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秘めた才能
「ほれでは、ファッションデザイナーの世界では生きていけんな、恵比寿さんよ」
「ええっ!何で、おっちゃん・・私の事を?」
沢木は、服飾学校でのデザインを覚えていて、すらすらとそのスケッチにその時の恵比寿のデザインを描いた。それは寸分違わぬ、恵比寿のデザインであった。驚愕する彼女に、
「なあ、あんたは特異な才能を持っとるとわしは思う。あんたは、物を作り出す才能がある女性じゃと思うんよ。10万人、いや・・100万人・・1000万人に一人かも知れん。その才能をもし生かそと思うんじゃったら、ここ訊ねて来てくれ。わしは、こう言うもんじゃ」
沢木は敢えて、HZKと言う名前の名刺を出した。その名刺は、木村設計部長と言う名刺であった。
立ち竦む恵比寿・・この中年が只者で無い事だけは、恵比寿にも分かった。あそこまで完璧に自分のデザイン画を、すらすらと再現出来る人間等・・現実に居る事自体が衝撃だった。




