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新しい年に
1本とは10万円の事であった。大学出の初任給が5万円に届くかと言う時代に、これは相当な金額。驚くとりを背に、すたすたと沢木は帰って行く。
「あ・・あの。わしローンにしてもその金出すきんね・・沢木さん」
わははは・沢木は笑った。それでも、とりは申し訳無さそうな顔であった。
「おうおう・・まあ気が済むんなら、そうしてくれや。その前に結果出てから判断してくれ。2年で結果出んかったら、6掛けで引き取って貰うきん、大前田さんとはそう言う話になっとる」
「あ・・ほうですか・・けど庶民にはやっぱり高いとは思いますわ」
「それだけコストも掛かっとるわ。何しろ、1ドル=280円の時代じゃきんの、価値判断は、愛好家故のものよ、ははは」
何となく納得出来た。沢木は更に、今春、今秋に向けて始動をしているようである。
そんな沢木達と別に、とうとう工藤がベルギーからの輸入鳩を秋山・村本に披露していた。
それは、今や大企業に成長しつつある工藤食品㈱の御曹司ならではの圧倒的な導入鳩数であった。
「何羽・・居るんかいの、工藤」




