由香里立つ!
沢木は黙って聞いていた。和子の言う通りだろう、S工大から指名されて特別医療スタッフとして、これ以上の無い成果を示し、既に主任の肩書きを準備していると言う、三観総合病院の動きを和子は知っていた。
「由香里・・ほんまに頑張った。世界的な権威の京西博士の執刀と、善さんの前じゃきん言えるきんど、香月博士の世界最先端を行く、遺伝子工学による組織培養・・ほんで、由香里の元の足と寸分違わん人工の足・・ぜーんぶ含めて。奇跡とか言い様の無いもんじゃった。そこから、治療スタッフとして患者に向き合う、患者の揺れ動く心の内面に対する、自分達の気持ちの有り様・・うち、もう一生掛かってもこなん経験出来る事無いと思う。ほんま・・自分自身凄い体験じゃったと思う」
「それは、そうじゃろのう・で・・?」
沢木が環の顔を見詰めながら聞いた。優しい眼だった。この時、環の眼から涙が零れた。殆ど泣き顔等見せない気丈な娘である。
「由香里は、もう・・大丈夫。うちが居らんくても、一人で立ち上がって行ける。うちは・・もっと違う現場で、色んな患者と向き合いたい」
「そななん!三観病院でやって出来るで無いな、どなな病院行ったって同じじゃわ、環」




