巻の五十三 ふぅ。とりあえず卓球が前進してよかったなぁの巻
「ハイ! 良く分かランボーけど、とりあえず第3回戦ハミルトンVSミス・グリーンを始めるたい焼キング!!」
なぜかマイクはノリノリでタップダンスをしている。
「コージュン。もっと早く始めればよかっ端午の節句」
どうやら某CMのオファーが来るのを狙っているらしいが、みんな股間のアンコほども――(自重)
とりあえず、そういうわけで卓球は続行するらしい。ていうか、
「あら珍しいわね。私ハミルトンとミス・グリーンの絡みは初見の気がするわ」
「か、絡みだと!?それはまさか、お互いの身体と身体を重ね合い、温もりと温もりを分け合う、人類の神秘――」
「なんで今日に限って『ドグァアア』とか『ジュボォオオ』とか言わな淫乱?」
「oh~それは作者がメンがドうしてイしたからじゃアリマセンカぁ?」
「たしかに最近は同じパターンばっかりだったものね」
「oh~…」
グリーン先生が寂しげに視線を下げた。というかコイツは「oh~」以外から台詞を始められないのだろうか…。
「こうしてpropleはmeny menyなcoltureをforgetしていくのデスネ……。それはとても親不孝なことだと、わたしはthinkするのデ~ス。worldのpeopleは自身のcoltureにホコリとセキニンを持つべきなのデース。personをpersonであらしめるのは、ウエツケられた民族……つまりはcoltureへのホコリなのデスカラ」
「つーか『あらしめる』とか言う日本がが分かる奴が、こんなカタコトでしゃべるのおかしくないか?」
さすがに色々気になったらしいヴェルカラが、『卑猥発言ごっこ』を切り上げてつっこんだ。
「というか、ミス・グリーンはどうして親不孝だけ上手くつかえないんですの?」
「ハミルトンはん。それはミス・グリーンがラスコー洞窟の壁画を描いた時に神と取り決めた『約定』に関するこトンボばびゅーん。どうかそこは置いといてやっ天狗もばびゅーん」
ちゃんちゃらちゃっちゃちゃ~ん。
グリーン先生の年齢が、1万5千年ほど遡った!
「つまり、ミス・グリーン?あなたはクロマニュン人と接触があったってことでいいのかしら?」
「おぉ~ドッキングゥも何も、ラ・マルシュ洞窟もショーヴェ洞窟もアルタミラ洞窟もコスキュール海底洞窟も、worldのヘキガをdrowしたのはだいたい私デスヨぉ~?」
「すご異人さんは足長~い」
もはやグリーン先生の経歴をつっこめばいいのか、マイクの悪化を食い止めるべきなのか、作者には全く判断ができない。
というか、ここまで書くだけでも、クロマニュン人やら壁画やら調べさせられて予想外に時間がかかった。正直早く卓球を進めてほしかったりする。
「というわけで、ちゃっちゃっか始めよーぜ!」
なんだか最近丸くなったというか、常識を身につけてきたヴェルカラが言った。作者に向かって親指を立ててウインクしている。
うげぇ。作者は男が嫌いである。
「何!?男が嫌いだと!?てめぇふざけ――」
ドングボキャリパミュパミュァアアアア。
結局はいつも通りのノリでヴェルカラはぐちゃぐちゃだ。まぁいいや。うん。お菓子食べたいなぁ。
「で、なんですの?わたくしとミス・グリーンの対決ですの?」
「oh!若い衆とbattleデスネぇ!鼻が鳴ります!!」
「うぎゃぁあああああああああああ!!おいどんの鼻が取れたぁああああああああああああ」
遠くでチョモランマダンスをしていたマイクが叫んだ。しかし途中で何かに気づいたようにすると、おそるおそるグリーン先生を窺う。
「え、えぇーと。改めて。――鼻が取れたぁああああああああアメンボびゅんびゅん☆」
グリーン先生がニッコリ笑った。マイクがほっと胸をなでおろす。
「お、おい。いったいマイクとミス・グリーンの間には何があるんだ?」
「そんなのわたくしが知るわけないんですの」
「ていうか、知ったらマズイやつだよな、多分」
「…そうですのね。ここはそっとしておくんですの」
2人は手を合わせて、グリーン先生を拝んだ。その瞬間。グリーン先生のバストが3センチ大きくなった。
「わたしのムネムネがbigにbecomeしたところで、逝きマスヨォ~」
なんか色々おかしいが、グリーン先生は急にラケットを構えた。特に作者にも異存はなかったので、ハミルトンにも早急に持ち場についてもらう。
「マズは鼻調べデス。奥の細道『壺の碑 市川村賀城にあり。』の全文は言いなサイ」
遠くでマイクの鼻が陥没して騒ぎになっているが、ハミルトンには関係ない。ふっと綺麗にほほ笑んで見せる。
「そんなものはお母様のお腹の中にいた時から暗記済みですの。――つぼの石ぶみは、高さ六尺余り、横三尺ばかりか。苔を穿ちて文字幽かなり。四維国界の数里をしるす。「この城、神亀元年、按察使鎮守府将軍大野朝臣東人之所置也。天平宝字六年、参議東海東山節度使同じく将軍恵美朝臣朝カリの修造にして。十二月朔日」とあり。聖武皇帝の御時に当たれり。昔よりよみ置ける歌枕多く語り伝ふといへども、山崩れ、川流れて、道改まり、石は埋もれて土に隠れ、木は老いて若木に代われば、時移り、代変じて、その跡たしかならぬことのみを、ここに至りて疑ひなき千歳の記念、今眼前に古人の心を閲す。行脚の一徳、存命の喜び、羇旅の労を忘れて、涙も落つるばかりなり」
「あるいみミス・グリーンよりもすげぇえええええ」
ヴェルカラは絶叫した。
作者も同感だ。
「ハミルトンはんは、どう見てもアジア圏とは関わりなさソーイング・マシーンがたがたがた」
「私は今の間で、奥の細道の全文言えるわよ?」
「俺、随分自分がノーマルな気がしてきらぜ…」
マイクはドグドグと血の溢れる鼻を押さえながら、ヴェルカラは何かを悟った様子でそれぞれ乾いた笑いをあげた。
さて、で卓球はと言うと。
「わたくしの番ですのね。…今出てきた多賀城碑について説明するんですの!」
「多賀城碑は、江戸時代の初期に土にintoしているのをdiscoveryされマシタ。歌枕の「壺の碑」とsameだとthinkされていたのでコンランがbornしました。but2つは全くのdiffarentなthigです。but当時は多賀城碑は壺の碑であるとされていたので、バショーはcryしんばかりにKANGEKIしました。まぁ、1千年前の記念碑ですのね、バショーではなくてもカンドーするのがニンジョーというものデス。これは先ほどわたしが言ったcoltureの話にも通じマスネ。こうしてカンドーするバショーの姿が、わたしが先ほど言いたかったことを端的に表しているともsayできマス。さらにbut。多賀城碑は断じて壺の碑ではアリマセン。ただバショーのgetした歴史的カンドーは、やがて俳諧理論をジュクセーさえていきマシタ。そこには歴史的truthを超えた、文学のtruthがありマス。まぁ前置きはこれくらいにシマショウ。多賀城碑は先ほど説明したように、江戸初期にdiscoveryされた石碑で、多賀城の遠隔に関するキジを刻んでアリマス。earlyから偽碑説が唱えられた明治以降、その史料的なvalueはミトメられませんデシタ。さらにさらにbut。近年。多賀城跡のハックツが進んで、碑文がセーカクだとunderstandされ始めたのデス!平成10年。セーレキでは1998年の6月30日。国のジューヨー文化財にシテイされマシタ。ちなみに、壺の碑は平安後期にはすでにデンセツにbecomeしていて歌学書にトウジョーしていマス。鎌倉以降は、歌枕としてお盛んデス!この石碑のfrontには、坂上田村麻呂が陸奥セーバツのtimeにキザンダ『日本チューオー』の文字があるとsayしマス。again、placeについては壺…つまり坪を手掛かりに、青森県上北部シチノヘ町の坪地区などが候補にされマシタが、no noデシタ。さらにさらにサラミのbut、昭和25年。セーレキ1950年、同県同郡トーホク町のツーショー坪渡から、『日本チューオー』とキザマレたstoneがdiscoveryしれ、thatが壺の碑ではないかというミカタがユーリョクになっていマス!!!!!!」
――な、なんだと!?(全員)
「さ、さすがミス・グリーンだわ」
「前置きと『ちなみに』が長すぎルービックキューブの間の埃は取りにくいよネ」
「つーかそれはドコで知ったんだ?もはやミス・グリーンってなんだ?アンドロイドの別名か?」
わいわいやってる外野とは対照に、ハミルトンは顔色を悪くしながらラケットを構え直した。
ミスグリーンはふっと笑う。
「奥の細道の旅程を示しなサイ!」
「それはどうやって答えるんだ?」
「おいどんも分からな「い」が最後の台詞多いなぁ」
「ていうか、まだ1往復もしてないのね。この勝負」
確かに。つーかその1往復もしていない間に、こんだけ会話ぶっこむお前らも十分すげーよ、と作者は思う。
で、ハミルトンはボールを睨みつけると、真剣な表情でラケットの角度を調節した。
そして、なぜかグリーン先生とは90度別の向き。つまり真横に向かってボールを打つ。
――刹那、ボールは何者かの力を受けたかのように水平面をギザギザと進み出す。
「深山、江戸、千住、草伽、春日部――」
「ま、まさか。あのボールの軌道は芭蕉の歩いた道のりを示しているのか!?」
ヴェルカラが叫んだ瞬間。ボールが煌めいて、空中に日本列島が描き出された。
ボールはそのまま進み、東北あたりまで行くと、グリーン先生に向かって進み出した。
「――大垣、長島!!」
ハミルトンの力強い声が響いた瞬間、グリーン先生のラケットが弾け飛んだ。
「くッ!」
そして落ちる沈黙。
「ふ…FUFUFU」
怪しい笑い声を漏らしたのは、もちろんグリーン先生だ。下は漏れていないのでご安心。
グリーン先生は口元についた血を拭う。(いつの間に血を吐いたんだ)
「どうやらわたしは、youngを舐めまわしていたようデスネ」
「いや舐めましてはないだろう」
「鼻まわしていたようデスネ」
「おいどんの鼻がぁぁああああああああああああああああ」
ハミルトンは後ずさった。色んな意味で。
「次は、very veryホンキデス!」
グリーン先生はPKで粉砕したラケットを直し、腕が360度周るほど振りかぶった。
「peopleがそもそもある特定のpeopleであることは、いかにしてcanなのかanswerしなサイ!」
「な!」
さすがのハミルトンも絶句だ。
「トマス・ネーゲルの難問ね」
「つーかそれ、答えあるのか?」
「ないわね」
「……」
「……」
「おいどんに鼻はあるのかんちょー」
ないです。
一方ハミルトンは歯を食いしばっている。
「ひ、人には、普遍的無意識と個人的無意識があって、この個人的無意識の違いが個を表しているんですの。つまりコンプレックス。その個人の経験、心的外傷、そこから生じる憎悪、嫉妬、嫌悪、恐怖、劣等感、そしてそれに対する罪悪感。さらにはそれを抑圧する前意識。その複雑な交わりと、意識に繋がる一部の選別。それが人が人で…つまり個人が個人であることであり、個人であるための必要最低限ですの!」
「なんか答えたぜアイツ」
「自分で捻りだしたみたいね」
「でもこれ、どうやって正解と不正解を決めルーマニアングリー?」
「ていうか、ミス・グリーンすごい笑ってるんですけど」
「ほんとね」
たしかにグリーン先生はにっこりと笑っていた。大仏さんはにっこり笑っています。(なんかそんなのなかったっけ?)
「それはanswerではno noデスヨネ?」
「で、でも!間違ってると言えるんですの?」
「oh~そうデスネ。でもproblemは、セーカイではないというtruthなのデス。thinkしてみてください。仮にそれが正解でも不正解でもないとして、そのうち正解である確率はドレクライでショウ?無量大数分の1くらいデスヨ~?でも不正解である確率は、九割九分九厘デ~ス。それならば、答えがどちらかunderstandしない時は、不正解とするのが、cleverな姿勢なのではないデショウカ?」
「それは……それは………」
ハミルトンは泣きそうになっている。
「なんか、ミス・グリーン色々すげぇな」
「そうね。あそこまで見事な言葉攻めはそう見ないわ」
「おいどんはもうついていけ南蛮焼きぃ」
とかしてる間に、ハミルトンが打ち返し損ねたボールがポテリと落ちた。
グリーン先生が聖母のようにほほ笑んでいる。
「おしかったデスネ☆」
ハミルトンの顔がへにゃりと歪んだ。
「………――ですの」
「oh?」
「棄権ですの――っ!」
そう言って、ハミルトンは何処かへ走り去って行った。
「……」
「……」
「……」
「オチがつかねぇな」
「そうね」
「おいどんのオチ(自主規制)!」
マリーベルはふっと息を吐くと、指を鳴らした。
ばきんと卓球台が割れて、佐藤先生が現れる。
「結局、マイクの鼻は今ついてるのぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお????」
ちゃんちゃん。
予想外に長かったです。というか卓球が長いです。
次回。決勝が行われる…はずです。作者もそう信じたい。