巻之三十五 若葉中学校のソーセージ
特に若葉中学校は出てきません。
「で、あんたは何をしたいわけハミルトン…」
さすがの超絶美形明眸皓歯驚天動地女神様なマリーベルも、ハミルトンのぶっ壊れた行動に渋い顔だ。
とうのハミルトンは酒樽の中に使って、「おーほっほっほ」と高笑いだ。全く会話にならない。
――とうまぁ。朝だよ?
そこで急にマリーベルの懐から、某魔術のインデックスさんの声が響いた。実はマリーベルはイ●デックスの大ファンで、自主制作のタイマーを作成してしまったのだ。マリーベルはうっとりと聞き惚れている。
――早く起きないと、わたしお腹減ってしんじゃうよ。
すると、可愛らしい美少女ボイスと重なるように、警告音が響きだす。そして急にマリーベルは胸を押さえて蹲った。
「ま、まずいは…。私としたことが…時間を確認するのを忘れていたわ……」
苦しげに呻くのを、けたけた笑ったハミルトンが眺めている。――助けろやコラ。うっかり世界を滅ぼしそうになるが、それはなんとか堪える。
――カウントダウーン! 5・4・3・2・1♪
明るい声が最後通告を終えた直後、マリーベルは目覚めた。いつものような冷静沈着な仮面を外して、某美少女戦士のように元気溌剌な様子でピースを決めている。ウインクとべろ出しも御愛嬌。佳奈がやったときとは大違いの破壊力。しかも格好が際どいバニーちゃん姿になっていた。文字通り悩殺である。
「この世の美少女は全て私のものよー!!!」
しかしぎらりと飢えた瞳と、妖しくうねうね動く指が、色々裏切っていた。ハミルトンが頭から酒を浴びながら、ご機嫌で拍手をする。
「どーしてまりーべるさま楽しそーなんれすかーぁ?」
「それわね。わたしは一定時間以上女の子と一緒にいると、愛の使者、マジかるドリーマーZに変身してしまうからよ!」
もちろん佳奈は含まれない。
マリーベルは感動に内震えたような足取りで、ハミルトンに近づいた。ほけらーと酒樽から見上げるハミルトンに、妙に妖艶な流し眼を送るとゆっくりと口角をつり上げる。
「大丈夫。優しくしてあげるから」
「…は?」
マリーベルが指輪鳴らすと、酒樽はベッドになった。こてんと転がされたハミルトンに、マリーベルが伸しかかり、ふけけけけっと危なすぎる笑声をあげる。
ハミルトンのノドが、ヒクリと強張った。
「うぎゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
悲鳴は、誰にも届かない。
一方。
「ビック・マイク・デイビスというだけあって、お前は本当にビックだな」
なぜか頬を染めながら言うウェルカラに、佳奈はむしろ誇らしげに全裸の身体を見せつけた。燦然と輝く夕陽が、佳奈の――いや、ビック・マイク・デイビスの下半身を照らしている。
「そう。俺のソーセージは本場のジャーマニー産より極厚なんだぜ」
「そ、そりゃすげぇぜ!」
どこがどうすごいのかはよくわからないが、ウェルカラはかなり興奮している様子だ。木々のなぎ倒された荒野で、愉快な2人はかなり盛り上がっている。
「俺ぐらいになると、ジュディとかはもうかなりガキだね。えみちゃんは超色っぽいけど」
「女なんかやめろよ! 俺となら空も飛べるはずだぜ!」
「この俺とか? 俺をなめんなよ。リサとコウジの夫婦は両方おいしく頂いてやった俺様だぜ」
「し、師匠!!」
ヴェルカラは、はうっと甘い吐息と共に顔を真っ赤にして両手で顔を覆った。もう乙女そのものである。
ビック・マイク・デイビスは某旭丘ボーイのように、まぁまぁと宥めて跪いているヴェルカラの肩をたたく。
「俺の息子も欲求不満みたいだからな。ちょっと遊んでやってもいいぜ?」
「よ、よろしくお願いします!」
「どうだ? いま若葉中学校は理科の授業中だ。生物学について、俺達で講義してやろうじゃないか」
「こ、公衆の面前で!?」
ウェルカラは恥じらいに身を縮めつつ、しっかりと頷いた。
「なんか、マジで興奮しますね」
「はっはっは。今日は美男子一名TO GOだぜ♪」
豪快に笑ったビック・マイク・デイビスを敬慕の念を込めて見上げたヴェルカラは、ひくりとノドを引き攣らせた。
…そこには、顔面がどう見ても犬の男がいた。
「コ、コロ…」
助はつかない。みなさん覚えているだろうか?二年生の教科書のどっか(調べるのはめんどくさい)で出てきた、コロという犬の存在を。
koto is running around in the snow
そう、犬は喜び庭駆け巡ってたアイツである。ヴェルカラはしかし、「いや」と思案気にアゴを撫でる。
「犬とプレイ…? 獣淫という奴か? そそそ、それはそれで中々」
ウェルカラは折り紙どころか金の延べ棒付きの変態だった。
ビック・マイク・デイビスwithコロは、急に正気に返ったように首をふる。
「あれ? わたし今まで何を…? ってえ? なんで、なんでわたし全裸なわけ!?」
「ああ、お前は今から俺と若葉中学校の教卓でrunning aroundするはずだったんだ」
「ら、ランニング? 走るの?」
「…そう。走るんだよ。未知の世界へ、俺の身体がお前のから――」
「だまれぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええ」
正気モードのビック・マイク・デイビスwithコロ(以下、ビックん)は絶叫した。ウェルカラはちょっと嬉しそうになる。
「うぶな獣を襲う俺…。なんか……いい」
「よくねぇええええええええええええええええ。ってめぇ学校で教わらなかったのか!? そういうのでHIVとかなるんだよ。ていうかわたし男じゃないって」
「いや、だからお前のその太平洋並みに見晴らしのいい胸板……で……」
ウェルカラの表情が絶望に彩られていく。ビックんはゼンラーマンな胸元を見、対照的に狂喜を滲ませた。
全国の少女系レーベルの主人公が求めてやまない秘宝。それを人は巨乳と呼ぶ。ただし顔面はコロ。
ビックんは腰に手を当て、空を仰いだ。
「神よ…あなたは見ていてくれるんですね。わたしこれから一生豚肉食べません。……ミュージック、スタート!」
たたたた、たたんタタタター。
某キューティーなハニーのテーマソングが、荒野に響き渡る。
「この頃はやりの女の子、巨乳、爆乳、佳奈ちゃんよ~♪ こっちを向いてよミイコ、だってだって2頭身なのよ~♪」
自己流のダンスも加えて、ビックんの胸元がビックんしている。ウェルカラは見ていられないというように、すすり泣いている。
何だか分からないが、若葉中学校は救われたようである。
「もうこれで全世界の男たちはカナリンに夢中ね!」
「俺は…おれはぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「カナリンが大好きなのぉ?」
「男ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
作者は展開に困って、とりあえず文字を重ねてみた。
作者は本当の本当に困って、フリップに何かを書きつけみんなに見せてみる。
『一時休憩』
――続かない。(これ、どっかにもあったな)
作者はソーセージは嫌いです。