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転換
「あの・・」
イクちゃんが、少し心配そうな顔と声で、沢木にどこへ行くのか?と、聞こうとするが、沢木は、
「まあ、もうちょっとじゃきん、着いてから」
着いた所は古寺であった。
「ここ・・」
イクちゃんが、何でこんな古寺に、自分を沢木が案内して来たのか、皆目検討も着かず、きょろきょろした。苔むした庭、鬱蒼と古木が茂った寺の周囲・・
「まあ、入ろか・・イクちゃん。ちょっとだけ話聞く人が居るきんの」
「え・・はあ・・」
相貌に光無く、淀んだその眼は充血し、思い悩んで陰に篭った顔であった。
沢木は、そこで住職を呼ぶ。こんな若者には、住職等と話をする機会も無いだろうし、全くの場違いであるが・・イクちゃんは、従わざるを得ないと諦めた様子。沢木は、じっとそのイクちゃんの様子も見ていた。




