由香里立つ!
「もう、これ以上泣かさんとってつか・・じゅんさん」
洋司、八重子が又泣いた。意外に冷静に見ていたのが未優だった。
「これ・・父さん、今計画しとる老人施設に全部結びつくんじゃな?」
沢木は、
「未優、お前もちょっとは世の中分かるようになって来た見たいじゃのう・・ほうじゃ。わしは、今の好景気後の、ちょびっと先の未来を見とる。少子高齢化・・年金はほんのちょっとしか入らんかも知れん。税金は上がる。福祉は切り捨てられる・・全部、弱者に降り掛かって来る・・ほなな未来しか今のわしには見えん。ほれが、このアルバムじゃ」
写真が訴える圧倒的な世界に、どんと胸を揺さぶられた全員は、改めて沢木の真意を知る事になる。
沢木は更に言う。
「物が溢れ、土地の値はどんどん上がる。株も上がり続ける。そやきんど、そなな泡見たいなもんに乗っとったら、いずれは暴落するじゃろ、実態の無い世界はゲーム見たいなもんじゃ。もし、それで大金を得たとして、それは、本当の意味での成功とは言わん。わしのとこにも投機話なんぞ、無数に来る。そやきんど、乗らん。 乗ったら最後抜けれんようになる。わし等はなあ、守り伝承して行かないかんのよ。これまで培って来た伝統やら文化を。そのお年寄りを大事にしていかないかん。戦後の豊かな国、日本を創って来た、この人達を大事にせんで、何が経済発展じゃあ、世の中の進歩じゃ、新文化じゃあ・・」




