変態な友達を持つと、色々というかかなりイラつく
特にないです。
「ゾンビは目玉か飛び出していたり、中の骨が見えたり、所々腐っていたりと、見た目の気持ち悪さは申し分ない。しかし、そんな化け物でも見習うべき部分がある。それは、常に上を向き、前傾姿勢で歩き続けることだ!」
「イキイキとした顔で、ゾンビの凄さを語るなんて……マジでヒクわー」
「ゾンビは俺の嫁! 誰にもやらねー!」
「誰も取りたがらねーし、欲しがらねーよ」
「ふふふっ……。そう言って本当は欲しいくせにー。このこの〜おおぅっ!?」
「あんまりうるせーと、腹パンするからな」
「今、やられたんですけど……」
「あァ?」
「イエ、ナンデモゴザイマセン」
この、うざったらしい性格は元からである。何か変なもの食べたとか、罰が当たったとか、ストレスによるものだとか、そんな理由は一つもない。元からうざったらしい性格の持ち主なのである。
「そういえば」
「なんだよ? またゾンビか?」
「俺、付き合うことになったから」
「……ついにお前は生きながらに死ぬ方法を身につけたのか」
いや、とゾンビ大好き野郎は否定する。
「隣のクラスの、ほら、マドンナって呼ばれる人いるじゃん? その子と」
「もういい。何も言うな。わかったからまずはその口を閉じろ。いいな?」
「お、おう……」
少し待て。いや、かなり待て。は? いや、は? なんでそうなんの? は? ゾンビが凄いとかこの世の畜生みたいな言動がおかしいこいつに彼女? は? しかも、隣のクラスのマドンナ?
「はぁあああ?」
「おい、そんな大きい声出すなよ、恥ずかしいじゃないか」
「意味不明過ぎて常人の頭には理解できなかった。俺にわかるように普通の言葉で簡潔に教えろ」
「俺がかわいこちゃんと付き合うことになりました。てへっ」
「死にさらせええええええええッッ!!!」
「ドブシュッ!?」
渾身の、怒りの一撃。そして、何より手が真っ先にやつの顔に向かっていた。友情より恋を選んだ裏切りに対価。こんなもんで終わらせようと思う俺は本当に心優しい。
俺はやつのバックを蹴り飛ばしながらやつに近づき、胸ぐらをつかんだ。
「んで、いつから付き合ってんだよ?」
「先週の日曜日……」
「お前それ、俺と遊びに行く約束破った日じゃねぇか!? やっぱり、おかしいと思ったんだよ俺はッ!」
「フッフフ……俺に騙されるとは、お前も落ちたものだな」
「悪びれる気ゼロかよッ!!」
「そんなに怒るなよ。ほら、アメでも食うか? 激辛トウガラシ味だけど」
「食うわけねーだろッ!」
チッ、と俺は裏切り者の胸ぐらから手を離した。これ以上こいつと付き合ってたらダメだ。イライラが溜まってこっちがおかしくなる。さっさと家に帰ろう。
自分の鞄を持ってさっさと立ち去ろうとしたが、足元にいたゾンビみたいなやつに片足を掴まれた。
「おい、離せよ」
「ちょっと待ってくれよ。実はさっきの話は嘘なんだ」
「それが嘘だろうが。俺は二度も騙されないぞ」
それより、話すんなら立ち上がってから話してくんねーかな? 周りからみたら俺たち変人だぞ。お前はとっくに変人街道まっしぐらってことは周りも知っているが、俺はお前とは違う。俺は至って普通の人間だ。
「ふふふっ、これを見ても同じことが言えるか?」
やつはようやく立ち上がると、懐からスマートフォンを取り出した。何やら証拠を見せるつもりらしい。
「実はさ、隣のクラスのマドンナと付き合ってんじゃなくて……」
と、俺の方にスマートフォンの画面を向けてきた。そこに映っていたのは……。
「お前の妹となんだよね」
そこには仲良く口と口をくっつけた男女が映っていた。片方は目の前にいるゾンビ大好き畜生。もう片方は俺の一歳下の妹だった。
「どうだ! 嘘じゃなかっただろう?」
「いっぺん死ね! このドチクショウがッ!!」
俺はこれ以上ないくらいの力でやつの顔面をぶん殴った。やつは地面に倒れた。よし、このまま放っておこう。車に轢かれても俺は知らん。もう本当に胸糞悪い。
「へへへっ、俺を倒してもまだ第二、第三の俺が立ち塞がるだろう……」
とかなんとか呟いてたから、腹パンしたら豚みたいな鳴き声発して気絶した。
「はぁ……帰って寝よう」
こんなバカに付き合うのはもうやめようかな、と久々にやつの変態ぶりに呆れ果てるのだった。
この小説を読んで下さった皆さん、ありがとうございました。