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雑記帳  作者: curuss
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猿の話

 最初に言っておきますが、この話にオチはありません。また、科学的検証も不十分です。


 唐突に閃いたことなのですが、男女出生比率がおかしく感じました。

 作者の知る限り、男女の出生比率は百五対百で、男の方がやや多く生まれます。

 これって変じゃないでしょうか?

 よく言われる説が「男女で男の方が成人しにくく、戦争などで死ぬこともあるから多くないと困る」なのですが……なんだか納得がいきません。

 同種での戦争が進化の圧力として適しているのか、戦争での有利不利が遺伝子に影響するほどの結果があったのか疑問です。戦争が強い種は栄え、弱い種は滅ぶほどの戦争が可能になったのはここ一万年くらい、すでに人類として進化した後の話でしょう。

 そもそも哺乳類全般が、進化論的には逃亡者とされているはずです。あらゆる生存競争で常に負け続け、常に強敵から逃げてきた末裔が人類のはずです。

 戦争のために出生比率が変わるほどの対応をした遺伝子は……ようするに局所的な勝者ですから、人類の祖先として相応しくないと思います。

 また、ハーレムを作る動物みれば判るとおり、交尾をするための雄は群れに一匹いれば十分なのです。雄雌を半々に産み分ける理由がありません。


 人間は猿から進化しました。

 となると、猿の出生比率は百五対百である可能性があります。仮に違う場合、百五対百になるような進化圧がかかったのでしょう。

 まあ、それはおくとして、猿の遺伝子に視点を移します。

 人類の祖先の猿が一夫多妻制なのか、一夫一妻制なのか知りませんが、ここからは一夫多妻制だった場合で考えます。

 ボス猿のみが交尾の権利を有し、他の雄は交尾の権利が無い場合、遺伝子としては雄に生まれるだけで袋小路のバッドエンドです。遺伝子を伝えられるのはボス猿――強い個体の雄――と雌に生まれた個体のみですから。

 ボス猿がどのくらいの期間、ボスとして支配するのか解りませんが、仮に十年だとします。

 同世代から上下五世代の雄はノーチャンスです。感覚的に解りやすく言うと……小学校から中学生までの同級生で、子孫を残せる男はただ一人といったところでしょうか?

 ここで雌の個体差を三つ想定します。

 雌を多く、半々で雄雌、雄を多く産むの三パターンです。

 雄は十年間で最強でなければ遺伝子を残せないわけですから、雌にとって雄を産むのは結果が伴わないはずです。

 そりゃ、万が一にでも息子がボス猿になれば、爆発的に自分の遺伝子を残せるはずですが……十年間で一匹というのはギャンブル過ぎるでしょう。仮に雄しか産めなかった個体を考えれば、その個体の遺伝子は次世代を持てません。

 言い換えれば、雄を多く産む遺伝子は途絶えやすいでしょう。

 雄を多く産む個体や半々で産み分ける個体より、雌を多く産む個体の方が圧倒的に自己の遺伝子を繋げれるはずです。

 猿から類人猿、類人猿から原始人と進化する過程は、基本単位が万年ですから……ちょっと理解不能レベルの進化圧がかかったのは確実です。

 人類がホモサピエンスに進化してたったの十万年しか経っていません。

 猿の起源は六千五百万年前だそうですから、人類になってからの進化圧なんて些細なことでしょう。

 しかし、現在の人類の出生比率は百五対百です。

 少なく見積もって六千万年は続いただろう「雌を多く産むべき」という遺伝子のトレンドが、一万年程度の進化圧で逆転する。

 ちょっと納得しがたい結論です。


 これは前提が間違えているのでしょう。

 「作者は知らないが、一夫多妻制であっても『雄を多く必要とする』理由がある」なんてのはありそうです。

 例えば一夫多妻制の雄を競わすことには何かの意味があり、遺伝子レベルでその競争が簡単なものにならないようにしている。

 もしくは、一夫多妻制であるにもかかわらず、その雄同士の競争が激化しない遺伝子は袋小路に入りやすい要因がある。

 一夫多妻制の最大の利点「強い個体の遺伝子を残しやすい」を選択しているにもかかわらず、雄を少なくすることで競争が易しいものに、つまり利点を失う?

 結果、絶滅しやすくなる?

 それを避ける最適なバランスの出生比率は百五対百だった?


 もう一つの考えが「人類の祖先は一夫多妻制ではない。一夫一妻制か、他の方法である」でしょう。

 確か人類の祖先は現在でいうフリーセックス主義だったとする学説があったはずです。身近な動物でいえば、猫なんかはフリーセックス制の一種でしょうか?

 一夫一妻制にせよ、フリーセックスだったにせよ、これなら雄を産むデメリットはありません。むしろ逆転でしょう。

 交尾のチャンスが全ての雄に与えられるなら、雄の方が圧倒的に有利です。繁殖期に多くの回数をこなせますから。

 ただ、雄の方が有利とはいえ、雄ばかり産む種になれば絶滅コースではあります。

 その最適解が百五対百の出生比率である?


 また、人類太古の歴史を紐解くと、太古は一婦多夫制だった。もしくは採用されていた時代や地域があるとされてます。

 大雑把に言うと、主神が女性神だった地域や時期があると一妻多夫制、もしくは一夫一妻制であっても女性の方に主導権があると考えられます。

 女性上位だった太古の時代に女性主神、なにか大きなターニングポイントで男性主神に切り替わる。世界各地で散見できるパターンです。

 これは考古学的に一派を作っている学説なので、あながち与太話でもありません。

 一般的には受胎の仕組みを人類が正しく認識したあたりで切り替わるとされています。要するに「女性の神性や魔力」によって子を孕むのではなく、毎月の生理周期に合わせて交尾すれば良いと体験的に理解、周知した頃です。

 紀元前五千年前後だったかな? 太陽よりも水や蛇、鳥が重視されていた時代です。意外と太陽神は後から生まれていることが多く、文字と同級生くらいのことが多かったような?

 よく言われる「江戸時代の庶民はフリーセックスだった」なんていうのもある種の一婦多夫制でしょうし、平安貴族なんて完全なフリーセックスでしょう。源氏物語も光源氏視点で見ればプレイボーイの武勇伝ですが、姫側から見たら単なる種馬争奪戦です。あの時代、姫側も相手に操を立てる必要は無かったんですから。

 それは平安時代からいきなりそうなったと考えるより、そのずっと前から一般的だったでしょう。確か母系文化の名残というか、末期に分類されるはずです。

 とにかく、人類は一夫多妻制の猿から進化しなかった可能性はあるし、そうであっても一妻多夫制やフリーセックス制に免疫がありそうです。


 どちらも一長一短のある方法ですし、そもそも人類の祖先は逃亡者です。どんな環境であろうとも、勝者になるポテンシャルは無いでしょう。

 一夫多妻制はその環境下での強い個体を生み易いはずです。餌を多く取れる、雄同士の戦いに有利な体格と筋肉など、その環境での最適解が選ばれ続けるのですから。

 反面、急な環境の変化には対応しにくいはずです。半分は同じ遺伝子なんですから、個体差は大きくならないはずです。ある種の病気に極端に弱かったり、温度変化に対応できなかったり。

 一妻多夫制やフリーセックス、一夫一妻制の場合、何か優れた特徴が群れ全体に遺伝するのは難しくなります。

 ただ全ての遺伝子をプールしながら進むので、生存に困難なレベルの特徴以外は受け継がれ続けるでしょう。

 もしかしたら、突然変異した個体に最も適した群れかもしれません。一夫多妻制の群れでは突然変異しつつ、その群れで次世代を獲得する権利も得なければなりませんから。

 そして突然の環境変化に強いはずです。少なくともたった一種の病原菌で群れが全滅なんていう画一性は持てません。


 作者が適者生存の法則を学んだ時、異なる生存方法を選んだ場合、どちらかが勝者となり、敗者は絶滅するか、進化せずに取り残されると教わりました。

 しかし、その考えは正しいのでしょうか?

 それはそれで起きることだろうけど、少し乱暴すぎないかと思います。

 種として交配可能であり続ければ、並走進化(念のために言いますが、科学用語ではありません。作者の造語です)だってありえるかもしれません。

 ボス猿を頂点とした一夫多妻制の群れと、一妻多夫制やフリーセックス、一夫一妻制の群れが、ある地域に混在しているとします。

 一夫多妻制の方が進化、または環境適応が早く進むはずです。

 一妻多夫制の方は進化や環境適応はいまいちでしょう。百年単位で何も変化が無い可能性すらあります。

 何事も無ければこのまま一妻多夫制のグループは淘汰されるはずですが、なにか進化圧――ただし、絶滅や大変化までは要求しない小さいもの――を想定します。

 特定の条件に特化してしまった一夫多妻制のグループは大打撃です。また数世代かけて新しい条件での進化と環境適応のやり直しです。

 一妻多夫制のグループは何もすることがありません。というより、生存戦略に環境適応が組み込まれていないでしょう。基本的に持っている能力で超えられない試練に遭遇したら、ただ滅びるだけとなるはずです。

 

 この二つのグループが定期的に遺伝子の交換をしていたと仮定するとどうでしょう?


 基本的に一夫多妻制のグループには恩恵が判り難いでしょう。

 相手グループは排除すべき敵であり、相手グループがいなければ自分達の領土――栄えるべき環境――が広くなります。

 一妻多夫制のグループはどちらかというと弱者です。

 唯一の武器は変化に強いことだけ。仮に相手グループから有利な遺伝子を得たとしても、システム的に群れ全体に遺伝させるのは難しいはずです。できて遺伝子のプールが限界でしょう。

 このまま何事も無ければ、いずれは一夫多妻制のグループに飲み込まれるか、自分達だけ滅ぶか、進化から置いていかれるはずです。

 しかし、良い塩梅に定期的に、しかも何度も進化圧がかけられたとします。

 環境変化のたびに攻守が逆転します。

 一妻多夫制のグループの方はいち早く新しい環境になじみ、一夫多妻制の方は数世代の足踏みをしなければなりません。


 作者が思うに、進化できなかった猿はどこかで、何回目かの進化圧でどちらかのグループが勝ってしまったのではないかと考えてます。

 どちらかのグループが滅んでしまったら、環境対応能力か遺伝子の多様性のどちらかを失うことになります。

 しかし、どちらも勝たなかった場合、数万年の間に環境適応を繰り返し続け、かつ、その遺伝子のほとんどをプールし続けたら?

 それは既にどちらのグループでもない、新しい猿なのではないでしょうか?


 最初の疑問に戻ります。

 一夫多妻制のグループは進化と呼べる変化を得られるかもしれないが、偶然に頼りすぎているし、環境変化に弱すぎる。

 一妻多夫制は自分だけで進化する可能性が低すぎる。環境変化に強いほうであるが、それも偶然の結果にすぎない。

 つまり、進化に必要という観点では、一夫多妻制でも一妻多夫制、一夫一妻制、フリーセックス制のどれでも足りない。

 また、どのシステムでも雄雌を半々に産み分ける意義が薄い。どちらのシステムでも有利な性別がある。

 では、進化した種とは両グループの血が混じったハイブリットなのではないか?

 だから、男女の出生比率は半々である。なぜなら、男を多く産もうとする遺伝子と女を多く産もうとする遺伝子の両方を持っているからだ。

 それが百五対百と僅かにぶれているのは、偶然に過ぎない。


 ……すごく、似非科学です。

 きちんと学問として進化論を考えている先生方に、思いっきり怒られそうな結論!

 でも、ここから踏み込んだ妄想までしちゃうのが、創作者の悪いところ(笑)


 猿から次に進化した――この説によると二つのグループのハイブリット――のは一種類だけではない。

 同種の猿――ここでは交配可能であれば同種と考える――から複数のハイブリッドグループが生まれる。

 そのハイブリッドグループは新種であるから、祖先との交配は不可能なのが最低条件。この条件を満たしていないと、祖先との再合流が可能となってしまう。

 新種の猿は各々に新しく交配様式を決めていく。祖先のどちらの方法を選ぶかもしれないし、折衷案的な方法かもしれない。必要なのは環境適応型か、遺伝子プール型のどちらかの特性を強く持つことである。

 そして異なるハイブリットグループも存在し得うる。

 ここで環境適応型ハイブリッドグループと遺伝子プール型ハイブリッドグループが隣接した環境にいたと考える。ここに作意は無く、偶然にそうなっただけである。

 祖先が行ったのと同じ過程が繰り返される。環境への適応、遺伝子のプール、遺伝子の交換――何れは第二世代ハイブリッド種が誕生する。

 この世代交代を繰り返し続け……誕生したのが人類、ホモサピエンスである。

 ホモサピエンスと交配可能な種は全て遺伝子の交換をしており、その過程で合流する結果となった。だから、現在、ホモサピエンスと交配可能な種が存在しない。すべて合流しているからである。ミッシングリンクなど存在しない。滅んだのは原種のみであり、子孫は人類として存在してる。

 また、人と類人猿を区別する最大の差は、交配が不可能なことである。

 枝分かれだけが進化ではなく、合流もまた大きな進化を促す要素なのだ。


 ……なんてどうです? 新しい進化論!

 最初に申し上げたとおり、この話にオチはありません。ただ、こんな妄想を考えちゃったというだけです(苦笑)

 また、いくつか科学的に怪しすぎる点もあります。念のため。 

 

【蛇足】


 最近の研究では、ホモサピエンスとネアンデタール人は交配可能だったそうです。というより、現在の人類はホモサピエンスとネアンデタール人の混血? ネアンデタール人は滅んだのではなく、現人類種と合流した?


 人類祖先は間男説――ボス猿じゃないのに交尾して子孫を残した遺伝子――があります。

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