由香里立つ!
磯川は、同感しながら、深く嘆息した。若いこの英才が、どれだけ今の病院経営に腐心しているのか良く分かる。
「世の中、景気が上がって、誰もが裕福で物が溢れる時代じゃあ・・そやきんど、忘れとんですわ。その先にある、脆弱な資源の無い日本の基盤ちゅうもんを・・ 高齢化、少子化が進む何十年かに迫る、身近な未来を。経済発展じゃ言うとりますきんどね、この経済は、株の暴落、輸入資源の高騰で、あっと言う間に傾く危険性を持っとる。そうなった時、企業は己が身を守る為に大規模なリストラをして、賃金の安い外国にその生産拠点を移す。給料が下がって、住宅ローンも払えん、高所得者と低所得者の差がもっともっと広がる。その時に、荒れ果てた田畑に眼向けたって、残留農薬まみれになったその土地は、もう再生出来んとこにあるやも知れん。又、そこに投資して、どれだけ今の日本の農業が、自立して成り立って行けるだけの収入を得る事が出来るか・言う事ですわ。米だけでは、それだけ収入を得る事は出来へんのですきんね。野菜を中心に、相場に左右されるような生産では、共済ちゅう保険に守られとるだけで、真の生産力には成り得ん。わしはね、磯川さん、その土地に農業学校なり、試験場なり、若手が育つ環境を作りたいんですわ。その為には、今のお年寄りの力も借りにゃならん、衣食住、ほんで、医を含めた複合的な村興しの空間を作る計画です」
「・・・・本当にスケールが違いますね・・で・・沢木さん、そのお話から私の思考を発展させて行くならば、間違っているかも知れません。例えば、沢木さんは3年内でその計画を実行されようとされている。そして、お嬢さんの環さんが、当病院の老人ケアセンターに勤務されるに当たり、その経験を積んだ上で、沢木さんが誘致する・・或いは個人であっても建造されるおつもりの、例えば特養老人ホーム或いは老人ケアセンターに戻って来る・・そう言う事に繋がる訳ですか?」




