由香里立つ!
環の見る所は、ほぼ的中していた。善さんが、和子と一緒に戻って来る。未優とは初顔合わせ。善さんは、寝入っている沢木を見て、少し心配顔。それは、新川元常務から、熱弁を奮った沢木の様子を聞いていたからだ。佐久間社長は、これから大変な舵取りを迫られる事になる。一人の役員を、特別扱いには立場上出来なくなるからだ。
鍋の用意が出来る頃に、沢木が起き出した。
「お・・晩飯か・・寝てしもうたわ」
善さんが、
「相当やったらしいな、役員会・・はは」
「嫌われたじゃろね、橋田さんには。ほんでも、言う事言わんと溝が深まるだけじゃきんね、歴代の役員とは」
娘二人は黙って聞いている。
「よう、言うて下さったちゅう者も居ったやろ、仰山・・そやけど、所詮長いものには巻かれろ・・そう言う体質はあるさかいにな、どなな世界にあっても」
「承知しとります。わしは、HZKの地位に留まっとるつもりは無い。ほんで、今の事業から手引くつもりも無いんですわ。浜田印刷所の件にしても、多額の借金は背負ったもんの、自力で返せる目処が立ったとこですきんね、石川君のデザインのベンチャーじゃって、これからもっともっと伸びる会社。キャラクターが売れたら、ほれだけでも商標登録して、使用料で飯食えるきんな」




