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由香里と勇次
その誠実な仕事振りと、コーディネーターの才能がようやく現在認められつつあった。その精神こそが、新川家具での、新川社長の「仕事の鬼」善さんと言う職人の技に学んだ事だからであった。
新川は既に、この沢木が心身共にもう一本立ちした事を感じた。桜井はこの飾らない沢木の人柄に共感を覚え、尊敬する師としてこの日目標を定めていた。
そして、次の日は一日付き合ってくれと言う、新川相談役のお供でMデパートの屋上にやって来た沢木であった。見るなり、
「おう、競翔鳩の品評会かいね・・ははあ・・なるほど」
「沢木、ちょっとそこら辺ぶらぶら見とってくれ。わしは、ちょっと会いたい人居るんや」
「ええ、どうぞ」
ぐるっと回った優秀な競翔鳩達の中で沢木の足が止まった。
そこで、じっとその鳩を見て動かなくなった。
その沢木の視線に少し離れた所から、見ていた者が居た。そして、その者は沢木の所に近寄った。声を掛けたのは未だ30歳手前で、涼やかな眼をした青年であった。




