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由香里立つ!
「ああ、ほれは、止めといた方がええで、善さん。昔ながらの製法なんちゅう酒は無い。熱燗したら、多分・・飲めんきん。善さん、灘の剣菱出すきん、ほれで熱燗やってつか」
「ははあ・・所謂化学調味料かい(これは、皮肉を込めての意)」
「まあ、どこでもやっとんよ。これはしょうが無いわ。時代の流れじゃきん、ほんでも、剣菱に負けんええ酒じゃと、わしは思うとるきんな・・まあ、同じ熱燗で飲んで味比べして見てつか」
「よっしゃ、面白いな、はは」
はははは・・笑いが満ちる。もう家族として切れない位善さんはその一員である。
環が、ふぐ鍋にかなり箸が進んだ時、話し出すタイミングを考えていたように、ずばっと切り出した。
「あんな、親父、母さん・・うち、春になったら、病院変わろ思いよんよ」
「え・・」
和子は箸を止めた。
「・・何でな、環。あんたの働きは、あの津島師長も認めとんで、今は。病院にとっても、絶対辞めるやか言うたら、引き止めるわ・・何で?由香里ちゃんも戻って来る言よんのに」




