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秘めた才能
沢木は、
「段々と・・難しいになってくるんよ。世の中、どっか狂うとる。株の売買であぶく銭稼いでは、つまらんもんに投資しよる。その挙句は物価高じゃ、給料も上がる、見た目には裕福になって来たと誤解もあるかも知れん・・ほやきんど、ほんまのとこ、それが裕福ちゅうんかのう・・物質的な充福に酔っとるだけかも知れんのに・・この資源の無い日本ちゅうんは・・」
ぼそっと沢木が言う。先ほどの考え事とは、これだったのか・・とりも洋司も思った。
その沢木だからこそ見える未来の日本の姿は、決して明るいもののようでは無い・・二人は思ったのである。
金曜日になった。珍しい事だが、沢木の事務所に松本と山部が、日中に訪ねて来た。これも、忙しくしている沢木が事務所に居たタイミングで、偶然に近い訪問であった。
「ありゃ、どなんしたんぞね、お偉いさん二人が揃うて」
二人をソファーに招くと、コーヒーを事務所の女の娘が容れて来る。
絶妙の味、そして出されたお菓子も美味しかった。




