巻ノ四十七 深い意味もない話
「お前を抱かせてくれミス・グリーン…」
ヴェルカラのふいの発言に、グリーン先生は頬を赤く染めるでも、乙女らしく恥じらうでもなく、ただ楽しそうに鮮やかにほほ笑んだ。
「oh!それはveryハゲシイ発言ですねぇ~。どうしたんですか、ヨッキュウ不満なんですかぁ?」
「いや……なんていうか、俺30分おきに淫らな妄想をして、一時間おきに淫らなことをして、さらに3時間おきに激しい奴をヤラないと死んでしまうんだがな…」
「それは難儀たいね。でもおいどんはヴェルカラはんが3時間おきにヤッテルのを見た記憶はないたいよ」
少々疑問に思った様子のマイクだが、作者にもそんな記憶はない。つーかそんな物語ならとっくに制限タグをつけている。ちなみに読者の方々に言っておくが、この話には何のタグもついていない。一応健全な物語なのだ。人間失格とか、伊豆の踊子とか、そんな奴と大まかな括りは一緒なのである。
ところでヴェルカラは何やら悶えている。激しい鼻息で床板をふっ飛ばしながら、ギラツク瞳でグリーン先生を見つめている。
「おい……。それでミス・グリーンはOKなのか?それともNOなのか?……つーかNOって言われても襲うんだけどよ。…………………嫌がってる女を無理やり――」
「おお。ヴェルカラはんが興奮してるたいね。――なんかおいどんも興奮してきたあるよぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
2人の鼻息は宇宙空間を吹っ飛ばした。マリーベルがそれを呆れた様子で見ている。ハミルトンは純情なので瞳をうるうるさせた。それに気付いたマリーベルも、なんだかムラムラしてきた。
しかしそこでふいに作者は気付いた。このままでは話が進まないどころか、健全な小説という建前さえも崩れかねない。
どこか地底の方から(空は2人の鼻息が吹っ飛ばした)「今さら健全な小説とかどの面下げて言ってんだよ」と聞こえたが、もちろん作者は丸っと無視した。というか、反応に困る上、正直作者は今書く気がおきていない。つまり一々関わるのは面倒この上ないのだ。つうかこの小説を読む人もいないのに、なんのために書いているのだろうか?いまさらながら、なんだか作者は泣きたくなってきた。誰か読んでくれ。と、某旭丘ボーイに願ってみるが、まぁどうしよもないだろう。所で、妙にキャラクタ―の会話文が少ない気がする……。なんだかただの作者の独白めいてきた。これじゃあ読んでる人のテンションも上がらなさそうなので、作者はとりあえずぶっ飛んだことをしてみることにした。
「よし。じゃぁ、ここでサプライズ。第一回、野球拳大会だぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
それにヴェルカラとマリーベルは、とても興奮した様子だ。一体この短い期間で、どれだけ興奮しているのだろうか?あ、マイクを忘れていた。と作者は気付いたが、消すのは面倒なので、まぁなんでもいいや。とりあえず、ハミルトン以外は満更でもないと思ってくれればいいよ。あ、ごめんなさいタメ口だ。
「じゃぁとりあえず、じゃんけんしよーぜ」
ヴェルカラがグーを作って天に掲げる。
ハミルトン以外が呼応した。だがもちろんハミルトンも強制参加だ。
「「「「さ~いしょはグッチチのモ~ンチッチ」」」」
全員、パーだ。
「チッ」
「やるわね…」
「japaneseジラシですねぇ」
「おいどんはそういうの、好きあるよ」
「不毛ですわ……」
息を吸う音が重なる。
「「「「あ~いこでしょっ」」」」
全員、チョキだ。
「なんて奴らだ――!」
「殺る気ね…」
「私をマジにする気デスねぇ」
「おいどんどんどん」
「誰も殺る気じゃないですわ」
マリーベルとグリーン先生が視線を合わせる。ハミルトンはとてつもなく嫌な予感がした。しかしあれだ、走りだしたら止まらないのである。
「「「「あ~いこでしょっ」」」」
再び、全員グー。……いや。
「な、なななぜかおいどんの手がベクトル変換んんんんんんんんんんんんん!?」
マイクの手が、がくがく震えながら2本の指を突き出す。チョキだ。マリーベルが凄絶にほほ笑んでいる。
「PKなめなんじゃないわよ」
誰もなめてねぇえええええ!!
誰もが思ったが、口に出すことは出来なかった。というか、別に出す必要はなかった。
なにせマリーベルとグリーン先生は面白がってるし、ヴェルカラの鼻息は荒いし(ヴェルカラは男だろうが女だろうが獣だろうが、なんでも興奮する)、ハミルトンは傍観の構えだし。
と、いうわけでマイクが3人に囲まれる。
「オラオラ。お着替えの時間だぜぇええ、ふけけけけけ」
「とりあえずイジルのはマイクよね」
「yes~」
「ふぎぁぁああああああああ!!なんで全部脱がされてんのぉぉおおおおおおおおおおおおおおお」
驚きのあまり、マイクは普通の口調で話してしまった。
とそこに、興奮した様子の佐藤先生が床から顔だけ出す。
「今、恵美と慎はあんぱんの中よぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
そしてさっさと潜って消えた。モグラか!という作者のささやかなつっこみ。
というかこの物語に、怪談の要素が欠片も見えない。そして見せられる気もしない。激しく困った。
そこでふいに作者は思った。グリーン先生になんとかしてもらおうと!
「oh~。japaneseタリキホンガンですねぇ。very veyeいけないthingですよ~。そうやってotherに頼ると、bigにbecomeした時に社会のハグルマになり損ねてrealな自宅警備たいになってしまいマ~ス」
「自宅警備隊なんて言葉良く知ってたわねミス・グリーン」
「oh~running aroundしていたら、急に顔面に衝突してきマシタ」
「そうなの」
「……………………意味分からないですわ」
同感だ。まぁいいけど。
とりあえずグリーン先生は何とかしてくれる気になったようだ。にっこりほほ笑んで、パチンと指を鳴らす。
「指は鳴らすと太くなるのよぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
マリーベルが手を打つと、佐藤先生の指が全てリモコンになり消えていった。毎回気づいてはいたらしい。何気に初めて構ってもらえた佐藤先生である。
で、グリーン先生の方はというと…。
「な、何が起こるたいか?」
落ち着きを取り戻し、全裸ながらも問いを発するマイク。何気なくそれをみやったハミルトンとヴェルカラは仰天した。
「?どうしたんだっちゅーの?」
視線に気づき、訝しげなマイク。
ハミルトンは、投げやりのようににっこり笑った。
「マイク。あなたの顔、パーツが全部10㎝ずつズレてるんですの」
「つーか胴体と顔以外の細かいパーツ、全部ズレてるぜ…」
それはまさしくホラーだった。マイク的には、みんなの方を真っ直ぐ向いているのだが、片目は金髪の中に埋もれてるし、何より恐ろしいのが顎は元の位置だが口はズレてるのである。
…なにせ全裸だから、惨状が良く分かる。
「なして恐怖の眼差しで見てくるけん」
マイクが、近づいて来る。
「逃げるんですの」
「俺も!」
「私も行こうかしら」
「japaneseキモイ物体ですね」
お前がやったんだよ。と思ったこともやはり誰も言えなかった。
何はともあれ、4人は謎の生物から逃げることに成功した。
「……………………おいどん。寂しいたいね」
取り残された全裸のマイクの瞳から、豆乳があふれ出る。
その様子があまりにも可哀そうで、作者は情けをかけることにした。
「『^』っていうコレはアクサンシルコンフレックスっていうのよぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
地上12階にも関わらず宙を突っ切ってきた佐藤先生。マイクは人に出会えた喜びのあまり、佐藤先生を捕獲した。
「ってえ?何?これ何!?マイクの大事なモノが太ももについてるわぁぁあああああああああああああああああああああああ」
「おいどん。嬉しいあるよ!」
さて、その後2人がどうなったのか。
そんなの作者が知るはずがない。
お・わ・り
タイトル通りの物語でした。