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巻ノ四十六 老人ホームは恋の味

親譲りの貧乏性で、子供の時から損ばかりしている。

金葉梨子(かねはなしこ)は号泣した、必ずやかの邪袮暴虐なる借金とりに金を返さねばならぬと決意した。

梨子は鳥取に住む16歳である。この春めでたく市内の公立中学を卒業したが、家庭の諸事情により進学は望めそうになかった。

梨子の父は、梨子2歳の夏の暑い日、山に帰っていった。

母は今年に入ってすぐ、冬の寒い日、地底に帰って行った。

つまり梨子は孤児だった。なにぶん急なことだったので、金の工面など出来るはずもなかった。

なにせ山と地底に帰っていくような両親である。親戚などいるはずもなく(というか、いたらどう接しよう)1人暮らしを余儀なくされていた。


でも、私大丈夫よ。ぎゅっと拳を握ると、指先から紫色の液体が零れる。これは梨子のくせだ。

慌ててくたびれた畳に擦り付けると、梨子は顔を上げた。きっかり3時間ズレタ時計の隣に、1つだけ立派な額。その中には、達筆な文字でこう書かれていた。


『介護ヘルパー2級。金葉梨子』(諸々略)


梨子はにっこりした。




「いやいや、これなんだよ」

「wonderfulデスね!梨子は結局なんなんデショーか?」

「というか、わたくしたち梨子の目の前にいるのに全く気付いてもらえないんですの……」

「これはあれね。向こうには見えていないパターンよ。とりあえず話を聞かなきゃいけないみたいよ」

「おいどん、尻子ちゃんと親睦を深めようと思ってたとです…」


みんな言いたい放題だが、マイクがしょんぼりしていることだけは明確だった。なにせ尻男と尻子はいないのである。

マリーベルたちはマイクをおいて、いくつか会話を交わし頷いた。


「まぁこの話を最後まで聞くまでは帰れそうにないわ。仕方ないから聞いていきましょう」


マリーベルが指を鳴らすと、物語がまた進み出した。




近所の子供が憐れんで譲ってくれたスクーターを疾走させる梨子。今にも折りたたまれてしまいそうな、ペラペラの壁の薄汚いアパートから出て10分。角度60度というもはや坂とは呼ばない道をBダッシュで抜け、ユグドラシスやハイアイアイ島を越えるとその建物はある。


――マジカルドリームパワー!!




「な、なんですのマリーベル様」


前回似たような言葉を聞いた時ロクな経験をしなかった経験から、ハミルトンはビクビクしていた。

しかしマリーベルはふんっと花を鳴らして、髪を書きあげる。どこからともなく「うをぉぉぉおおお」と感嘆の声が上がった。


「このままじゃこの話が中々終わりそうになかったから止めたのよ」

「but、止めてしまっては進みマセンよ?ドースルのデスか?」

「簡単よ、一人称にするのよ」


ちょ、ちょっと待ったぁああ。


「なんか作者(其の1の方)が騒いでおまんがなよ」

「見苦しいわね」


いや、あのね。見苦しいとかじゃなくて!作者は一人称を書いたことがないから!そんな無茶ぶりされて――。


パチンっと、マリーベルの指がなった。




始業時間30分前に職場である老人ホームに入った私は、はぁはぁと厭らしく息を切らしながら、ロッカーまで走った。

そこまでに通り抜ける道すがらに集まる熱い視線……。今日も私はみんなをMIRYOUしてるみたい☆




「おいおいおい。なんかマズイだろう」

「そうですわ」

「そーですネ。このままじゃ、どうthinkしても佳奈が復活してしまいマスよ」

「せっかく佳奈を追い出したのに、そんなことは絶対許さないわよ」

「おいどんだって、もうハンバーガーはコリゴリたい」


久しぶりに元主人公の名前を聞いた作者である。その上誰も復活を望まないのだから、本当に哀れな奴だ。さすがに作者も可哀そうになってきた。もちろん復活させる気は微塵もないのだが。

マリーベル様が額に手をやり、心底呆れたという様子で作者を見た。


「そんなチンケな文章力でよく小説なんて書く気なれるわね……」

「いや、あのさ。今作者批判してもこの話終わらないよ?作者速くこれ書いて風呂入って寝たいから。ね?」

「何が『ね』なのか分からないんですの。……でも速く終わらせるのは同感なんですの」

「そうたいね」

「もうブンミャクとかは何でもOKなので、適当にかいつまんでfinishしまショーか」

「あ、それいいね」


うん。どうやら全員一致の意見のようだ。




梨子は203号室の村々(むらむら)シテルという老人の元に、黒焼きイモリを持っていく途中こっそりと足を止めた。小さく開かれた扉の向こうを盗み見る。

ドクンっと、鼓動が跳ねる。

それはまるで、一週間便秘だった主婦の快便の効果音のような鈍い音だった。

梨子は胸を押さえる。苦しい。そしてちょっぴり気持ちが悪い。なにせ5日間バニラエッセンスしか口にしていない。

その部屋にいる、偏屈で有名なおじいさん。そしてそのジジイを手玉に取る24歳の青年。

路御炉万歳(じごろばんざい)さん。私の……好きな人。




「おい。だからこれ何だって」

「ていうかどういう流れでこうなったんでしたっけ?」

「おいどんは、ファンタジーでこんな展開を引っ張り出す作者どんは、ある意味天才なんじゃないかと思うたい」

「アホの極みね」


マリーベルがすっぱり切り捨てた。


「でも、わたしlittle気になってきマシタよ。いったい梨子はどーなるんデスかねぇ」

「いくらなんでも路御炉さんはどうかと思いますの」

「いまさら過ぎデスよ」


グリーン先生がカラカラ笑うと、みんな深く頷いた。




少し遅くなってしまったので、村々さんはちょっと不機嫌だった。でもそれも黒焼きイモリを見せれば、すぐに消え去る。村々さんは夢中でイモリにかぶり付いている。

さて、と梨子は考えた。今日は今から村々さんを風呂に入れる予定だ。

実は梨子は村々さんの風呂をちょっと愉しみにしていた。なにせ村々さんは性別不詳なのである。名前にしてもシテルなので、さっぱり分からない。ちなみに住民票にも記載されていないらしい。なので今日、しっかり大事なところを観察してやろうという魂胆だ。


「村々さーん。お風呂逝きますからねぇ」


ちょっとニュアンスが違ったかもしれないがオールおっけーである。梨子は村々さんの許可も得ずに、勝手に服をはぎ取り始めた。

風呂は毎日入れないので、少し体臭がきつい。72時間寝続けた布団のような匂いだ。そんな村々さんの着ている、病人服のような服をゆっくりとはぎ取るうちに、梨子は妙な気分に陥って行った。それは…そう。入ってはいけない部屋に、こっそりと忍び込むような気分だ。梨子はまるで獣のように――。




「はい、自主規制ですわ」

「チッ」

「チッてヴェルカラはん。そないにあからさまに嫌そうにせんでも」

「でも、確かに今のはbadでしたよ。だってノリがココクリじゃありませんデシタから」

「そうね。ココクリのノリでもなくそういう表現は、ただのソウイウ物になってしまうわ」

「伏せすぎて読者も理解不能だろ…」

「読者なんていないんだから気にしないでいいんですの」


ハミルトンの無邪気な笑顔に、ヴェルカラは乾いた笑いで応じた。




梨子はそこで、自分がいかに迂闊だったのか気付いた。

すっぽんぽんにした村々さんを眺めようとして、村々さんの股の熱帯雨林が想定外の密林だったと判明したのだ。太ももまで広がっている。これでは結局性別不詳だ。これはもうあれだろう。アルかどうか実際に触って確かめてみるしかないだろう。梨子はそう決心した。しかし梨子にも羞恥心はある。さすがに急に触ることは憚られた。そこで梨子は閃いた。そうだ、事故で触ってみよう!

思いつくとルンルンで、梨子は村々さんを持ち上げて浴槽に移そうとした。そこで第二の迂闊に気付く。なんと村々さんは純金製で、どう考えても人間に持ち上げられるような重量ではなかったのだ。せっかく確かめられると意気込んでいたのに、まさかこんなハプニングだなんて。もういいや、やっぱ許可とって触ってみよ。


許可を取るなら、実際に性別を問えばいいだろうに。しかし梨子はもう触ることしか考えられなかったので、そんな簡単な事にも気付かない。

画面の前の諸君に問いたい。

「所で村々さんは、男性ですか?女性ですか?」と尋ねるのと

「所で村々ンさんのピーーーーをタッチしてみてもいいですか☆」と言うの…。

はたしてどちらが良いか。まぁ作者時には、別にどっちでも良いのだが。(マジかよ)


とりあえず、梨子が早まった行動に出ようとした途端。扉が開いた。そこで梨子は息を飲む。なんとそこには、憧れの路御炉さんがいたのだ!


「じ、じじじじじじじじじじ路御炉さん!?」


思わず声が裏返るが、梨子はそんなことどーでも良かった。路御炉はホケホケ笑って、村々を示した。


「梨子ちゃん。村々さんはハ・ジ・メ・テでしょう?」

「あ、はい。そうです」

「だからそういえば、村々さんがジュ・ン・キ・ンだって言ってなかったなーとオ・モ・ッ・テ」

「お、おおおお気遣い痛み入りますぅぅぅううううううううう」


なぜ梨子は路御炉を好きなのか、作者は猛烈に気になる。

動転した梨子は、自分が全身にスライムをつけてグチョグチョであることを思い出して、慌てて隠そうとしたが上手くいかない。(ちなみに、梨子は廊下でこけて、なぜか起き上がるとスライムまみれだった)梨子は視界の端に村々さんを見とめ、駆け寄ると持ち上げて上半身を隠そうと思った。しかし純金が持ち上がるわけもない。しかも全裸の村々さんは、ヌッルヌルのテッカテカで危険この上ない。


焦る梨子の目の前に、青年の姿が映り込む。路御炉さんだ。

彼は村々さんの反対側から手を入れ、梨子と目を合わせた。


「じゃあカ・ウ・ン・ト・ダ・ウ・ンするからね」


路御炉さんの声に合わせて、同時に村々さんを持ち上げる。梨子の手が滑って、村々さんのヌメヌメさんな背中の上で、路御炉の指と絡まる。節くれだって、太くて、大きな指だった。


「「あっ……」」


2人は同時に声を上げて、相手を見る。そして頬を染めて、ふいっとそむけた。その瞬間、梨子が無意味に態勢を崩してずっこけた。そう、目の前の路御炉さんの胸に向かって――。




「みていられないわ。いったい私はどうすればいいのよ。そしてマイクはどうして泣いてんのよ」

「うぅ…えっぐ……な、梨子ちゃんは大変な人生を歩んでるたいね。おいどん、梨子ちゃんの淡い恋を応援するたいよ!」

「俺は村々さんにすこぶる興味があるぜ」

「私はearly次の心霊にgoしたいのデス」


ちなみに作者は、現在眠さマックスです。


「ていうかどうしますの?作者もう書きたい所は全部書いたみたいですのよ」

「しかも飽きてるたいね」

「私もtiredしました」

「それは私も同感ね」

「じゃぁさっさと終わらせようぜ」


うん。それがいいと作者も思う。




あれから、もういくつかの季節が過ぎた。路御炉と見た綺麗な桜は段々と色を薄くし、気の強そうな濃い緑に染まり、そしてそれすらも脱ぎ捨てた。何もない、まっさらな幹だけが、意地になったように沈黙している。純度の低い、外も良く見えないガラスに指を這わせ、梨子は息をついた。


「おい、梨子。結果はどうだったんだ?」


渋い声が梨子に問いかける。梨子はジンっと冷えた指先を握り込み、にっこりと笑った。


「えぇ村々さん。今から見るところなの」

「そうか」


そう。今梨子はムラムラでヌメヌメでベトベトの村々さんと暮らしていた。

あの日、梨子がこけた時。梨子が路御炉の胸に飛び込む前に、1つの障害があった。それが村々さんだった。

結局梨子は路御炉の胸に飛び込むことはなく、なぜか村々さんの熱帯雨林に両手をつっこんだのだった。その結果、村々さんが男性だったと判明した。そして村々さんは年甲斐もなくムラムラした。そうして、2人は春に結婚も決まっていた。


村々さんのヌメヌメの身体が寄り添ってくるのを感じながら、梨子は手に握っていた封筒を、震える手で開く。その中から、薄いたった一枚の紙切れが零れ出してきた。


『金葉梨子 介護ヘルパー一級 合格』


2人は幸せそうに笑った。




ふぅ。軽くこんなもんだろ。


「「「「「こんなもんじゃねぇぇぇえええええええええええええええええええ」」」」」


みんなが息ぴったりで叫んだ。みんな梨子たちには見えないのをいいことに、梨子のオンボロアパートで騒ぎ散らしている。

マイクだけが号泣している。


「うっうっ……本当にいい話でござんした」

「その脳味噌いっぺん掃除してやりますわ」


ハミルトンの片手にはいつの間にかスプーンが1つ。単純な日用品だけに、想像が逞しく膨らんでしまう。

ハミルトンが、マイクの脳味噌を『掃除』しようとしたのでグリーン先生は笑った。


「oh!wonderfulな発想デスね!中々interesthingデス!!」

「おっとっとっとがなくなったんだけどぉ」

「なんでおいどんに言うんじゃけん」

「いや、お前の耳からハミルトンがおっとっとっとっぽい物を出してるから……」

「へ?…………………‥‥って、おいどんのおっとっとっとぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


楽しそうなみんなをしり目に、作者はひっそり力尽きようとしていた。

正直、速く終わらせたい。だが綺麗な終わりが見えない。

そこで作者は天啓を受けたような衝撃を感じた。――そうだ!それだ!!


梨子と村々さんが、そういう行為に入り始めた様子を、興味津津で見ている一同をしり目に、作者は欠伸を噛み殺した。

薄い天井が軋みを上げる。


「マヨネーズは冷蔵庫に入れると、傷むのが速くなるのよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


佐藤先生は、今度こそ人がいる所に落ちられて、とても満足そうだった。

作者は思った。よし、上手い感じにまとまったぜ、と。

作中でも言ってますが、作者は猛烈に眠いです。もう死にそうです。

後書きも何も書くことが浮かばないです。はい。皆様おやすみなさい。(皆様がいないけれど……)

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