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巻ノ二十八 お誕生日祝いは貴女の身体で

そもそも、すべての始まりは変態王アルフォンソのささいな一言だった。


「ユージン、君は恋人はいないのかい?」

時刻はお昼過ぎ。てっぺんに昇った太陽がギラギラと執務室の窓を通して侵入して来る。

キーコ、キーコと椅子に座りながら書類の山を眺めているアルフォンソに、ユージンは首を傾げた。


「…恐れながら、質問の意味が分かりかねますが」

「いやいや余計な解釈をせずに、言葉をストレートに受け取りなさい。まんまの意味だよ」

ハア、と溜息を零すと口を付けていた紅茶のカップを机に置く。

中途半端に残された紅茶は、強い昼の日差しを浴びてキラキラと輝いていた。


ちなみに、この紅茶はアルフォンソが自分で用意したものだ。

最近、この変態王は『特性紅茶を作る』という新たな趣味を発見したらしく、毎週何回かは味見役としてアルフォンソが作った紅茶を執務室ここで飲むのがユージンの日課になっていた。


質問されたユージンは逆に聞き返した。

「この私に、恋人がいると思いますか?」

「ん~だって君を嫌う女性レディーがいるとは思えないがね。有能、容姿も完璧。まさに『りあるに充実』じゃないか」

なかなか話そうとしないユージンに苛立ちを覚えたのか、アルフォンソは机を人差し指で小刻みに叩く。

「得に最近は…あの変態残念顔女王クイーン・アグリー・プロバートとも親しげじゃないか」

その言葉に、思わずユージンの本性が顔を出す。

「馬鹿なのですか貴男は。あんなグチャグチャしたきしょい物体など、視界に入っただけで吐き気がしますよ。その証拠に最近は精神安定剤を携帯する始末」

「だろーね(笑)あんなのもっての他だ。そこらのドブにでも埋まればいいのに」

「ですよねー(笑)もう生きている価値もありませんよ。N●SAにでも売り飛ばしますかね」

「いいねー(笑)ああ、ゴリラに売春でもさせる?」

「アハハゴリラって(笑)もぉ、本当に貴男はお口がお上手ですね」


ハハハ、と執務室に笑いが漏れた。今日も王城は元気イッパイである。

たっぷり40分間『KANAトーク』(おもに悪口)をした後、アルフォンソは虫も殺さぬような笑顔でユージンに書類の束を突きつけた。

「じゃあ、これを機にお見合いでもしてみないか?そこに僕が選んだ選りすぐりの女性達が載ってるから」

「…………は?」


ユージンは硬直した。















同時刻、とある王城の一室では。


「ハァッピバァ~スティトゥユゥ~ハァッピバァ~スティディア羽全身タイツエルモ~ハァッピバァスティトゥユゥ~」

おどろおどろしい、鼓膜を狂わせるような歌声が部屋に漏れていた。

声の主である佳奈の口からはヨダレが溢れ、目の下にはクマらしきものができ、全身から体臭を放っている。

今日は普段何かとフライトなどでお世話になっている『羽全身タイツエルモ』の誕生日だ。

なのでこうして佳奈が企画し、誕生日会なるものを開いているのだが…

お祝いされる側の羽全身タイツエルモの笑顔は引きつっており、全身から滝のように冷たい汗が流れていた。

彼は、こんなに恐ろしい誕生日会というものを見たことがなかった為だ。


ふぅ~と、何故か佳奈がバースディケーキの蝋燭を消す。佳奈の強烈な口臭を浴びたケーキは腐りおちた。

「………。」

ちなみにこの部屋には今二人を含めて四人の人間がいるのだが、残りの二人の反応も似たようなものだった。

ハンカチで口元を覆っているのがマリーベル。

口を半開きにしたまま正座をしているのがハミルトン。


佳奈を中心に『脅威のオーラ』が出ているため、この部屋の空気は最悪だった。


「さあっ、お次はプレゼント交換よ―――っ!」

「イ、イエーイ!!」

やけくそになってテンションを上げるハミルトン達。佳奈はCDプレイヤーのスイッチを押した。


『ヘイ!尾瀬!!(ブオ~ピ~♪)』

割れた音質とともに意味不明な音楽がかかった。バックでブオブオいってるキッタない楽器はトロンボーンとホルンだろうか?

何にせよ奏者の腕を疑う。


この音楽にあわせてプレゼント交換がスタートする。

可愛らしい包み紙に包まれた四つのプレゼントが運ばれだした。


途中、流している音楽の中に『あっ、間違えちゃった!』『もぉ、ダメな子ね☆』というイチャイチャ全開の会話文が混ざって聞こえてくる。リア充爆発しろ。

そして五周目あたりに突入した時、音楽が止まった。佳奈は手の中に納まっているプレゼントを見る。


ひどく小さな箱だった。ピンクのリボンでラッピングされているが何だか気に入らない。

佳奈は隣のハミルトンをチラリと見た。ハミルトンの身長に届きそうなくらい大きな箱だった。じゅるり、と舌なめずりをする。

「そのプレゼント、もらったぁぁぁ~~~!!]

「!?」

ハミルトンを勢いよく押し倒す。辺りに佳奈の鼻息が響いた。

「グヘゲゲ…そのプレゼントをくれなきゃ、襲っちゃうぞぉ~」

フンガフンガ。

「!?ちょ、何するんですの!!」

フンガフンガフンガフンガ。

「ら、らめぇぇ~!!」

ぶっほぉぉぉぉ~~~~~~~!

キタ――――――――――――!!


ブッシャアア!!

ホースで水を勢いよく発射させた時のような音が部屋に響く。

至近距離にいたマリーベルとハミルトン、そしてエルモはモロに佳奈の鼻血をくらった。


「……。」

「……。」

『……。』


毛色が赤いエルモはまだいい。だが、問題はピンクのふりふりドレスを着たハミルトンと、純白のレースを身に纏ったマリーベルだ。

つ、とマリーベルの頬を赤い液体が伝う。

純白レースは見事に真っ赤に染まっていた。顔にも数滴血が跳ねている。


ひく、と自分の服を台無しにされた二人の頬が引きつった。

次の瞬間。


「やあやあレディー達、これはこれは悲惨な絵図だね~」


もそ、と佳奈がもらう予定だった小さなプレゼント箱が動いた。

まるで生き物のように小刻みに震える。

「じゃっじゃ~ん!」


箱の破裂とともに現れたのは――

黒いパンティ一枚のみを装着した、全裸のアルフォンソだった。


「……………………。」

しん、と時が止まる。

だが、彼女達はいくら戦闘に慣れているからといい、所詮は二十歳にも満たない少女レディーである。

よって…


「うっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

「寄らないでぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「オパンティィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」

「魔法の言葉でた~のし~い…ぽぽぽぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!」


ヌホー!!と、佳奈の鼻から噴水のように溢れる二度目の鮮血。


数分前まで『たのしいたんじょうびかい』を行っていた部屋は、血の惨劇と化した。



















その頃、ユージンは小走りで城の廊下を走っていた。

(アルフォンソ様はどちらに…?)


先ほど、何の詳細説明もなしにユージンにお見合い写真を押し付けて消えてしまったアルフォンソの姿を探す。

(そういえば…今日は佳奈様達が『誕生日会』なるものを行う予定でしたが、まさかそこに入り込んで…)

一瞬脳裏をちらつく考えを頼りに、ユージンは佳奈の部屋に向かう。


廊下は何やら騒がしかった。笑い声?だろうか。

まあ女子の誕生日会だ。今頃、和気あいあいとプレゼント交換でもやっている所だろう。

(楽しくやっているようですね…)

苦笑しながら部屋のドアノブを回す。そして、ドアを開けた先に広がっていた世界は―――


「あぎゃあはははははははははははははははははははははははは!!!」

「いやあああああああ!、来ないでぇぇぇぇぇ!!」

血にまみれながら狂ったように笑い続ける佳奈と失神したエルモ。

そしてパンツ一枚のアルフォンソに追いかけられ逃げまくる、血だらけのハミルトンとマリーベル。


「………。」

ユージンはニッコリと微笑を浮かべると、深呼吸した。

そしてパタン…と扉を閉める。


あれはきっと幻だ。そうに違いない。

(幻想だったら…早く誰かぶち壊してほしいですね)


切実。










…続け。


どーも!作者其のニです!!

いや~久々にココクリに登場できました。

書いてみて何ですが、ナニ?この話…


まあ意味不明なのは今に始まった事じゃないっ!!←やけくそ

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