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 すっかり柴犬のカイがお気に入りの美香に、善さんがにこっと笑う。さっきの仏頂面と、今笑っている顔はまるで別人。この素直な顔が、本当のこの娘なのだと善さんは思った。そのピラミッド型の建物が鳩舎だと知ると、それも興味津々・・美香は、動物好きのようだった。屋上から見える景色も大層気に入った様子で、祖父の年である善さんに、


「又遊びに来てもかまへん?善おじさん」

「おう、かまへんとも。大概たいがい今月の土日は居るしな、事務所は誰かが開けとるし」

「有難う!カイちゃん、可愛いな、うちんとこも犬居ったらえんやけど」

「はは・・お父さん、飼わしてくれへんのかいな」

「うん、うちんとこは、ペット駄目、勉強せえ、門限厳しいし、友達も遊びに来たらあかんし、行く事も出来んのよ。親父が天皇じゃきん」

「ほうか・・まあ、ちょこっと寄る分には、いつでもかまへんよってにな」


 階下から美香を呼ぶ声、途端に仏頂面をしながら、彼女は降りて行く。

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