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由香里と勇次
沢木が、仕事で出かける際には、何時も車の中にうどんのケースを何箱か積んで居て、それが結構人気で、近頃その製麺所が大繁盛になったそうである。もとより懇意にしている所なので、沢木用に格安で卸してくれるのだそうだ。
そんな話をしながら、鳩舎に立つ。
「おいやん・・その鳩かいな?松風号っちゃ」
金網越しに沢木が指差した鳩こそ、間違い無く、松本鳩舎秘蔵の松風号だった。松本は今更驚かんよと、頷いた。
「ええ鳩じゃ・・天魔号の血がよう出とる。おいやん、中に入らせて貰うで」
「ふ・・お前が今更どう言おうが、わしはこの鳩を今後源鳩にしょう思うとる。存分に見たらええわい」
沢木は、鳩舎に入ると、さっと松風号に手を伸ばした。殆ど抵抗する事も無く、松風号は沢木の手に収まった。沢木は、その松風号の眼をじっと凝視する。




