人垣が囲んでいた。ここまで沢木が競翔鳩を賞賛する事があったのか・・過去に・・あった・・西条は思った。確かに居たのである。その鳩こそ、すずらん号・・だが・・
「これ以上の均整の無いような姿態、羽毛と筋肉と、主翼、副翼は得ようと思うても得られんじゃろ・・勢山系の血こそ消滅したやに見えても、この体こそ勢山系の血の成せる技・・」
「じゅん、ちょっと分からんのじゃきんど・・お前の説・・矛盾を感じるが・・」
西条が唯一指摘をするが、沢木は頷きながら
「まあ・・もうちょびっと聞いてつか・・今話しよんのは、体形的な特徴であって、この鳩の競翔能力であるとか、ほなな事は今は置いとるきんな、そりゃそうじゃろ?未だ海千山千の競翔歴じゃきん」
「まあ・・のう。けど、それでも皆が凄い鳩じゃとは認めとるきん」
西条が再び答えると、沢木が続ける。独演会のような話になるが、当の松本達はその中には入らなかった。若い競翔家達も、とりを中心に賑やかな論議の真っ最中。自分達の鳩の事で今は精一杯。他の鳩舎が使翔する鳩達にも興味はあるが、そこまで余裕なんて無いからだ。




