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第10話

〜第10話〜




 油断大敵とはよく言ったもので、今まで誰とも鉢合わせになったことがないからと言って気を抜きすぎていたのかもしれない。

まぁ、ばれたから言って何がどうなるわけでもないのだが、それでも今まで隠していたのだからあまり誰かに知られたくはなかったのも本音だ。


「香介君はここでいったい何をしてたのかな〜?」


「スクワット?」


「う〜ん、ボケとしては10点かな?しかも何で疑問形?」


どうやら俺にお笑いの才能はないらしい。じゃなくて、なぜに俺は同級生から尋問まがいなことをされねばならんのだ?


「悪いことしてたんじゃないなら言えばいいんじゃないのかな?」


「世の中には黙秘という便利な言葉があるんだ」


「うん、それ却下♪」


一刀両断ですか。そうですか。


たった今、音楽室の扉もとい地獄への扉を開けてあらわれたこの人物は朝倉奈菜。隣のクラスの友人だ。

言っとくがそれ以上でも以下でもないからな?

長めの髪をツインテールにして満面の笑みを浮かべながらこっちを見る奈菜は、確かに非常に魅力的ではあるのだが。


「そんなにいいにくいことなのかな?」


別にそういうわけではない。ここで何をしていたかといえばただピアノを弾いていただけなのだ。別段隠すことでもない。

ただ言いたくない。ここまで来ると子供の意地みたいな気がしてこなくもない。


「香介く〜ん?」


下から覗き込むようにこちらを見る奈菜。そんな顔で見るのはやめてくれ。


「そんなに言いたくないの?」


「そういうわけでもないけど、なんとなくな」


頼むからこれで引いてくれ。一度言いたくないと決めたんだ、最後まで貫こうじゃないか。貫いたところで別になんのメリットもないんだけど……


「じゃあ、交換条件♪」


「条件?」


なんだか悪魔のささやきが聞こえたのは気のせいか?


「そ♪今度一曲聞かせて♪」


この野郎。気づいてて遊んでたな。


見れば、奈々の表情はこれ以上にないほどにこやかである。どこからどこまでが演技なのかは知らないが、少なくとも俺が奈々の掌の上で踊っていたことに間違いはない。


やれやれ。なんてやつなんだよ……。


「でも、すごく綺麗な音だったな〜。久しぶりに感動したもん」


「そりゃどうも」


実にそっけない返事だと自分でも思う。自分がすごく情けない気がするのだが……。


「別に誰にも言わないんだけどな」


苦笑交じりの声でそう言われると、なんだか申し訳なくもなってくる。だがしかし、秘密というものは一人に教えてしまうと、後は際限なく広がってしまうもの。


「大丈夫、絶対言わないよ♪」


仕方があるまい。しっかりと気をつけていなかった自分がいけないのだ。今は奈菜の言葉を信じるしかないさ。

別に奈菜の口が軽いわけでも信じられないわけでもない。ただなんとなく、人を信じるというのが苦手なだけ……


「そういえば今日は香介君はお買いものに行くのかな?」


「そうだな……」


そういえば今日の夕食の献立はまだ未定。というか冷蔵庫の中もすっからかんだったような気がする。


母さんは使い方が荒いんだよな。


料理はうまいのだが、食材の使い方が半端じゃない母親のせいで、俺の買い物に行く機会はウナギ登りだ。


「行くか」


「そっか、じゃあ早く行かないとね♪」


言うが早いか奈菜は俺の腕をとって、音楽室を飛び出す。


「ちょ、おい!」


「早く早く〜♪」


どこにそんな力があるのか、俺の腕を引っ張る奈菜。どことなく楽しそうに見えるその顔を見ると、次に言おうとしていた言葉はあっという間にどこかに霧散してしまった。


ま、いつものことさ。




 奈菜と知り合ったのはいつも俺が利用しているスーパーでだった。詳しくは知らないが、奈菜は両親と離れて一人暮らしをしているらしく。当然も家事もこなすのだから食事も作る。その買出しのさなかに知り合ったというわけだ。

それ以降、せっかくなので二人一緒に買い物をすることがしばしばあるのだ。なぜか、そのことを知った瑠璃は面白くなさそうだったが、まぁ気にすることではないな。




「じゃあ、また明日ね♪」


「ああ……」


買い物を終えて、いつも別れる場所に差し掛かる頃にはすでにあたりは暗くなり始めていた。昼間はあんなに暑かったというのに、今の時刻はまだなんとなく肌寒い。


「そうそう、約束忘れないでね?」


「へ?約束?」


約束……。俺は奈菜といったいどんな悪魔の契約をしてしまったのだろうか。そんな俺の様子を見てどう感じたのか、奈菜はそのほほを膨らませる。


「さっき音楽室でこんど一曲聞かせてね〜って、言ったでしょう?」


「世間一般にはあれは約束じゃなくて脅迫っていうんだぞ?」


「うん、楽しみだな〜♪」


聞いちゃいない。何がそんなに楽しいのか持っている買い物袋を大きく前後に揺さぶる。

その様子はまずで子供のようで、思わず了承してしまうそうになる。


それもいいのかもしれない。


「……今度気が向いたときにな」


「楽しみにしてるからね〜♪」


「ああ」


ますます深くなる奈菜の笑顔。あたりは薄暗く視界はだんだんと悪くなってきてるのに、不思議と奈菜の表情は細かく見てとれた。

それが実際に見えていたのかどうかはわからないが、それだけ奈菜の笑顔は輝いて見えた。


「それじゃ、また明日ね♪」


言うが早いか跳ねるように帰り道に消えていく。その後ろ姿が完全に見えるのを待ってから、俺も家路につくのだった。


10話更新です!!また新たなキャラが追加と。

ハーレム化してきてますね…

ま、いっかな!アハハ…

読んでくださってるみなさん、ありがとうございます!

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