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巻ノ三 平行世界

「お前!すっかり忘れてたぞ~たくっ!完全なるサブキャラだなぁ」

佳奈はレイとの再開の抱擁をすませ、ジャレ合いをしていた。(佳奈が一方的に乙女を意識しているだけである)レイは不安そうに尻尾をまきこんで後ずさっているが、佳奈は涎を垂らすばかりで全く気づいていない。今にもぱっくりいかれてしまいそうである。早めにそうしてもらった方が幸せな気もするが。


ふと見上げればユージンが複雑そうな表情でこちらを見ている。――紅茶はまだ持ってきていないらしい。腹が減った佳奈は、かなりイラついてこいつ丸飲みにしてやろうかと思ったが、見た目がいいので勘弁してやった。――まぁ後で絶対おいしく頂いてやるけれど…ゲヘヘ。


ジ―――……。


熱い視線だ。――佳奈の魅力でICHIKOROね☆


ジ―――……。


何だか物凄く物言いたげな様子のユージンに、佳奈は(彼女の考える)可愛く握った両手を口元に当てた。+上目使い。最高のきもさだ。


「ええぇ――とユージン?あの…あたし…すっごく気まずいんですけど……」

「それは失礼致しました『お前の顔が失礼だよ』……しかし」


いつも通り無表情だが、途中でぼそっと何かを言った。が、佳奈の耳は死滅しているのでよく聞き取れなかった。佳奈は「わたしへの賛辞に決まっているわ」と、喜々として目をぎらぎらさせる。


「しかし?」


わくわくした様子でおうむ返しに聞くと、青ざめた顔とぼそりとした返事が返ってくる。


「…………………………………どんな生き物でも()で愛を注ぐお心には感服致します。……ただ、食糧とふれあわれるのは如何なものかと……情が移ると、後々面倒でございましょう?」

「はっ?食糧?」


佳奈は、たっぷり3泊考え込んで、謎の叫び声を上げた。きっとこれは、ブラジルの人にも届いたはずだという奇声。これのよって一時間で4.6という種の絶滅速度が、倍にまで跳ね上がった。地球の異常は半分ぐらい佳奈のせいかもしれない。


「何?ここの人たち犬食べるの?昔の中国人ですか!!生類憐みの令だぞオラッ!!徳川なめんなよ!!」


意味不明なことを口走り、佳奈は半狂乱になっていた。ただし今回は佳奈の言葉もただしい。明日は太陽が落っこちてきて、太平洋が干上がるかもしれない。ちなみに佳奈は太平洋を知らない。

今度は蒼白で戸惑うユージンを意にも介さず、「家康~家光家光いえっちゃーん。余は男狂いじゃーあははははー」などと言い続けているので、思わず彼はいまのうちに逃げようかと考えてしまった。でもとりあえず、職務には忠実な彼は寿命を半分くらい捨ててここに残った。


「イヌとは何でございましょうか?」

「は?今あんたが食べるとかほざいた我が家のカワイイ、レイコちゃんだよ!」


全く空気が読めない佳奈が、びしりとレイを指さすと、怯えた様子でユージンの影に隠れていった。もはやどっちが食べようとしていたのか分からない。というかいつの間に「我が家の」などという恐ろしい形容詞がつけられたのだろうか。というか作者は形容詞がどういうものかよくわかっていない。

その哀れな子羊レイを守ってやらなければと思ったのだろう。ユージンは意を決したように、レイを庇う位置に立った。


「なるほど。カナ様の世界では犬というのですね……価値観も随分違うようで」


何いってるんだ(佳奈に思われたもう終わりかもしれない)と思いながら、佳奈はレイを抱きあげようとする。ユージンも頑張って守ろうとするが、彼女の穢れた手はワープしてレイを捕まえた。瞬間レイは泡を吹いて倒れた。ユージンはレイを救うためにも、彼女を刺激しない言葉を慎重に選んだ。


「そう警戒なさらないでください」

「やーだ。だってせっかく男の子とお近づきになるためにクスネテきたのに!」


佳奈はぶつくされた。もうくすねたとか言っちゃってるがユージンはつっこめず、一歩後ろに下がっただけだった。彼はそこで目をそらして、まるで決死隊の隊員にでも選ばれたように決意の滲む精悍な顔をした。


「先ほどの話しの続きをさせていただきます」


なんと佳奈と長時間話をしようというのだ!彼は真の勇者に違いない。一方佳奈は渋々頷いて、近くにあったイスに腰を下ろした。腕の中でレイがビクッ痙攣したが、佳奈は全く気にしない。


「あなたも座れば?」

「いえ、そういうわけにはまいりません『人としての尊厳のために』」


――佳奈の魅力にくらくらきちゃって、近寄ることもできないのね☆

妄想は膨らむ。彼の独り言が増える。なんとか自我を保とうという意地なのである。


「長くなるかもしれません。少々お待ちを」


ユージンは深呼吸しながら部屋を去り、今度こそ盆を持って戻ってきた。なんとか落ち付くために1人になったらしい。よく佳奈のもとに戻ってきたものだ。彼には国民栄誉賞を贈るべきだろう。

コトリと3段重ねの皿が置かれる。キュウリのサンドイッチ、スコーン、ケーキ、どれも美味しそうだ。

佳奈がそれを眺めていると、目の前にカップが置かれる。どうやら佳奈の注意を食べ物にそらそうという奇策に打って出たらしい。


透き通るような美しい茶色の紅茶は、窓からさう陽光に反射して煌めきながらカップの中に零れ落ちていく。(なんとなく普通の文章を書いてみたくなりました)

涎を垂らす佳奈を全身全霊で無視して、ユージンは手際よくミルクやレモンを並べていった。たんに早く逃げたい一心だろうが。――よくみるとその中に『味の素』と書かれた袋があるが、用途は不明。…もちろん佳奈はあんまり気にしない。


「味の素グループは世界を越えたわけね」


とりあえずつっこんではみたらしい。佳奈は家族(ご想像にお任せします)のお土産にすることに決め、髪の毛の中に突っ込んだ。ユージンは無干渉を決め込んだらしい。ベストな選択だ。


「お召し上がりになりながらお聞きください『こっちチラとでも見たら絶対泣くからな』」


佳奈はすでにサンドイッチを摘まみながら頷いた。その反動で中のキュウリがポロリと落ちる。

佳奈は慌ててそれを摘まみあげた。


「セーフ…3秒ルールだもんね」


ユージンは何も言わなかったが、落ちた物を喰うのがダメだと知っていることに果てしなく驚いた。


「先ほどカナ様はここがパラレルワールドなのかとお聞きになりました。結果だけを言えばYESです」

「はぁ」


佳奈は曖昧に頷く。言ったことをもはや覚えていないのである。佳奈の脳みそのキャパは雀ほどもない。


「世界には、いくつもの空間が並行して存在しています。カナ様の言葉で言う並行(パラレル)世界(ワールド)ですね。しかし、本来カナ様の住む78番目の世界から、ここ34番目の世界に来ることはできません。いえ、78番目の世界からは、他のどの世界へ行くことも不可能なのです」

「なんでぇ?」


よくわからないくせ問い返す佳奈。これは「男に良い顔をする」という佳奈の特性である。テストに出るのでメモっておくように。


「簡単なことです。パラレルワールド全てを合わせてこの世界は全空間といわれますが……これを大きな屋敷か城だとお考えください」


佳奈はコクリと頷く。もちろんそれには意味などない。ケーキを皿ごと喰ってケタケタ笑っているだけだ。でもユージンは構わない。彼に必要なのは、説明したという事実のみなのだ。さっさとこいつの元から逃げようと誓い、早口言葉が始まる。


「1つの世界は、部屋です。通常、部屋には扉がいくつかあり、他の部屋へと行くことができますね。それと同じで世界から世界へとは渡ることが可能です。ただ78番目は別です。理由は分かりませんが、そこだけは1つの扉も存在せず、完全に孤立しており、自身の世界から出ることはできません。たとえに戻ります。たとえば、扉がなかったとしても部屋と部屋の間に不自然に広い空間があれば、そこに何か空間があることは分かりますよね?78番目の世界は、そのように存在は確かでも、だれにも確かめられない世界として『幻の世界』と呼ばれて長い間研究されてきたのですが外から入れないのだから、中の人が外に出たことがなくても当然といえば当然ですね。おそらく、そういった経緯でカナ様は戸惑われておられるのでしょう」

「この皿甘くてうまい」


もはや「男に良い顔」もしない佳奈に、ユージンは勝ち誇ったように笑んで捲し立てる。


「ちなみに34、78などの数は世界のできた順番です。ですからこの世界は34番目に、カナ様の世界は78番目にできたことを意味しています。世界は無数に存在します。全てを把握することはできませんが最低でも500はあると思われます。しかし、全てが重なっているわけではございません。いや、重なってはいます。なんというのでしょうか……」


ちょっと困った様子のユージンは、ふいに顔を上げぱんっと手を打った。

皿をしゅぶっていた佳奈は、それを詰まらせそうになる。なんと、佳奈が普通に驚いたのだ!まぁなんせ空の上にいるのだから。ユージンは無表情のままである。なんと彼は説明がめんどくさいところを強硬突破しようとしているのだ!


「ご安心ください。落ちる事はありませんから。これは別の世界を覗いて、たまたまそこが空だっただけです。先ほどの私の話で言う、繋がっていない部屋ですね。こうやって移動することはできるのですが…今、私たちは精神体ですので、この世界に干渉することはできません。ちなみに、部屋が遠くなるほど――つまり、中継の世界が多くなればなるほど、関わりは薄れます」


佳奈は落ちる心配などしていなかったが、5教科の内心は全部1なんだよねーとか呟いた。バカだということを伝えようとしているのだが、ユージンには意味が分からない。しかもそんなことは全人類が知っている。


「自分のいる部屋から、隣の部屋に行くのは直接いくことができますね?けれど3つ隣に行きたいのなら、2つ部屋を横切らなくてはいけません。そういうことです」

「へー」

とかいいつつも、欠片も話が分からない。ユージンも求めていない。

彼はさっさと手を打った。元の場所に戻っている。


「分かりましたか?こんなふうに、世界を移れるのですが、そこにあると知っていても行けない場所があるのです。自らの手の表面を触れても、中の骨や肉には触れられないし見られない……そういうことです」

「うげっ」


嫌な表現するなよと、そこだけ理解して呻く。お前の顔が嫌なものである。さっき突き落として空中分解させたかったと本気で思うユージンである。


「というわけですが、私たちはどうしてもカナ様にお越しいただきたかった。いえ、というよりは〝本当はこちらの住人〟という方が分かりやすいでしょうか」

「はっ?どういうこと?」


聞き捨てならぬぞ、と迫る佳奈にユージンはのけぞる。今の言葉も、おぞましそうに口にしていた。ユージンは吐き気を堪えながらよろよろと後退していく。


「私が知っているのはここまでです。私は主に言われカナ様をお迎えしただけですから」

「なら…なんだっけ?ほら!その主に会わせなさいよ。てか良い男?」

「リドウォール卿でございますか?主は今出ております『てめぇに比べりゃ全人類が超絶美貌だろうよ』」

「どこに!いつ帰ってくるの!てか自分で連れてきたんじゃない!リドウォールだかウォータースライダーだかオイルショックでもなんでもいいけど。良い男なら早く会わせなさいよ舐めさせなさいよ頂かせなさいよ!」


ユージンは主の危機に怯えて、震えていた。もはや最初のキャラが崩壊している。可哀そうに。他の作者さんに書いてもらえれば、冷静沈着な美形執事だったのに。

そこでユージンに救いの手が差し伸べられる。いきなり窓が割れて炎が飛び込んできたのだ!会話はここで途切れるのである!ユージンは神に深く感謝した。

一方その炎は。


『お前……なぜ今さら戻ってきた!!』

「は?」


喋る炎に興味津津な佳奈に炎が突っ込む。レイがそのすきに命からがら逃げ出した。


「うそ」


呟いた佳奈の視界が炎で染まる、目も閉じれずにそれを見つめた佳奈の前で、突然炎が散った。何かが壁にぶつかって跳ねたようにも見えた。


『くそっ!……いつか、いつかかならず……この恨みを……』


炎が舞う。それが消える直前に黒いバラの花びらに変わった。

無数のバラが佳奈に降りかかる。


「黒いバラ……花言葉は〝いつかあなたを殺しに行きます〟ですね」


ユージンの静かな声は、妙に部屋に響いた。(宣誓!こんなちゃんとした所もないと、さすがに長期連載は難しいなと作者は思います)


「な、なに?私なんかしたっけ?家庭のある方に手なんか出してないよ??……あ、でもまって。この前の援助交際の人は既婚者だったかも」


佳奈はユージンの清潔な執事服の裾を握った。


「クッキーモンスター!!」

ユージンはいきなり指をならし、その場でくるくると回転する。と、同時にエルモが部屋の出入り口から飛び出てくる。

「あっ!エルモ!!ねえ教えて!!なにが起こっているの…」

その瞬間、エルモの毛深い拳が佳奈のどてっ腹にヒ~~ット!!


「に…2度あるこ…とは…3度ある…って本…当…だな…」

目の前が、闇に塗りつぶされた。



うふふふふふふ。

作者は壊れました。もう気にしないでやってください。


これからも存分に壊れる気ですので、読む方もかなり心構えが必要です。

次回、なぜか佳奈が移動しまくります。

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