第3話
〜第3話〜
目を奪われるってこういう時のことをいうんだろうな。
脳はそれ以外のことを考えることはできなくて、舞い散るそれをただ見ていることしか出来なくて、他には何も出来なくて。
そんな圧倒的な風景。
「ここ…は?」
目の前の風景に、発した声が若干かすれた気がする。
瑠璃につれてこられた場所は、1年間この学校に通っていた俺もまったくしらない場所だった。
それでもここは間違いなく学校の敷地内なわけで、いつも見ていた風景との違いに驚きと戸共に悔しさも感じる。
こんな場所を知らなかったなんてな。
「ここは、私のお気に入りの場所なんだ」
そう言いたい気持ちもわかる気がするね。おそらくは、ほとんど人がこないであろうこの場所。
広い草原。大きな木が作る木陰。木々の間から抜けてくるやわらかな風。
そして何より、この場所でひときわ目をひくそれ。
「綺麗でしょ?」
綺麗、確かに綺麗だ。だけどこの風景はそんな単語で終わらせるにはもったいないくらいの、そんな風景。
真っ白いキャンパスいっぱいにピンクの絵の具を溶かし込んだような、それでいてそれを見たものの目を奪ってしまうような……
「桜……だよな?」
「他に何に見えるのよ?」
疑いたくもなるぜ。なんたって目に見える範囲のほとんどが桜の木で埋め尽くされている。
その中でも中央にある桜はひときわ大きく、周りの桜を圧倒している。
呆然。人間驚き過ぎるとしゃべれなくなるんだな。貴重な体験だぜ。
「どう?ちょっとすごくない?」
「ああ……」
普段ならもう少し気のきいたこと、瑠璃相手なら多少のいやみも言えるんだけどな。今はさっぱりだ。それ以外に何も言えやしない。
そんな俺の様子に満足したのか、瑠璃もそれ以上は何も言ってこない。
まったく、すごすぎだろう。誰が何を考えて学校の敷地内にこんな大量の桜を植えたんだろうな?
まぁ、これはこれでいいさ。何しろ綺麗だからな。
「さ、そろそろ行きましょう」
ひたすらに桜を見ていた俺の耳に、瑠璃の声が飛び込む。時計を見ると、すでにHR開始まで10分ほどだ。
こんなに引き込まれるとはな……
「行くか」
名残惜しい気もしたが、さすがに遅刻はまずい。ただでさえ遅刻が多いんだから、せっかく早く学校に来た日まで遅刻しては、そのうち退学にされかれない。
また、来ればいいか。
そう思い、歩き出したその時だった。
『約束だよ』
「おい瑠璃、何か言ったか?」
「私?何も言ってないわよ?」
頭についで耳までおかしくなった?などと言ってくる瑠璃。なんてことを言ってくれるんだこいつは。
『二人の約束』
まただ。絶対に聞き間違いじゃない。
しかし、辺りを見回してみても誰もいない。そればかりか、あんなにはっきりと聞こえた声なのだが、どうやら瑠璃には聞こえていないようだ。
「何だってんだよ……」
朝の夢といい、今の声といい一体何だっていうんだ?
なんか悪い霊にでもとりつかれたかな?
そんなことを思いつつも、頭のどこかではあの声が聞いたことがあるような気がしないでもない自分がいる。
この時の俺はそんなこと1ピコグラムも考えちゃいなかったがな。
どうせだったらもっとわかりやすいヒントをくれればいいものを……
短い…
すいません!なかなか文章がまとまらなくて…
次回はがんばって長くできたらと、思います。