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車椅子の少女
「何やと?鳩を飼うじゃと・・おい、何考えとるんじゃ、由香里」
父洋司は、夕刻読んでいたスポーツ新聞をテーブルに置き、由香里に向き直り言う。由香里は、
「ええやろ?父さん、うちが面倒見るんやきん」
「ええやろ言うたって・・」
由香里が言うと、それ以上は父も言わない。事故以来、父娘の関係、夫婦の関係・・何かぎくしゃくとしたものがあった。母と言う母性、父と言う父性、そう言う感情と共に両親として我が娘に対する考え方や、接し方は違う。
「ええじゃ無いですか、お父さん、由香里がちゃんと面倒見る言よるんじゃきん」
八重子が、後押しすると、再びテーブルの新聞を取り、洋司は、
「勝手にせえ。そやきんど、父さんは面倒見んぞ、ええな」
洋司は再び気難しい顔をしながら、新聞を広げてそう言った。