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巻ノ六 見参!黒エルモ族

半日後――――――。


「す、すごい!私にぴったりの華麗な馬車ね☆」


佳奈はウケケケと笑いながら、目の前の馬車を見つめた。

2頭の美しい白馬に引かれ、ファンタジックな姿でドドンと鎮座している。

しかし複雑な紋章の納められるべき場所には、なぜかう○このマークが掲げられていた。人類共通の洒落のようだ。


「それは、我が領の馬の中でも、最も美しい馬だ」


セドリネが台本片手に隣で答える。佳奈はしばらくそれを眺めてから首をかしげた。


「ていうか、どこに行くの?」


そう言うとセドリネの後ろからユージンが出てくる。


「主は、これより一足先に早馬で駆けますので…僭越ながらわたくしが説明致します」

「後は任せた」


ユージンが深く頭を下げるとセドリネは舌打ちした。ふさふさしているからだと、佳奈は思った。

佳奈が見つめる先で、セドリネはユージンの髪の生え際を凝視し、何を思ったか髪を数本引きぬく。

そしてそれをさっと握り佳奈には目もくれず、セドリネはさっさっと行ってしまった。願掛けか何かだろうか?

違う使用人に「煎じておけ」というのが聞こえたが、佳奈には煎じるの意味が分からない。

その姿が見えなくなった頃、頭を上げたユージンは蒼白で佳奈に馬車に乗るよう促して、自分もヒラリと乗り込んだ。


「で?」


佳奈は不機嫌そうにそう言って、自分の服を摘まんだ。マジでキモイ。


「これは何?」


それは佳奈の着ていたものではなかった。先ほどの侍女に着せられた、『こちら風』のドレスらしい。佳奈は内心「全人類の男は、こんな佳奈を見たら失神しちゃうわ☆」とか思ってるが(事実失神はすると思う)、ここで文句を言うのがラノベのお約束だろうと「男に良い顔をする」モードをONにしたのである。


「何と言われましても、ドレスでございますが?――キモスが、くっちゃべってんじゃねぇよ」

「ここの人たちはみんなこんな動きにくいもの着てるの!?」

「いえ、それは貴族の女性のものですが気に入りませんでしたか?――てめぇにはもったいない上等なドレスだっての」


佳奈は、拳を小刻みに震わせて、ユージンを睨んだ。完全に役にどっぷりつかってる。ユージンはさっそく失神しそうになった。耐えきれなくなり、窓から外に出て上から顔だけ覗き込んで話をする。…彼もたいがいかもしれない。


「今すぐ脱ぐ!」


口調は起こった風を装いつつも、佳奈は嬉々としてナイフを取り出した。


「いけません。ただ今からわたくしたちは王宮へ向かうのですから……てかんなもんみたら血液凍りつくわ」


数々の小声も、耳の退化した佳奈には届かない。ていうか、今なんていった?

しばらく涎で記憶を戻し、コケーとなく。どうやら驚きを表現したらしい。


「はぁ!?」


佳奈の、アゴがはずれた。


「頭……打った?」

「打っていません――その前にアゴだろ」


きっぱりと無表情にいうと、ユージンは珍しくため息をつき顔を引っ込めた。こんなもん王宮にとか、恥さらしもいいところだ。セドリネもだけど。

馬車は動き出していて、たくさんの風景が駆け抜ける。ユージンは遠い目になり、再びちょっとだけ顔をのぞかせた。


「主からお話するようにいわれています」


ユージンの言葉が妙に耳に響いた。どうやら真面目な話らしい。美形のマジに、佳奈は大興奮で涎を絶賛増大中だ。でも役には入りこんでいる。


「どういう…‥ことなの?」


どっちかっていうと、FUNAKOSIさんと崖の上が似合いそうな口調だった。


「実は…」


と、ユージンがそう言いかけた時――――。


『曲者じゃー!!!出あえ、出あえー!!!』←(?)


馬車の外から叫び声が届いた。辺りが波打ったようにしんとなる。

何事かと馬車の外を見たユージンの顔色がさっとかわった。

「カナ様は、ここでしばらくお待ちを」

「え!?」


ユージンはそう言い残すと、動いてる馬車から飛び降りた!

佳奈も慌てて外を見るとそこにはエルモ―――ではなく、黒い毛並みのエルモそっくりの団体が武器を持ちながら馬車を囲んでいる。


「ついに現れたな…『黒エルモ族!!』」


ユージンの言葉に佳奈は、ソファからずり落ちた。なんだ「黒エルモ族」ってー!!!

それも、そうとうな人数だ。ユージン1人では歯が立たないような。


「ユージン!!危ないわ!馬車に戻って!」

佳奈は思わず馬車から身を乗り出して叫んだ。気分はヒロイン。自分によってみたり…。

深く意味はないけれど気分はハイになって、さらに身体を押し出した。すると、黒エルモたちの様子が変わった。

お互い顔を見合わせて何かを呟いているようだ。


『ホラ、あの少女が例の…』

囁く声からそんな言葉が読み取れた。思わず顔をしかめる。汚い指で私を指さすな。


と、黒エルモたちのスキをついて、ユージンは懐から太刀を取り出した。←(?)

「フン…お前らなど、このユージンが成敗してくれるわぁ!」←(?)

次の瞬間。ユージンは太刀を振り上げ、黒エルモに向かって突進!!

そして、辺りは…。


『どえええ!?』

『うっぎゃー!!』

『いてぇ!!』

『なんて地味な攻撃をするんだー!!』

『うわーっ!!お前髪の毛なくなってる!ハゲだーっ!!』

『マ…マジでか!?』

というエルモの叫び声で一杯になった。


「……………」

佳奈は呆れて、開いた口が塞がらない。

と、そこで突然馬車が動き出した!

佳奈は我に返り、何で!?と思い窓から身を乗り出した。

すると馬車を動かしている馬に、2体の『黒エルモ族』が!!!


『フフフ…ハハハ…!この少女、確かに貰いうけたぞ!』←(?)


黒エルモ一体が高らかに叫んだ。

「カナ様!!」

ユージンが振り返るが、馬車は遥か遠く。

「ユ―――ジ―――ン!!!」

佳奈も負けじと叫んだが、その声は届かない。

「ワン!!」

ん?何いまの…。


佳奈は馬車の中で、流れる景色を見つめたまま、呆然と立ちすくんだ。


  ―――・――:*:―――・――


ガタガタと激しく揺れる車内で、言葉を失う佳奈。(その方が可愛と思ったから)

どうやらエルモは、馬を操る2人だけらしく、車内には入ってきていない。


(どうしよう……飛び降りようかなぁ。あ、でも待って。ヒロインだったら大人しく迎えを待つべき?いやいや、この頃は行動派も多いからな)


そう思って窓から外を見れば、物凄い速さで走っていた。佳奈は運動能力が死滅している。


(うーん。怪我じゃすまないかも…私か弱いし。ヒロイン死んだら話進まないし)


佳奈は勢いよくソファに倒れこんだ。どこかから「公共の福祉のために死ねぇえ」という声が聞こえたが、うん。佳奈には届かないのだ。届いても理解できないし。


「くそッセドリネのバカ。もっとなんか対策しろよ。ハゲ、水虫、変態、石田○一」


ポツリと呟くと、あのエルモの姿が浮かぶ。戦っていたユージンの姿も――――。

生きているのだろうか?それとも――――?


「ふむ。やっぱり颯爽と助けにいくのに、弱くて守られる姫みたいのがいいかな」


ちなみに作者はそういう系の主人公は大嫌いである。

まぁなんだかんだその時。


「ワン!」


足元で何かが鳴いた。ぱっと顔を上げる。懐かしい姿が目に映る。


「サブキャラのレイ――――――――――!!!」


叫んでひょいっと抱き上げる。触れられたレイは活動を停止して、がくりとアゴを落とした。


「よく来た!それでこそ日本男児だ!」


もちろん佳奈は気にしない。しばらくそうしてじゃれあって(ぶんぶん振り回して)いて、ふと何かが光った。


「ん?金目のもの?」


見ると、レイの首に小ビンがぶら下がっていた。ワインのコルクのようなものでフタがされた、物凄くファンタジックなものだ。金目ではなさそうである。

それをレイの首からはずし、しげしげと見つめる。長さは親指くらい、見るからに怪しげなドクロマークがドドンと描かれている。


「毒?まさか作者はロミジュリを期待してるの!?」


誰がロミオだよ。というか作者は楽しい話しか好きじゃない。

とりえず佳奈は、主人公っぽく悩んでいる、どうしよう。開けようか?死んだらどうしよう。

もんもんと悩んでいると、ビンの底に何か彫られているのを見つけた。


「文字……かな?」


おそらく文字なのだろう。しかし、それは多分、こちらの世界の文字なのだ。佳奈には子供のラクガキにしか見えない。ちなみに漢字も読めない。


「なんて書いてあるんだろう。恋文かもしれないのに」

絶対違う。とつっこむ人はいない。佳奈は乙女っぽく、ため息をつきながら、その文字をなぞる。


―――――――――眠り薬。


「へっ?」


ふいに脳内に言葉が閃いた。さすがに佳奈もびっくり。ゆっくりと文字に目を下ろす。

先ほどまでは、何かの記号にしか見えなかった文字の羅列が、今は確かに、意味を感じとれる。日本語より分かる。

霧が晴れるように、雨雲が流れていくように、不鮮明だった脳内がふっとスッキリする。(突然普通の文が紛れることもある)


「そっか…青バラの眠り薬だ」


佳奈は手の中でビンを転がしながら呟いた。

それは始めて知ったというより、忘れていたことを思い出したという感じであった。

佳奈はギュッとビンを握る。


「反撃開始」


……誰か、てめぇは顔面が凶器だと教えてやってほしい。切実に。

は、激しく意味不明。

これ読んで理解できる人いるのか?とかって本気で悩んでいたりします。


と、とりあえず次回は新キャラが登場です。

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