松屋はどのくらい客足が落ちると、値上げは失策となるのか
ちょっとお金のことばかり計算していたら、そういうモードになってしまったので雑談になります。
牛丼チェーンの松屋さんが、牛丼並盛を二百九十円(税込)から三百八十円(税込)へ値上げするそうです。
税抜きで言うと二百六十八円から三百五十一円でしょうか? 細かく言うと値上げ分は八十三円です。
牛丼並盛りを売った利益は九円程度とのこと。これは経営評論家の坂口孝則氏の受け売りです。
値上げに伴い、名前も『プレミアム牛めし』と改めるそうですが……ここでは中身はほとんど変わらない――大幅なコスト増は無いものとして話を進めます。
この場合、一杯当たりの利益は九円から九十二円へと跳ね上がることに! なんと純利益十倍!
記者会見をした緑川源治社長が微妙に笑っちゃってたので、もの凄く反感を集めているようですが……そりゃ笑いが出ちゃうに決まってる! 笑いが止まらないはずですよ!
七月二十二日から牛丼約十杯分の利益を上げるのに、一杯でこと足りるんですもの!
大雑把にいうと……一日千杯売っていたところ、百杯でOKとなっちゃいます。
まあ、これは机上の空論ですが、相当に客足が少なくなっても十分に商売が成り立ってしまうのです。
厳密には一杯当たりの原価は百七十五円程度だそうですから、新しい値段の三百五十一円から引くと残りは百七十六円。これが一杯当たりの粗利で、ここから人件費や光熱費、家賃などのコストを引いて、残りが利益となるわけです。
売れ行きが十分の一となってしまったら、この原材料費以外のコストで潰れるでしょう。
仮に現在、一日のノルマが千杯だとします。
二百六十八円かける千杯で、売り上げは二十六万八千円です。値上げ後、同じだけ売り上げるには、七百六十三杯となります。そして七百六十四杯目からは、爆発的に利益は加速――
つまり、値上げで客足が二割減っても、結果的に勝ちです。
これはノルマで変動しますから、もっと客足が悪くても増収かもしれません。
この松屋の値上げ選択を、マクドナルドの高級路線失敗になぞらえる見方があります。
しかし、作者には同じと思えません。
マクドナルドで同じことをするのであれば、全ての百円マック廃止にあたるでしょう。
牛丼三百五十円だった時代と同じく、ハンバーガーを一個二百円に……他のメニューも合わせて価格調整をする。それが同じ戦略だと思います。
もちろん、劇的に売れ行きは悪くなるでしょう。
しかし、それで構わないはずです。ハンバーガーを一個二百円で売れば、現状のハンバーガー三個分も儲かるんですから(ハンバーガーは原価四十五円程度だそうです)
申し訳程度のリニューアルをしておいて、一気に二百円へ値上げ。現状の半分も売れれば結果的に勝ち。それで良いのではないでしょうか?
未練たらしく百円マックでの集客を当てにしつつ、それでいながら客単価の高い新商品を投入――それもダダすべりに近い失敗――なんて……虫の良い商売にしか思えません。
ただ、結果的に松屋は勝ちそうですが、決して不当な値上げではないとも考えます。
牛丼一杯三百五十円は決して高くない。
作者は吉野家、松屋、すき屋の中では松屋が一番……というより、松屋でしか買わないぐらいの松屋派なのですが――
心の奥底から、決して高くないと思います。
松屋の牛丼に三百八十円払うのなら、普通に定食屋へ行く。そんな意見も耳にしましたが――
それで大正解です。是非ともそうしてください!
ようやく個人経営レベルの飲食店も、息を吹き返すはずです。
消費者も毎日牛丼生活よりも、たまに牛丼生活の方が幸せになれると思います。
それは社会全体では微風に過ぎないでしょうが、景気回復へとつながるかもしれません。
誰一人として得をしないデフレの安い牛丼を維持するぐらいなら、全体的に得をする――失われた二十年以前の水準に、値段を戻したほうが良いと思います。
言い過ぎかもしれませんがマクドナルドやすき屋は、デフレを利用した経営手法なんじゃないでしょうか?
そうだとしたら……デフレが終了で、運命を共にするしかないと思います。
ある意味、最もデフレを利用し、助長してきたのですから、当たり前でしょう。
(現在、健康的なインフレに戻るか、スタグフレーションに陥るかの瀬戸際らしいです。つまり、どのみちデフレは終わっているんですね。仮にデフレに戻るとしても……そのときは未曾有のスーパーデフレの気がします)
松屋がデフレを利用しなかったとは思いませんが、心の中で「なんとかデフレを凌いだ」ぐらいのつもりであれば……今回の値上げは納得です。
リスクを吸収できる職種から、率先してデフレ脱却に向かうべきでしょう。
まあ、色々と書きましたが……一般人に過ぎない作者は、二十二日までに牛丼一杯二百九十円の食べ納めぐらいしかやることないんですけどね。
えっ? 値上げに納得したんだろう?
やだなぁ……値上げに納得したのと、嬉々として三百八十円を支払うのは別の話に決まっています。
いや、三百八十円の『プレミアム牛めし』も食べると思いますが……牛丼一杯に四百八十円は悩みます。もちろん、大盛りを頼むから四百八十円です。
松屋で何が納得いかないって……大盛りにするだけで百円追加なんですよ!
並み盛り一杯分のご飯の原価が四十円なのに、半分ぐらい増量で百円追加!
ちょっとぼられている感というか……納得いかないというか……三百八十円に五十円追加で大盛り四百三十円とかだったら、気持ちよく払えるんですけどねぇ。
それなら定食を頼んだほうが満足できるというか……五百円もあれば相当豪華な牛丼が自作できるというか……。
追記
大盛りの値段を間違えていました!
『プレミアム牛丼』は大盛で百四十円追加です。百円追加は現行メニューの方ですね。
この確認の為に松屋HPを見に行ったら……ライス単品が並盛百六十円、大盛で二百二十円とのこと。差額は六十円ですね。
……やっぱり大盛にするだけなら、五十円プラスぐらいで成立するじゃない!