由香里立つ!
そして、翌朝となった。放鳩は6時、20年振りの復活と言う秋の700キロ競翔は、最終的に4連合会、1257羽の鳩群となって、時折見せる、厚く、黒い雲の中から指す陽射しの中を、長い帯となって視界から消えて行ったと言う。何十にもうねるその羽ばたきの波は、空に浮かぶ竜に似て、何時の頃からか、その竜の名を冠する鳩が、稀有の銘鳩と称されるようになった。それは、白竜号、紫竜号と言う傑出したGCHがこの世界に、今も永久に破れぬだろう金字塔を立てたからである。以降も、紅竜号、雨竜号、黒竜号、隻竜号。そして、現役最高鳩として君臨するだろうと言われている清竜号を筆頭に、四国の片田舎にあって、そのいずれの鳩にも勝るとも劣らぬ素質と目される、閃竜号、輝竜号、松竜号が居る。この鳩達が何故注目されるのか、それは、先の鳩達に共通するDNAと言う血が存在するからだ。いずれの鳩にもその血は流れている。
沢木と言う天才競翔家は、その血の誘いにより、この世界に再び戻って来た。彼が示唆するその目的とは・・又、香月が研究し、確立しようとする香月系の将来像とは、殆ど同じであった。何故、この竜が生まれて来るのか、何を彼等に向わせようと言うのか・・それは、これから先に起きる数々の出来事が証明して行く。




