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由香里と勇次
「香月博士・・貴方が鎌足さんにお勧めした翠波号系統には、勢山系が合うのでは?とわしも当時思うて、進言したんですわ。何故なら、翠波号系統は、その大きな体を支える頑強な骨格と筋肉がある。そして、勇敢である・・しかし、その強引な性格は両刃の剣・・勢山系の柔らかい筋肉が備われば、鬼に金棒・・それは、もっと先までしっかりした系統に育つと思うたんです」
「然り!貴方のご高説、我が意を得たりです!」
香月程の男がここまで言った。その驚きに、沢木を良く知る新川さえも、沢木の顔をまじまじと眺めた。
「そやきんど・・わしは、間違うとりました。その勢山系の余りに深遠で優秀な血筋に、驚いたんですわ。それこそ、この血統だけで夜風系を凌ぐんでは・・と」
「分かります。それ程傑物だったんですね、すずらん号と言う鳩が・・」
「はい・・今までわしが見てきたどなな鳩よりも、その底知れぬ実力に完全にわしは魅了され、己を失いました。これこそ、完璧な競翔鳩やった・・わしは余りにも、その鳩を簡単に手にしてしもうた・・」
沢木の眼に涙が光る。それは、4人の心を強く打ったのだった。




