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新たな誓い
そして、佐々木家。喫茶店は平常に開店する。昨日、店の段取りは皆が手伝ってくれた。体はしんどいが、通ってくれるお客さんが居る限り、出来るだけ店を開ける・・これは、客商売する者にとっては当然の事である。
なかなかこの朝は、由香里も起きて来ない。鳩小屋の世話をしながら、洋司はベランダから山を見た。昨日のレリーフは見事な物だったな・・暁に見える法皇山脈に向って鳩が飛ぶ・・勇壮で・幻想的で、無数の鳩の羽を下絵でも描いたのだろう、1枚1枚色を合わせて貼っている。切り絵のようで、それは違う。雪を被った 赤星山、更に西に赤石山、ニッ岳・・そんな事を思いながら、洋司は自分の出身校である、愛媛県立川之江高校の校歌を口ずさんだ。
『紫におう 法皇の 嶺にあふるる 暁の霧 遠く望みて 橘の 丘の緑の 映ゆるとき こころの鐘の 高らかに わが学舎ぞ 明けそむる・・・』
由香里が起きて来た・・
「お父ん・・どこの校歌?」
由香里は何だかだるそうな表情。
「由香里、お前ちょっと熱あるん違うか?」




