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巻ノ五 伯爵登場

今回は、自然に目が覚めた。

ゆっくりと起き上がると服が濡れている。何故かは分からないが、特に下半身に集中して濡れていた。ハムスターのゲージのような匂いもする。

部屋の隅で、器用に鼻を押さえたレイが蹲っている。――およそ犬とは思えぬ格好だ。そんなことができたのか。日本に帰れたらとりあえず珍○景に応募しよう。


自分の考えに興奮し、涎を垂らしながら辺りの様子を見る。

シルクの毛布がかかったベッド。宝石が埋め込まれた机。その上には紅茶の入ったティーカップが1つ。…ついでになぜか、電源のついたままのDSが置いてあった。中を覗いてみると牧場ノ物語。


「なんで?」


つっこみ所が満載なのは分かるが、まず自分だということを自覚してほしい。人類の平和のために。

まぁとりあえず。佳奈は物語の進展のために、涎記憶能力を発動させた。涎に移り込んだ光景を思い出すのである。それで今の状況が分からず、佳奈は眉を顰めた。


「どういうこと?ここ、さっきの部屋…でも、火が上がって…」


言いかけて、佳奈はハッとした。目が覚める直前、夢を見たのだ。(話が進まないので、一時普通の思考能力を授けます)

咲き乱れるバラ。バラを引き抜いてしまった青年。真っ暗な闇の世界と、そこに蹲る幼い影。そして、そこから放たれた言葉。(解除)


――そして、そこで漏らしたような……ううん。そんなはずはない。だって私もう中学生だもん!中学生は援助交際も出来るんだぞ☆

佳奈はふヶふヶと笑った。その笑いがピタリと止まる。何だか恐ろしい一瞬だった。佳奈が急に無表情になってゆっくりと天井を見上げたのだ。某伝説の勇者さんの母君のような物が、口から這い出てきそうだった。レイは渾身の力でジャンプしてドアノブに取り付き、逃走した。一方佳奈は珍しく悩みこんでいたのである。


そういえば、さっきから何かが足りない…。


「うおっ私の獲物!美形外国人ユージンちゃんはどこ!?」


佳奈は涎三割増しで辺りを見渡した。だが、人の気配はせず、窓からは陽光が差し込んできている。外からは、うふふーあははー捕まえてごらーん。いやーんダーリン待ってぇというエルモの奇声が聞こえてきた。興奮した佳奈は窓の外に火を噴いた。その火にはたと気づく。

ま、まさか、炎に巻き込まれた…?


うぎゃぁあああ、彼の純情派私のものよぉおおおおお。と錯乱する佳奈の横のドアがゆっくりと開いた。


「佳奈…」


名前を呼ばれ、とっさに振り返った。佳奈だって、自分の名前は識別できるのである。戸籍入れるのに必要なので。佳奈はこれまで53人の男性との婚姻届を偽造した。


それはいいとして(いいのだろうか…)そこに立っていたのは、ユージンより少し年をとった男性だった。まだ青年と言える年頃だろう。ちなみに素足である。――石田○一か?

そんな石田青年はジッとこちらを見ながら、先ほどのティーカップにほじった鼻くそを捨てている。


「変態!?ストーカー?ていうかストーカーがいるとか私すごくない!?」


興奮する佳奈をよそに、男性は窓の外を遠い目で見つめた。そして、口を開く。


「私は、リドウォールの主=エライヒトだ」


リドウォールの主?…つまり、ユージンが言っていた『例のあの人…』。

主と名乗った男性は、佳奈に視線を移した。男だ、と思い佳奈は彼をまじまじと観察する。鼻はあるようだ。そういえば例のあの人=ウォルデモートさんは、ハリャーたちに殺されてしまったのだった。つうか禿げてるし。推定年齢20代なのに、NUKUMIZUレベルの禿げ方だよ。しかもそれが額にくっつくという典型的なキモイ禿げ方。顔はランクAなのだが。なんだか残念なやつだ。

しかし佳奈は、彼が好みではなくとも涎を増すのだった。だってエライヒトだよ?自分で言ったんだよ?どんだけすごい奴なの?どんなけ金持ってんの!?

そんな佳奈の前で、石田青年は足を踝で掻きながら話し出した。――おそらく水虫だ。佳奈も全身にある。


「時は、きた…」

「…………なんかベタすぎじゃない?そんなん帯に王道ファンタジー掲げたラノベも書かないよ」

「ふっ。台本は完璧だからな」


佳奈に貶されてもキレないとは、中々器は大きい奴である。ゆっくりと佳奈の隣のイスに腰を下ろす(神だ!)水虫青年は、ポケットから【ココクリ 台本】と書かれた本を取りだした。

チラリとのぞくと、赤字で何やら書き込まれている。――彼の登場など、この話を過ぎたら企画されていないのに。

その点佳奈ちゃんは主人公だもんねぇとウケケケ笑う佳奈。水虫青年は気にせず続きを話し出した。おそらくそれも台本通りなのだろう。ユージンは2人のツーショットに、口を押さえてしまった。今日は自分の役目がないので、頑張らずそろそろと退散していく。禿はそれを見て、台本に赤線を引いていた。そしてページをめくり、何かを口の中でブツブツ繰り返した後やっと口を開く。


「よく聞いておくれ、佳奈。とうとう話す時がきたようだ」


そう言って水虫(ついにただの“水虫”になった!)は、佳奈の茶色の目をじっと見つめる。

シルクでできているのだろう仕立てのよい服を着ていて、手首のカフスキラリと開く。ついでに佳奈の涎もきらめく。なんたって金持ちを発見したのだから。


(ヴィジュアル最強ユージンと、財力最強の水虫……両方ゲットだぜ☆)


佳奈は1人、勝利の高笑いをした。

しかしその後カフスよりも、彼の後頭部が眩しいののに気付き。さすがに初対面の相手に


「そのハゲ晒してんじゃねーよ」


とか言って爆笑した。水虫も爆笑した。カメラに額から上だけ移さなければ美形なのだが……。(なんにしろ、佳奈よりましなのは間違いない)

まぁその水虫は、はたと気づいたように台本に目を下ろし深刻そうな顔をした。


「時間がない。今は急がなくてはならない……」

「佳奈との結婚?」


……はたして、この言葉も台本にのっているのだろうか。作者はその台本に激しい興味を持った。

――つーか、台本とかどこで貰ってきたのだろう。そこにはきっとわたしの輝かしい逆ハ―天国が…!

涎を垂らす佳奈を放置して、話はどんどん進んでいく。なぜか台本は2冊目に到達していた。いったいそこまでには、何が書かれていたのだろうか。


「あぁ、申し遅れた。私の名はリドウォール伯爵セドリネ・シェルデフ―――勝手に呼び出しその上挨拶も遅れたことは、本当にすまなかった」


しかもいまさら自己紹介。崩壊した台本である。今さらすぎて、名前は水虫に決まってしまったのだが…。しかし、それにしても表情が乏しく口調が妙に威厳に溢れていてポール・●ッツさん並みの声量があるため、何となく老人のような印象を与える。つーか禿げてるし。水虫だし。

確かに現代日本では見ないタイプだ。近所であったら絶対に忘れない自信がある。ついでに学校であったら、絶対にイジメる自身がある。(ちなみに佳奈は、学校ではベランダで飼われている)だが、佳奈は水虫―――セドリネの後ろの赤い物体に目を奪われて……といえば聞こえはいいが、とりあえず目を見開いて半狂乱で叫んだ。


「なっ!!何で!?何でエルモがいるの―――――――――!!!!!?」

『ヤァ!久しぶり』


3度にもわたる〝もさもさパンチ〟を思い出して、顔を顰めて腹をなでる。佳奈にも怖いものはあったのである!

さらには吐き気もこみ上げてくる。(まさか佳奈にそんな感想を抱かせるとは…)――――――なぜなら、セドリネの背後には3体のエルモがいたのだ。よ~く見ると、そのうち一体の腕の中に人間の赤ん坊らしきものが……。


「そ、そそそそそそそれって!」

『おかげ様で、元気に生まれました。娘です』


違うエルモが言った。


「おかげ様って何?私何かしたっけ?」


混乱して、つっこむ所がおかしいが誰も何も言わない。


『えぇあなたが、いい〝マト〟になってくれたので』


なぜかエルモがぽっと顔を赤らめた。……気がした。エルモは赤いので良く分からない。


『嫌だ、私ったら!そのぉ子供をかえらせるのってストレス溜まるんですよ』

「か、かえらせる?」


「エルモの子供は卵からかえる」


セドリネが、淡々と答える。その視線がエルモの腕の中で笑う赤ん坊に向いているのを見て佳奈は失神しそうになった。(失神ってなんか乙女っぽいから、しようとしてみた)


「そ……それがエルモの子供?」


恐る恐る聞くと、またもやセドリネが答えた。


「エルモの子供は、生まれて1年ほどで産毛が生え始め2年ほどで大人になる」


見た目人間のエルモがおぎゃあと1つ泣いた。

にっこりと笑った一体のエルモ(おそらく母親)が、笑みを浮かべて何かをくれた。


「えっとー…なんですか?これ」


手の平に乗っているのは、腐り落ちたチューブのようなもの。

コテンと首を傾げる佳奈に、エルモは晴れやかにほほ笑んだ。


『それはこの子のへその緒よ』


泣きそうだ。ホントに……。


「それでは話はこれくらいにして」


セドリネが謎の動きをする佳奈に無視してそういう。彼がポンポンと手を打つと外から侍女が入ってくる。

それと入れ替わりに、その姿は消えていた。


ものすごくお久しぶりです。すいません!

で、相変わらずのふざけ具合……もう作者にも何が何だか分かりません。


次回はすぐ投稿できます。

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