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巻ノ三十九 伝説な世界

所で、なぜ恵美や慎、はたまたヴェルカラがいないのかと疑問に思った方はいないだろうか?(いないと思うけど)


なんだか分からないが佳奈がハンバーガーになり、チーズで視界が染まった。そこまでは全員共通の体験なのだが、この3人はマリーベルたちの方には流されなかった。

では、いったいどうなったのか。以下をご覧ください。



「うぅう頭いてぇ。てか佳奈死ね。マジ死ね。消滅しろ」


本当に消滅したとは、まさかヴェルカラも思うまい。

とりあえずブツブツ言いながらも身を起こして、ヴェルカラは頬を引きつらせた。


「おいシオ~ン。俺もう3日も働き通しじゃ~ん。そろそろ休もうぜ」

「休憩なら定期的に取ってるだろう。後3日したら考えてやるからそっちの稟議書速く終わらせろ」

「死ぬわ!」


どっかで見た長身のやる気のなさそーな奴と、銀髪の美青年。(ちなみに彩雲国のセイランに似ている(アニメの顔が))

でっかい執務机にどっさりと書類が積まれている。うん。これはあれだ。夢だ。


「何よ、ここどこよ」

「分かんなぁい。でも佳奈ちゃんはいないねぇ」


ヴェルカラが頭を打ちつけようと壁を掴んだ瞬間、横から声がした。勢いよく振り返ると、恵美と通常モードの慎いた。

ヴェルカラは安堵でちょっと泣きそうになりながらも、2人ににじり寄った。どう考えても1人で精神が持つ空間ではない。


「お前らもいたんだな!?いや、俺もうダメだと思ったぜ」

「佳奈がいないだけましだと思うわよ」

「あはは~」


ポヤポヤした慎は、さっそくキレのあるダンスを始めている。

恵美は聖母よろしくほほ笑んで、ヴェルカラにはキツイ眼差しを向けた。


「で、ここどこよ」

「…ここはあれだよ。色々伝説な所だよ」

「伝説!?もう私と慎の大恋愛が伝説になったてことね!?」

「いや、しらんけど」


嬉々としてよさこいを踊る恵美。確かに何となく伝説のカップルの気がしないでもない。

ヴェルカラは若干以上に引きながら、ため息をついた。なんかもう、生きて帰れない気がする。と、そこに


「そこのお前たち」


今までひたすらペンを走らせていたシオンがこちらを向いた。

3人は迷惑そうにそちらを見る。シオンは意にも返さず、机上を示す。


「暇なら手伝ってくれるかい?」

「「「いや」」」


即答だ。そして息もぴったり。それに反応したのはライナだ。

ペンを折りそうなほどキツく握りしめ、こちらを睥睨する。


「おい。俺がこんなに一生懸命働いてるのに、お前らは逃げるのか?そんなのチョーズリーじゃん。ぜってぇ許さないかんな」

「いや、別にお前に許してもらわなくていいし」

「ていうかあなた誰よ」

「ボクも聞きたいなー」


軽く無視だ。


「ていうかお前ら、今物語のどの段階だよ。遺物回収止めた所か?シオンはなんちゃらの勇者の話したのか?つーかルシルとか絶対今見てるだろ。なぜに出てこない」


ガタンと音がした。見るとシオンがイスを蹴倒して立ち上がった様子だ。

朗らかな微笑はすっかりなりを潜めている。


「君、どうしてそんな話を知ってるんだい?」

「あ、あれぇ……俺ちょっとマズイこと言ったかも。あれだな。うん。今のなし。なしで行こう!穏便に!」


シオンはどっかからナイフを取り出した。

それをしっかりヴェルカラに向ける。(ルシルが出てこないのは、作者が口調を覚えていないからだ)

と、そこでさらにイスが倒れる音。ライナが立ちあがったらしい。

ライナがラノベなら6割読んだ辺りの真剣な表情になる。


「お前、どうして一般人にナイフなんて向けてんだよ」

「どうして?そんなの国のために決まってるじゃないか」


シオンはさも不思議そうだ。ヴェルカラはちょっとビクビクしながら後退する。恵美と慎は社交ダンス中だ。

ライナが唇を噛んだ。


「どうしてだよ…!お前そんな奴じゃなかっただろう!?」

「いいや。昔から僕はこうだったよ。君が勘違いしていただけだ。優しいだけで、玉座は手に入らない」


ライナがーん。打ちのめされた表情。3人はそろりと扉から出て、家政婦は見た状態で成り行きを見守った。


「それなら、俺はなんのためにお前を手伝ったんだ!」


「いや、たんに怪しい奴にナイフ向けてなぜそうなる」


さすがにヴェルカラもツッコンだ。もちろん答えは作者が面白いからである。


「人が死ぬのは嫌い、殺すのも嫌い……そうだったなライナ」

「……ああ」

「にしてもあのレポート、国を越えて回し読みって哀れだよな」

「だから俺は、誰も死ななくても、殺さなくてもいい国を作るんだ。そのために……」

「今は死んでもしょうがないっていうのか!?」

「つーかあのレポートの内容痛いよな」

「分かってくれ!ライナ!!」

「わかんねぇよ!」

「BLかて」


その時、なぜか空からヴォイスが降ってきてライナを捕獲した。


「どうもシオン陛下。ご機嫌麗しゅう」

「…………お前は、誰だ」

「ヴォイス・フューレルー(そんなじゃなかったっけ)でございます。以後お見知りおきを」

「ライナをどうするつもりだ!!」

「彼を、ボクたちの王にするのです」

「おいおい。なんかぶっ飛んだぞ」


ヴェルカラもあきれ顔だ。というか作者もこれがなんの話かよく分からなくなってきた。ていうかここまできて、なぜフェリスがいないのだろうか…?


「シオン、俺は王になって絶対いつか、お前と同じ所まで行くからなッ!」

「ラ、ライナ!待ってくれ!お前アレだから《寂しがり屋の悪魔》だから。俺に喰われる役どころだから!!」


シオンが慌ててひきとめる。しかしヴォイスが慇懃に礼をすると、すっかり2人の姿はなくなっていた。

シオン、呆然。ヴェルカラ、唖然。恵美&慎、ダンシング。

ヴェルカラはひっそり静まった部屋の中で、おずおずと声を上げた。


「お、おい。あんまり気にすんなよ?もうちょいしたら誘拐されたつってフェリスと、あのウザイ女|(名前は忘れた)が助けを求めにくるから。それまで待っとけよ、な?」

「で、結局誰だったの?アレ」

「分かんな~い」

「てか、これどうしたら帰れるんだ俺らは…」

「そもそもどうやって来たのよ」

「佳奈ちゃんがチーズ噴いたからでしょぉ」

「何?佳奈だと!?」


なぜかシオンが反応した。ヴェルカラ、ビックリ。


「な、なんだ。佳奈知ってんのか?」

「佳奈。それは世界を破壊する神。アール・アールの事だ」

「……………………………………いや、あえて間違ってるとも言いにくいけどさ」

「何の話よ」

「佳奈ちゃん有名人なんだねぇ」


慎はロボットダンスを披露しながら言った。

シオンがヴェルカラの手を掴み、真剣な表情で詰め寄る。


「居場所を知っているのか?それなら教えてくれ。望むならなんでもやるぞ。なにせ俺は王だからな」

「なんでも……?」


問い返し、ヴェルカラははたと気づいた。

これまであまりにもツッコミどころが多く、忘れていたが、彼は男だ。しかも美貌の。そんで何でもやると言っている。


「じゃぁ、よこせよ…」

「…?何をだ?」


心底不思議そうなシオンを放置して、ヴェルカラはニタリと笑む。

そして何枚も重ねられた重そうな服を1枚、脱がせた。


「あ、あの…」


後ずさるシオン。ヴェルカラは目を爛々と輝かせながら追いすがり、さらに1枚はぎ取る。

すると後は、案外脱がせやすそうな服装。

襟元の紐を解きながら、ヴェルカラはシオンに馬乗りになる。


「俺がいたただいてやるぜぇええええええええええええええええええ」


恵美と慎は興味津津な様子で、2人の横30センチの位置に張り付いて、なりゆきを観察している。

シオンは何とか抜け出そうともがきながら叫ぶしかなかった。


「どっひぇぇえええええええええええええええええええええええええええ」


…なんか、台無しだ。

それがあまりにも哀れな姿だったからだろう。ふいに神様が現れた。

ぼんっと音がして。そこらじゅうにカビが溢れ出したのだ。そしてそのカビは集まって、ヴェルカラとシオンを見つめる。


『ふわぁあああああ♡』


器用に文字を描きながら動くカビに、恵美は後ずさった。慎はポヤポヤほほ笑んでいる。


「あれぇ?佳奈ちゃんでしょぉ?どうしたの?」

「何!?佳奈だと!」


シオンが反応した。佳奈も反応する。


『佳奈の名前知ってるの!つまり佳奈が好きなのね、そうなんだね。ウケケケケケッケケ』

「…よく器用に文字を書くな」


シオンも呆れ顔だ。

だがそのすきを、ヴェルカラは逃さない。

ズルリと紐を抜くと、次は腰に巻かれた帯的なものを取りにかかる。


「お、おい。それどころじゃないだろう!?」

「いや。俺に好きなものくれるっていったんなら責任果たせよ」

『でも、カナリンもその男の人ほしー』

「お前は見てるだけでも興奮できるだろ。後で貸すから、最初は見てろよ」

『あっ。スゴイ!じゃあカナリンは2回も興奮できてお得だね☆』


佳奈は嬉しそうだ。ヴェルカラも満足げ。恵美も慎も楽しそうに見物している。

シオンはいつもやり込める側なので、大いに焦った。


「お、おおおおおおおおい!そういうことは男同士でするものじゃないだろう!?」

「何言ってんだよ。もはや原作でもライナとそんな感じじゃねえか。気にすんな。どーせお前もハマるから」

「何にだぁああああああああああああああああ」


ジュボ


ふいに奇妙な音がした。全員そちらを振り返る。するとなんと、カビが燃えていた。それはもう、激しく。


『うわぁああああチチチチ!』


カビが叫び声を書く。ヴェルカラはそれを一瞥して、シオンの上半身を裸にした。


「っておいおい。お前、今この状況でまだやめないのか!?」

「なんだ。アイツも俺たちに燃え上がれって言ってんだろ?」

「絶対違うだろぉおおおおおおおおおおおおおおお!??」

「いや。細かいことは気にすんなって」


そう言って、ヴェルカラがシオンの身体に指を添わせた、瞬間。



ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン



なぜかカビが大爆発した。もちろん至近距離にいた諸々の人々も巻き込まれる。視界が真っ暗に染まった。





「……で、なんで帰ってきてんだよ」


ヴェルカラがいたのは、クレスティアの城だった。

ちょっと遠くにマリーベルとハミルトン。それから踏み台いされたマイクと、ほほ笑んでるグリーン先生が見える。そしてさらに遠くには燃え上げる温室があった。

背後には、踊り続ける恵美と慎がいる。シオンだけがいない。

ヴェルカラは手に持った紐(シオンの服から抜き取った)を眺め、そして


「なんでだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


絶叫したのだった。




ちなみに、その頃のシオン。


「き、消えた…?」


貞操の危機は脱したものの。床は丸コゲである。そして上半身は裸。


「……」


なぜか、ちょっと残念そうなシオンであった。



めでたしめでたし。

いや、もう何の話だろう…。

とりあえず、面白ければいい……ですよね?

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