由香里と勇次
「へえっ!そなな事初耳じゃ。じゅんさんは、チヌ釣り名人ちゅうて、ここらの釣り仲間では一目も二目も置かれとる人ですわ」
洋司が言うと、松本が、ほな・・そう言いながら、沢木の話をし出した。佐々木家にとっては、切っても切り離せない人の話は、耳目を傾けるのに充分な事だった。沢木は、殆ど洋司達には自分の身の上話等をした事等無かったからだ。
その話は、新川の所に鳩を返しに行き、結局そのまま新川の所に再就職し、今やインテリアショップで大きく飛躍しているHZK、当時の羽崎総合インテリアショップでの修行。そして、そのインテリアコーディネーターとしての才能を認められて、現在の仕事にある事であった。洋司が、
「ほうなあ・・ほうだったんな・・新川家具で3年・・羽崎で2年・・あっと言う間に仕事を覚えられて、・・鬼眼・・分かりますわ。それ・・じゅんさんは、宇和島の方まで夜中から出かけて、朝から晩まで竿も出さんとチヌの動きを眺めよるんですわ。誰っちゃ真似出来んですよ、そなん事。そやってチヌが何時、どこで餌を食うんか、何を食うとんのか、全部把握しとったんですよ。ほんで、それを大物釣りと呼ばれるのを自慢気に言うた事は無かったです・・」




