巻ノ二 出会い
窓からさす陽光の眩しさに、少女は目を覚ました。(ここで黄色い歓声 byわたし)
「ん?朝…てかイッタッ!」
寝ぼけながら起き上がろうとすると、腹の辺りに鈍い痛みが走った。声を上げてそこをさすると、何だか意味不明な記憶が色々蘇ってくる…。(何よりもコイツが意味不明だ)
近所の子供から犬を強奪したり、監視カメラ相手に東京ドームコンサートをしたり、車にひかれかけたり…というか、ミッキーマウスマーチやらエルモを名乗るヘンタイやら……。
「そういえば、ここはどこ?」
少女は今さら、ここが自宅でないことに気付いた。なにせ自宅は防空壕だ。ベッドなど固めた粘土の枕しかない。どろまみれだった服(そもそも自前は裸エプロンだった)は白いワンピースのような服に変わっていて、ほのかにバラのよい香りがした。でも顔面は下水道だ。
今しがたまで眠っていたベッドもなめらかなシルクらしき肌触りで、ものっっっすごく高そうだ。首相官邸に強盗に入った時に以来の高級感である。
下品にきょろきょろ辺りを見渡せば、大きな宝石の埋め込まれたテーブルやイスが品よくおかれ、テーブルの上には細かな彫刻のされた花瓶があり、青いバラが飾られていた。これを売れば、防空壕に掛け軸を飾れるだろうか?
他にもドレスを着てバラ畑の中でほほ笑む女性の絵や、丸い鏡、オルゴール、たくさんの小物。色々ありすぎて目移りしてしまう。どれが一番売れるかで。
けれど美術館のようなこの部屋の中で、ひときわ少女の心を掴んだのはそのどれでもない。テーブルの上に置かれた、1つの懐中時計だった。
「うわぁ…キレイ。あたしが」
やっぱり意味不明。だが確かん綺麗な懐中時計だった。色は、水晶のような透明な白。他の装飾品のように宝石などはついていなかったが、陽光を浴びて輝く姿はどれよりも美しかった。角度が変わるたびに、色も変わる。どう考えても少女の薄汚れた小汚い手で触れていいものではない。しかし彼女の毒牙がそれに襲いかかっていく。なぜだか、表情が虚ろになった。
その瞬間――。
ガチャリとノブが回り、青年が1人入ってきた。少女が涎を正す美青年だ。背が高い。多分あと三秒で舐めまわす。
「おや?失礼、お目覚めだとは気付かずに…」
ピシリとしたスーツのようなものに身を包んだ青年は一礼して少女に近づく。燕尾服だ。コスプレだ…と涎度が五割増しになる。もはやベッドの下半身部分はずぶぬれ。ノビ太君も絶句である。
「痛みはありますか?」
あまりにノーマルな言葉すぎて少女は意味が分からなかった。が、彼の視線が腹部に向けられているのに気付きとりあえず頷く。――つまりわたしの身体がみたいのね☆
青年が恭しく頭を下げた。
「それは失礼致しました……彼等クッキーモンスター一族は時に我々の理解の範疇を超えますので…あなた様をエルモに迎えに行かせたのは間違いでした。ですが、情けなくも、ただ今屋敷にいるものの中で一番戦力になりえるのはエルモだったもので―――」
「おっとぉおお、きたっきたよ二次元!リリカルなのはわたしよぉおおおおお」
作者は切実に誰か止めてあげてほしい。
しかし青年は無表情に淡々と話しを進めてしまう。
「申し遅れました。わたくしは、屋敷で執事を務めております。ユージンと申します」
少女はここにきて、やっと彼が外人なのに気付いた。碧眼である。確認して鼻水まで出てくる。
今夜のおかずは彼に眠るとしよう。いい夢が見れそうだ。いや、いっそ現実に!
そんなことを考え内心ウゲヘヘしながらも、少女はいまさら可愛い女の子を演じてみることにした。本当にいまさらなうえ、何度も言うが顔面は崩壊している。
「どうも、私は立花佳奈でぇ~す。え~と……ちなみにここはどこですかぁ?」
ピースをしながらきゃぴきゃぴするが、ユージンは全く表情を変えずに答える。むしろ恐ろしすぎて表情が固まったのかもしれない。
「クレスティア王国。リドウォール領のリドウォール伯爵邸でございます」
「りどうぉーる?」
佳奈は目を丸くして、硬直した。どこだそれは、初めて聞いたぞ。(ちなみに佳奈は日本とアメリカしか分からない。社会は1だ)
つか伯爵って言ったよ?ヤバい、マジでファンタジーだ。主人公だよわたし!リリカルだぁああああああ。(ちなみに作者は某リリカルな話を読んだことがない)
うへへへっとかなりキモイどころじゃない佳奈に後ずさりつつ、ユージンは生真面目に話しを続ける。冷や汗は見間違いではないだろう。
「はいリドウォール伯爵の治める領地でございます。この屋敷はリドウォール卿の持ち物であり、カナ様をお助けになるようご命令なさったのも主でございます」
「佳奈様!」
助けられたというより、攻撃されたぞと思ったがどうでもいい。美青年に「様」付けされたのだ!
佳奈は落ち着けと自分に言い聞かせ…たはずがない。涎を垂らすだけだ。だが…まぁとりあえずどうしてここに連れてきたのか聞こうとした。
口を開こうとしたその瞬間、甘いバラの香りが鼻腔をくすぐる。
「え?わたしを美化するためのオプション?やぁだぁあ!わたしそんなのなくても全然綺麗なのに!」
佳奈は鏡を見たことがないのか、目玉が腐っているのかもしれない。グウグフと辺りを見回すが、あるのはテーブルの上の青いバラのみだ。見るとユージンも無表情のまま辺りを見ていた。――佳奈の魅力で悩殺ね☆
「バラの香りでございますね……」
全くもって常識人である。常識人過ぎて、かなから見ればすごい変な人であるが、佳奈はそんなの超越しているので気付かない。
それは始め、ひどく優美に匂っていたが、ふいに濃度がます。(普通の文章かいちゃった…!)
甘ったるくて気持ちが悪くなるほどに香りはまし、佳奈は頭痛がした。
「キャ―――――――――――!!!」
そこに響いたのは、まるで絹を裂くような女性の叫び、とっさに窓から見れば屋敷の庭の辺りから煙が出ている。――佳奈をさらいにきた悪の組織ね☆
…妄想は、止まらない。
「だれかー!!!助けてー!!!」
2回目の女性の叫び声。
そして、佳奈の頭の上にはpuestionマークが3つ…。
「え~っと……?」
なにが起こっているのかな?と、ユージンに聞こうと振り返ったが、そこに彼の姿はない。
どんだけ行動がすばやいねん、と1人でツッコンだ佳奈だったがさすがに1人だとむなしくなってきたのでやめる。
…とりあえず、今の状態を整理すると……。
①燃え盛る炎。
②二酸化炭素が出まくっている。
③すごくマズイ状態。
そのまま、しばらく硬直したままの佳奈を、部屋にあった火災警報器の高らかな音が目覚めさせた。
『ピーッ、火事です。火事です。家事です。あっ…間違えた』
「えっ…マジで!?マジで火災!?」
佳奈は慌ててベッドから飛び降りる。反動で顔面から落ちた。(ハイ、自主規制)
とにかく逃げなきゃ!!と思う佳奈のすぐ隣で火の手が上がる。少し足が溶けたが気にしない。(人生何事も気にしない☆)
「ひ、火~っ!?」
赤いバラ色の炎は、カーテン、ベッド、テーブル、と次々に部屋を飲みこんでゆく。時折物が燃えるパチッという音とともに、火柱は勢いを増す。佳奈は顔をしかめた。
「ゔっ…くさっ!!けむっ!!」
佳奈は、激しくせき込んだ。ぜんそく持ちには辛い状況である。というかハッキリ言うと佳奈の体臭の方が臭い。
煙は一向に晴れず今度は自分の体液でひどい眩暈までしてきた。
(フ…ッ、やっぱ…14年間風呂に入らないのはマズイわよね…)
と、その時―――。
「エルモ!?」
火の海の中から突然、エルモが現れた。炎の中で見たエルモは顔に光があたっており、何だかりりしく見える。ドキン…
心なしか全身がボウボウ燃えているが気にしない。萌え萌え~
「やったー!!助けにきてくれたんだ!!ありが」
『Per favore sia quieto,La Regina della rosa,(静まりなさいバラの女王よ)』
と、その時。エルモの毛深い手が佳奈の丹田を捕えました!!
「ゔ……ま…た…このパターン…か…よ…」
視界が閉ざされ何もかもが闇に包まれた。
―――・――:*:――・―――
窓からさす陽光の眩しさに佳奈は目を覚ました。
「ん?朝…てかイッタッ!」
寝ぼけながら起き上がろうとすると、腹の辺りに鈍い痛みが走る。声を上げてそこをさすると、何だか意味不明な記憶が色々蘇ってきた。
ユージンとかいう執事さん…クレスティアとかっていう王国…女の人の叫び声…炎…火災警報器…。
「お目覚めですか。」
「わあっ!!!」
佳奈は驚きのあまり跳ね上がった。(跳ね上がりすぎて大気圏まで行った☆)
と、いうのもあの、ユージンという執事がいきなり顔を覗き込んできたからだ。
「え?なになに佳奈リンは朝プレイもいけちゃうわよぉ~」と鼻息荒く言うが、ユージンは華麗にスルーする。
「先ほどはまことに失礼致しました。〝エルモ族〟は獰猛な民族でして…」
何やらデジャウなセリフだが、佳奈は記憶力が壊滅しているのでもちろん覚えていない。
ユージンは丸い染みがいくつもできた毛布をすばやく取り替えながら言う。
この丸い染みが何なのかはご想像にお任せします。考えることは大切だヨ!by佳奈
「炎は私どもがくい止めましたので、どうぞ、ご安心の上」
「ん?今、〝私ども〟って言ったよね。この屋敷ほかに誰がいるの?」
「ええ。もちろんです。私、エルモ族の人々、それに〝千人同心〟も」
はあ?千人同心?佳奈は首を傾げた。傾げすぎて首が取れた。
よいしょ、とベッド脇に落ちた首を拾おうとするが、ユージンが精一杯蹴飛ばしたため首は窓を破って空を飛ぶ。
佳奈は「まあいっか~」と首が無い状態でベッドに座りなおす。座った衝撃で漏らした。
ユージンは佳奈に視線を合わせないで淡々と説明する。
「ご存じありませんか?千人同心とは、江戸幕府直属の郷土集団でして…」
「今は平成です」
「いいえ、それは違います。佳奈様。今は…平成ではなく…それどころかここは佳奈様の住む地球でもないのです。」
「ちっ…地球でもないって…それってパラレルワールドってことぉ!?」
「……ん~まあそのようなものですね。」
もはやお前自体がパラレルだよ、という言葉は言わない。
疲れを取るために、紅茶でもいただきますか?と言って、ユージンは席を立った。(逃げ)
何やらドアの外で吐くような音が聞こえたが気のせいだろう。
そして佳奈は1人残された。
額をそっと手で押さえて豪華絢爛なオーラ漂うベットに腰を下ろす。
「私…雨が降ってて、目を瞑ったまま家に帰ろうと…でもそうしたらなぜかこのクレスティアっていう国に辿りついて…」
必死に記憶を辿る佳奈。何か心に引っかかるものがあったのだ。
「何か…何か忘れているような…」
生まれてくる時に色々忘れてきた佳奈は必死に考える。
と、その時、ドアが勢いよく開いた。
ユージンと思った佳奈だったが……次の瞬間、体が押し倒される。
「な…何っ!?ユージンってそういう趣味!?まぁ別にいつでもカモンだけどぉ~」
慌てて上を見上げると…。
「レ、レイ!!!」
はい。こんな感じで第二話です。
どうでもいいですけど、サブタイトルが和風なのは洒落ですよ洒落。
超どうでもいいとか思ったそこのあなた。そんな冷たいこと言わずに、もっと暖かい目で見守ってください!!
まあ、そんなこんな次回もこんな感じで続きます。