由香里立つ!
涙が止まらない・・洋司も八重子も、どんなにこの日を待ち侘びた事だろう。由香里は、深く病院関係者に頭を下げ、そして、津島師長、環の手を取った。これ以上に無い祝福の笑顔だった。京西は、奇跡の上に更に奇跡、そう形容した。このケースはS工大が学会に発表すると言う。人間の人知を超えた未知の分野・・その奇跡の回復の中に、香月が自ら開発したDNA研究、バイオ研究、クローン研究・・全てが濃縮されていた。この若い天才科学者は、前人未到の未来を駆けて行くが如くに・・
用意したタクシーに乗り込むと、由香里が母八重子の胸に顔を埋めた。気丈にこれまで堪えていた全ての感情が、彼女から吹き出たのであった。優しく抱く八重子。自暴自棄になった、全ての未来も夢も奪われた、あの日の事故・・それから7年と数ヶ月。あどけない輝く眼をしていた少女が、暗く淀んだ世界からどうにか、立ち直り、そして・・今、その輝く未来を取り戻したのだった。この日は、喫茶店を閉め、佐々木家の関係者だけで祝宴が営まれた。夜遅くなって、沢木、環、未優が訪れた。
もう、涙は無かった。これから見詰めるのは、未来のみ。
由香里は、入院中にまとめた、父が書いた佐々木鳩舎の原稿を見せた。




