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秘めた才能

 香月の顔も真っ赤になる。その白い頬、清涼感漂う透き通った眼が、再び濡れる。


「真っ白なんです、沢木さんの心・・だから、一緒に向っているのです。私もやりたくはありません、出来るのならば。しかし、今やらねば、日本の鳩競翔は終わりを告げます。そして、無限に出現する未知のウィルスによって、養鶏産業は壊滅し、鳩飼育そのものが出来なくなるかも知れない。競翔と言う枠にこだわれば、やはり沢木さんの言われる3種に集約されるのかも知れません。しかし、競翔鳩と言う枠は、渡り鳥に共通する有益な免疫研究課題なのです。大事の前の小事、その礎ととるべきか、より優秀な競翔家が捉えた、全く別次元の競翔スタイルを志向する、改良する・・これが私の考えた方向です。それは、急激な変化では無く、緩やかな方向なのです」


 香月によって、やっと語られた委託の本旨・・しかし、そんな事は沢木も分かっていた。それでもなお、競翔鳩を愛するが故に、揺れ動く沢木の心。それを又理解し、共に涙する香月・・ そして、この天才競翔家達は、とうとう稚内北コースを選択したのだ・・選ばれた形態の鳩を手にし・・ベールにまだ包まれたままの初霜号系・・その真の実力を発揮するのであろうか、大江八幡市300キロ競翔で・・


「おう、お帰り」

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