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由香里と勇次
大阪で一泊して四国に帰ると言う沢木と一緒の新幹線の中で、新川が、
「おい、沢木・・お前、又競翔の世界に戻るんか?」
明確に沢木は答えた。
「いや、戻らんです。せやきんど、ここまで関わった以上、見守るつもりですわ」
「せやけど、雌雄両性やちゅうのんは、びっくりしたわ。わし、初めて聞くわ」
「わしもね、半信半疑やったです。けど、香月博士が肯定してくれた。やっと納得出来たんですわ」
「ほな、お前ネバー号が両性具備ちゅうのも、半信半疑やったんか?」
「そうですわ・・そやって、ずっと雌鳩として登録されとんですきん、誰も疑わんでしょ?」
「はは・・お前の勘は化けもん級に鋭いわ。香月君をびっくりさせる奴やもんな、お前・・」
「ふふ・・香月さんは、わしの何百倍も凄い天才学者ですわ・・わしは、断片や枝葉を見とるだけの人間ですきんね」
新川は愉快そうに笑った。やっぱり、この男はわしが思う以上にどえらい奴や・・そう思った。
そして、四国に戻るなり、仰天の話を松本にする沢木だった。




