なぜ火縄銃の方が優れているか
よくあるテーマ――
「弓と火縄銃の優劣について」
を検討してみました!
それなりに一般的な説と、一応は独自の理屈も盛り込めた……かな?
いくつか不明な数字――というか金額が多すぎて、作者には手に負えなかったのですが……是非とも詳しい方に掘り下げてもらいたいところ。
弓と銃器を比較考察した際の忘備録的なものです。
自分なりの結論を出すのに、色々と情報を漁っていたら、矢と弾丸の射線を比較する羽目に(苦笑)
しかし、それが実は正解だったらしく、おそらく真実があります。
弓や種子島銃の場合、殺傷距離(殺害を期待できる距離)や有効射程(一定のダメージを期待できる距離)にバラつきがあり過ぎたりします。
色々な文献や当時の陣備えなどから考えるに、どちらも殺傷距離は五〇メートルもなく、一〇〇メートルほどが有効射程外でしょうか?
(届くだけでよいのなら、どちらも二、三〇〇メートル超の情報もあります)
それらを踏まえて、ここでは八〇メートル先の的を狙う場合を考えます(余談ですが一〇〇メートル超の場合、達人でも命中させられるか疑問です)
また計算が複雑になり過ぎるので、空気抵抗は考慮しません。それなりに割り引いて受け取ってください。
色々と調べた結果、弓で射た矢の速度は時速一四〇から一八〇キロでしたので、ここでは計算し易く時速一六五キロとしました。
さらに横方向のベクトルが時速一五〇キロで、八〇メートル先の的を狙ったとします。
この場合、的へ届くまでの所要時間は約二秒です。
二秒間に物が落ちる距離は約二〇メートルなので、矢の描く放物線の頂点が二〇メートルの高さとなるように撃ち上げねばなりません。
その時に必要な射角は二五度。縦方向のベクトルも時速七〇キロとなり、秒速に直すと秒速二〇メートルで、ぴったり全行程の半分である一秒で頂点へ到達します。
都合がよすぎる?
いえいえ、それは視点が間違ってます。横方向のベクトルから逆算したので、都合がよくて当たり前!
むしろ作為は時速一六五キロという数字にあります(苦笑)
しかし、作者は三角関数計算機を利用して角度を導き出したわけですが……当時の――例えば戦国時代の射手は、どうしてたんでしょう?
計算しようにも、そもそも自分が撃った矢の速度も判ってない?
全てはトライ&エラー。そして経験からくる勘や推測に頼っていた?
どうだったにしろ……簡単なレクチャーを受けるだけの徴用兵には、ちょっと無理なように思われます。
命じられた距離へ飛ばせるようになるだけでも、結構な修行が必要となりそうです。
同じく種子島銃で八〇メートル先の的を狙ったとします。
種子島銃の場合、嘘かホントか弾速は秒速四八〇メートル!
一応は現代の計器で、現存する実物を使っての測定結果らしいですが……ここでは控えめに、音速を超えない秒速三三〇メートルとしましょう。
……それでも時速に直すと時速約一二〇〇キロ!
この速度で八〇メートル先の的へ届くまでの時間は約〇.二五秒!
〇.二五秒で物が落下する距離は……約〇.三メートル! つまりは三〇センチ!
注)
厳密な弾道学で考えるともう少し複雑になり、一概には扱えませんが……ここでは最も簡単な物理学を使っています。
今回、初めて弓と銃器の習熟を比較してみましたが……予想の数倍は難易度が違いました!(苦笑)
まず種子島銃は弾込めなどに時間は掛かるし、手順を覚えるのも大変そうですが――
弓と比べたら天と地の差!
まず、真っすぐ飛ばす練習が要らない!
というか弓の場合、近くの的へ当てる段階から斜め上へ撃たないと駄目なはず。
次に遠くへ飛ばす場合でも、弾道の下がり具合の計算が簡単!
弓の場合、八〇メートル先だったら的の四〇メートル上を狙って撃つわけですが……そんなのを目安にできる訳がありません!
何度も何度も練習して、この距離でアレを狙うには、これくらいの角度と……地道に体得するしかないでしょう。
対するに種子島銃は「狙いたい的の三〇センチ上を狙え。というか、頭のあたり狙っていれば、少し下になっても胴体に当たるから」ぐらいにラフな感覚でOKだったと思われます。
よく漫画などで――
「火縄銃とか……弓の方がよくない? 弓の方が難しいといっても、結局は練習すれば済む話だし?」
みたいな発言があって、その作品ごとに色々な解釈がありますが――
圧倒的に銃器の方が楽。もはや問題外レベル。弓とか意味が分からないんだけど
ではないでしょうか?
火縄銃の段階で、です。銃器としてはライフリング、薬莢、弾の形状と……まだ三つも変身を残しているのに!
銃器と弓を比較すると、兵器としては銃器に軍配が上がる。なぜなら――
『弾の速度が全然違うから』
がFAだったみたいです。
……色々と調べて損した!(苦笑)
ここからは無駄となった考察です。
別件で矢の制作日数を調べたことがありました。
ずいぶん前に読んだ海外のファンタジーラノベなどでは、「一人前の職人が丸一日かけて、やっと一本作れる」なんて記述が!
ただし、これは鏃を鉄鉱石から打ち出し、刃も付けて研いで、本体であるシャフト――その世界では木で作成――を削り出し、最後に矢羽と……非常にしんどい作業工程を経るものです。
また、当然に分業制ではありません。
それが世界標準なのか、そのラノベ世界特有だったのか、とにかく最初から最後まで一人の方法でした。
ですが、別の作品では「新人レベルの鍛冶で一日に二十個」なんて表現も。
これはおそらく鏃だけの話で、付ける刃もおざなり、矢として完成品にするには別の手が要るようですが……それなりに説得力を感じなくも?
別の作品だと仲間の弓の名手は、暇さえあれば矢を作ってたりします。
なるほど。どこまでいっても消耗品ですし、毎回運よく補給されるとも限らないし、暇があったら作らなきゃならん訳です。
ましてや、それが自慢の剛力弓とかなら特に!
なぜなら強い弓は、その分だけ大きいはずですから、番える矢も大きく――長くないと駄目なんですよね。つまりは特注品です。
ちなみに日本の武士は、年に何本と決めて備蓄する習慣か義務があったそうです。
さすがに鏃は鍛冶屋から購入、シャフトは矢竹という竹を利用(武家屋敷には必ず矢竹が植えられるらしいです。これは隠れた東洋の利点かも?)
後は矢羽を集め、暇を見計らっては、コツコツと組み立てていたそうです。
そして戦争など有事の際に階級と見合った供出を求められるとか、そうでなくても毎年決まった本数を主君へ献上していたとか。
どうやら産業革命以前では、例え資金があっても、短時間で矢を大量確保するのは難しいようです。
……そう考えると孔明の赤壁のくだりも、まったく違う意味が?
またコンピューターゲームなどでは、下手したら千本単位で持ち歩いてますが……そんなのできる訳がありません!
戦闘中は背負った矢筒に入れるとしても、かなり大型のもので十本入るか入らないか。通常品では六本程度だそうです。
腰のあたりに同数括ったとしても、戦闘力を維持したまま持って歩けるのは十数本が限界でしょう。
そして手持ちが尽きたら補給に戻るか、そもそも補給場所から離れないとするか……どちらにせよ弓兵という兵種は、移動しながら戦うのが苦手に思えてきます。
対して種子島銃ですが……その弾は単なる丸い鉛の玉です。
重さも徴用兵用は三匁前後だったそうですから、現在の単位でいうと約十グラムになります。
……あれ? これって仮に百発ぐらい持たせても、たったの一キロ?
いやいや、いや……まだです! まだ火薬も持ち歩かないと!
……情報によってブレも大きいけれど、一回撃つのに数グラム?
弾と火薬の一〇〇回セットで、一キロ半程度にしかならない?
他に必要な道具を考えても……おそらく二キロ以下?
種子島銃そのものが四キロぐらいあったとはいえ、武装としては相当に軽い部類では?
この装弾数の差は、決して無視できないと思います。つまり――
十数回ほど攻撃できるエリート弓兵 vs 百回攻撃できる徴用兵
となるような?
弓が勝っている点は、連射できることだけ? 当時でも?
さらに補給用として嵩張る矢を満載にした荷車か、別に運ぶ人手の必要なことを考えたら……相当に使い勝手の悪かった可能性も?
だって火縄銃部隊は最悪、最初に支給した弾一〇〇発セットを自分で持って歩いてくれるし?
この評価が不当であっても、弓部隊は荷車と同じ移動速度が限界となるのかも? また用兵上の大きなネックでもあるでしょう。
対するに火縄銃部隊は、まあ歩兵並みの速度で移動でき、一日ぐらいなら弾の補充も考えないで済み、攻守に渡って持ち場を維持しやすい訳ですから。
そして鏃の複雑さに――さらには矢羽も――に比べれば、単なる丸い鉛の球である弾丸は、比べ物とならないほど容易に作れたでしょう。
制作時間や値段は当然に少なく済み、いざとなったら大量生産はもちろん、現地生産すら可能です!(それ用の道具が実在するそうです)
……というか火縄銃が高いという欠点も、ランニングコストまで計算すると引っ繰り返る可能性すら?
矢と鉛玉+火薬の差額が一〇〇〇円としても、五〇〇発も撃てば回収です(苦笑)
※
信長が買った火縄銃一丁の値段は、現在の価値に直すと五〇万円強。これは当時の平均的庶民が稼ぐ年収の三分の一程度。……ややボラれてる?
そして比較対象の弓もタダではないというか――実際には高級品の部類。火縄銃より安いといっても、それなりの値段なはず。
また矢と鉛玉+火薬の差額を一〇〇〇円としたが、実際にはもっとありそう。ちなみに一〇〇〇円は、平均的庶民が一日に稼ぐ金額の五分の一程度。
つまり、下手したら二〇〇発も撃たないうちに元が取れてしまう。以降、撃てば撃つほどコスパも良くなる。
……ホントに高いのか、火縄銃?
よし、それなりに説得力のある意見を捻り出せたぜ!
『弾が安価で大量に確保可能な上、持ち運びも楽』説は当たりだな!
後は異論があるかの確認を……で、最初に説明した『難しさの違い』に行き当たり、調べれば調べるほどに、そっちが正解に思えてきて……がっくり(苦笑)
また――
銃万歳
な結論ではありますが、銃器が他の武器を駆逐した史実の裏付けもあります。そして火縄銃と比べて劣るとした弓ですが――
それまでに人類が手にした最高の武器
だったことは表記するべきでしょう、ゲンジバンザイ!
中世ヨーロッパなどは違いますが……日本で評価された戦闘員は、実のところ弓の名手だったりします。
やはり弓の名手の方が、剣や槍の達人より数多くの敵を倒せる事実には負けるみたいです。
……中世ヨーロッパの上級戦士は、弓やクロスボウを教会の権力で制限するという奇策に出ましたが。
というか――
飛び道具より強い武器は存在しない!
のが真理だったりしますし(苦笑)
そして長らく王座にいた弓を駆逐したのですから、銃器のポテンシャルが高過ぎたというべきでしょう。
また、よくある台詞として「飛び道具とは卑怯な!」がありますが――
もう、そう言うぐらいしか手がない
からじゃないでしょうか?(苦笑)
だって、どんなに剣の名人だろうと、槍の達人だろうと……相手が外さなかったら死ぬんですから! それまでの努力と無関係に!
もし異世界にハイエースされる?ことがあったら――
迷わず弓兵か、その類の武芸者になることを選びましょう!
最優先するべきは飛び道具! それは歴史が証明してます!
剣とか槍とか論外もいいところ! そんな難しい武器を習得する暇があったら、弓を!
というか戦場での接近戦なら、はず槍(槍と弓を合体させた実在する厨二武器。本来は銃剣と同じく、白兵戦兵種に突撃されちゃった場合に使う)で十分だと思います!
あとは護身用を兼ねた脇差。念のために脇差を長巻にするエクステンション。これで一通りの局面は賄えるはずです!
たくさんの武器の使い方を憶えようとするのは、現代人としてナンセンス!
近代スポーツや格闘技を見れば、習得する技が少なければ少ない程、その威力と精度が高まるのは誰の目にも明らか!
武芸百般なんて理想論であって、非現実的!
まあ作者は、それでも剣を選びますけど(苦笑)
いや、トラックに壁ドン?されちゃったら、大人しく剣と魔法に耽溺するのが筋というものでしょう?
そして主人公たるもの、直剣か刀を振るってもらいたいところ。やっぱり「人生の主人公は、自分自身だ!」ですしおすし。
もちろん弓とか使われたら「飛び道具とは卑怯な!」といってみたり?
……え? 相手が火縄銃を持ってたら?
持っている武器を放り投げて降伏するか、自分も銃を持ちます!
それくらい鉄砲はヤバい! マジもう無理!