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巻之三十三 佳奈は愉快なクソまみれ

――ボテ。


かなり情けない落下音とともに、佳奈は尻もちをついた。なんか腹が減っていて、尻もちという言葉もどっかの神経を刺激する。――ぐぅぅゥ。

なんだかもう混乱するのも絶望するのも疲れて、佳奈はやれやれといった風情で辺りを見回した。


「こ、これは…どっからどう見ても無量大数%くらい日本……」


ででーんと目の前にそびえるのは、わっさわっさ葉の茂る新緑の山。地を覆い尽くす広葉樹は、学校の校庭にも植わっていた木だ。名前は知らない。

そして何よりも特徴的なのは、清水の舞台のように、山からせり出ている寺らしき物体だろう。妙に地味なモノクロ感に包まれた光景は、やっぱり日本にしか見えない。


『うふふふふふ…ヒックっ。かなめぇ、やっとそこについたんれすのねぇええ』

「あ、はい。は、ハミルトン?ですよね??」

『かなのくせにわたくしをうたぐラルレ。いますぐポチっと殺すれすのぉー』

「え、ちょっと、待って。殺すだけ妙に鮮明だったんですけれど」


佳奈の叫びは届かない。

あははははは。とあどけない笑い声が木霊した次の瞬間。――ピぃ。




ずどぅぅどどどどどどどどおどおおお。




山が、雪崩た。先ほどまで穏やかな形相で佇んでいた山が、低い悲鳴のような音と共に…。

佳奈はその麓で喉を引きつらせた。


「うきゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああ」


一目散に逃走する。それはもう見事なスピードで。


『しゅぎょうらんばー1。ぶざまにおろれはいーわー』

「てめぇええ、ぜってぇ酔ってるだろぉおおおおおおお」

『さけびまるってもじすぅかせごうとしてりゅのはおみとーしれすのぉ』


佳奈はすごいスピードで崩れ始めている山を見た。もう山の2分の3は崩れている。


「こ、これはアレだな。魔法を使ってバビュンと解決しなければいけないんだな」


よーし。佳奈は無い知恵を本気で絞った。絞りすぎて鼻水が出た。


「ラブリービーム!」


もちろん何も起こらない。


「えんじぇるパワー!」


「マジカルドリーム!」


「マジカルチェーンジ!」


「セェクシービーム!」


「南無阿弥陀仏!」


「ナウマクサンマンダバザラカンダン!」


「アーメン、ソーメン、ヒヤソーメン!」


「求めるは雷鳴=稲光!」


「ビビデバイデブー!」



ずずどぉぉおおおおおおおおおおおおお。


なぜか加速した。


「こ、こうなったら最終奥義!」


佳奈は立ち止り、後ろを振り返った。そしてゆっくり目を閉じる。


「黄昏よりも暗き存在、血の流れよりも赤き存在――わぷっ!」

『ろれはやめるんれすのー!』

「今さら自主規制!?」


佳奈の叫びも最もである。


ずどどどどどど。


「てかヤバい!」

『はりれー♪』


いつになく可愛い口調で言われ、佳奈は不覚にもときめいてしまった。


「そ、そうだよね、走ろー!」


そうして走り出したが、約10分後。


「な、なぜだ。なぜあの雪崩はわたしに追いつかない…]


そうなのだ。土砂はひたすら佳奈をつけ回すのだが、絶対に追いついてこないのである。

すると天にまします悪魔様が、


『あらりまえらー!ろーゆーものらすれー!!』


とか言って、ケラケラ笑いだした。佳奈はなんだか本格的に怖くなってきた。かなり今さらだが。

実はその頃、ハミルトンはアルコール度数98%という化け物なウォッカをたらふく飲んでいたのだが、もちろん佳奈に知る由もない。


「い、いつまで続くんだよ。なんでもいいから速く次いってぇええええええええええええ!」

『あら、進めて欲しいの?』

「ふ、ふいに響いた謎の美声は、まさしくマリーベル様!!」

『全く。ハミルトンが楽しそうなことしてると思ってきてみれば…。どんなけ飲んでるのよ。こんなの城で宴ができるわよ』


なんだかとんでもないことを言われたが、もちろん佳奈はどうでもいい。


「神様、仏様、マリーベルさまぁあ。おたすけぇええ」

『神様なんて低レベルなものと一緒にしないでほしいわ。さて、じゃあこのボタンでも』

「え?何?何のボタン?」


――ポチ。


「うふぉッ」

『何のボタンかしらこれ?あら、モニターがあるじゃない』


呑気な言葉を聞きながら、佳奈は泣いた。佳奈はなぜか二つの絶壁の間に張られたロープに、逆さづりにされていた。足をぐるぐる巻きにされているのだ。

しかも四方八方に、なぜかお掃除用のはたきがある。


『ああ、これを押せばいいのね』


とても理解力の優れた御仁は、無情にもポチっといってしまった。

はたきが、佳奈に押し寄せてくる。


「うぎゃぁうふぁふぁふぁはぁああ。やめ、そこはアっ、いや~ん。お代官様ぁ」


佳奈はエグイ感じにキモく悶えた。すると今度は、キーボードをたたく音がしてくる。


「マリーベルさま?いったい何を……」


タンっと軽やかにENTERが押された。


――ミシ。


「わきゃ!ヤバっ」


身をよじると、さらに、――ミシ。


ロープが、どんどん切れていく。その間もはたきのくすぐり攻撃が続く。


『もっと面白くしましょう♪』


またキーボードの音、そして…。


「くさっ!くさいよ!!」

『当り前よ。ここは今、ぼっとん便所になったわ。落ちればまさにクソになるわ』

「うぎゃぁああああ、ってくすぐるなぁあああああ」


くすぐりに耐えようとするが、正確の悪い所をついてくるはたきは、全くもって耐えがたい。

身をよじる。ミシミシ言う。切れそうになる。臭う。臭い。またミシミシ。


結局佳奈がどうなったか?

そんなの佳奈なんだから、結果は決まっている。


「うわぁあああんん。もうお嫁にいけないぃいいいい」


佳奈は星になったのだ。クソ星に。


『心配しなくても、どうせ嫁の貰い先なんてないのに』


飄々とした、さすがなマリーベルさまである。




「人に起こる全ての物事は、自然の中で起きることであり、それは摂理とも言えると思うの。異常も例外も、摂理の中で起こっていることであり、長いスパンで見れば異常性もほとんどない。ただ人間と言う短期でものを見る観察者のよってのみ、それらの事象は異常と定義される」

『戻ってきなさいクソまみれ』


なんだか遠い目をしてカッコイイことを言いだしたクソを、マリーベルは冷たく一蹴した。

佳奈は荒野に体育座りをしたまま、すすり泣いている。


『いいじゃない。ちゃんと綺麗にしてあげたでしょう?』


確かに落ちた後、たっぷり5分ほどもがかされた後、気づけば綺麗な状態で荒野に放置されていた。なぜか頭のてっぺんにはピーを乗せたままだが。


「………………………………じゃあクソまみれって呼ばないで」

『分かったわ。天辺クソ野郎』

「………………………………………だって、女の子だもん」

『ああ、もうめんどくさい」


本気でうんざりした声音で言って、マリーベルはふんっと鼻を鳴らした。


『いきなさい。ハミルトン』

「え、え、待って。酔っ払いは待って!」

『あははは、ごめーれーれすろれェ。よーし、はりりっりゃうよぉお?』

「何で疑問形なのぉおお?」


無情にも、ボタンが押された。瞬間。なぜかそこは寝室に変わる。いつか見たアルフォンソの寝室だ。しかもなぜかそこに、1人のムキムキ男が立っている。筋骨隆々の逞しい四肢を、ピンクのふりふりドレスに包んだ野郎だ。これはあれだ。アルフォンソの元カレ(カノ?)って奴だ。


『ぜーいん血祭りりあげりゅのぉおお』

「なんで血祭りだけ綺麗に発音できるんですか!?」


この後に1万6820人ものマッチョが控えることを、佳奈はまだ知らないのだった。

カ「やっほー佳奈だよ!良い子のみんな、わたしと一緒に――うぎゃぁ」

ハ「こんな奴はほおっておいて、わたくしのために遊んでくれませんかしら?」

カ「ど、どないな意味でんがな」

ハ「簡単なことですのよ♪わたくし今、各部位の出血量と死亡時間の統計を取っているんですの。子供の資料は貴重ですわ」

カ「だ、だれか、わたしをコイツと一緒に置いておかないで…」

ハ「コレと一緒に放置されているわたくしの方が可哀そうですわ。美女とクソですわね」

カ「ま、またクソって言われた」

ハ「てっぺんにまだ、まるっと乗ってるんですのよ。ああ、臭い臭い。はやくアルフォンソさまの所にいきましょう」

カ「い、いんだもん。わたしは全国のクソ野郎の希望の星になってやる!」


こうして佳奈の冒険は始まった。

とかどーでもいいことを書いて見ました。単に書くことなかっただけです。すいません(笑)

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