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スリーセンス  作者: Aju
19/33

19 ウリル環境大臣

 王宮の受付で大臣への面会申請手続きを済ませて、街中で軽く夕食をとった後、宿に戻ると宿の主人が玄関からわたわたと飛び出してきた。


「シャノンさま。王宮からの使いの方がお待ちです!」

「え?」

 ユーリは驚いてシャノンにも伝える。

 シャノンも驚いたようだった。


 なぜこの宿が分かったのだろう?

 たしかに申請書には宿の名前を書いてはきたが、それはついさっきのこと。

 いや、それより王宮の使者を待たせてしまったとは!

 ユーリは慌ててシャノンの手を引いて宿の玄関に飛び込んだ。

 テルクも後に続く。


 ロビーというにはあまりにもお粗末な宿のロビーで、くたびれた革の椅子に座っていた使者は3人を見かけるとさっと立ち上がった。

「これは、スリーセンス殿。お初にお目にかかります。パラタノと申します。」

「こちらこそ! お待たせして申し訳ありません。わたしがユーリ、こちらがシャノンでございます。この少年はテルク。仲間として一緒に行動しております冒険者です。」

 ユーリはシャノンに指で会話を伝えながら、深々と腰を折って礼をした。

 シャノンも、ユーリが手で伝えた方向に向かって礼をする。

 仲間、と言ってもらえたのが嬉しかったのだろう。テルクは顔を真っ赤にして笑顔を見せ、それから慌てて2人にならって礼をした。


「いえいえ、こちらこそ前触れもなく突然お訪ねするという無礼をお許しください。」

 それからパラタノと名乗った使者は、宿の主人に目配せをした。

 下がっていろ。という意味だ。

 そのしぐさに、並ならぬ威厳と気品がある。


 何者だろう?

 とユーリは思った。

 まだ名前しか名乗っていないが、下っ端ではなさそうだ。


 パタラノはロビーのいちばん奥の、やや暗い場所にある椅子に3人を案内すると

「どうぞおかけください。」

と椅子を勧めた。

 わたしたちのようなただの冒険者が王宮の使者より先に座っていいものか、とユーリは迷ったが、シャノンが『座ろう』と手に送ってきたので、そのまま座った。

 テルクはすでに、ニコニコ顔で座っている。

 使者もそのあと、ゆったりとした動作で腰を下ろした。


「申し遅れました。私、パラタノ・ドムドムベルと申しまして、ウリル環境大臣の補佐官を務めております者です。」

「補佐官!?」

と声を上げてから、テルクは慌てて口を押さえた。

 補佐官といえばNo.2ではないか!

 そ、そ、そ・・・、そんな偉い人がわざわざ宿まで会いにくるんだ! スリーセンスって。

 テルクは目をまん丸にして、口を押さえたままユーリの方を見る。


 そのユーリは怪訝な表情をしていた。

「ウリル環境大臣?」

 ユーリたちが応募したのはカリンドア国土経営大臣の魔獣退治プロジェクトで、一応名の通った「スリーセンス」に大臣が面会を希望している、とのことだったので、今日その面会申請を行なってきたばかりなのだ。

 使者はてっきりそのカリンドア国土経営大臣の使者かと思ったのだが、意外だった。


 大臣補佐官という肩書きにユーリが驚いて立ちあがろうとするのを、パラタノ補佐官は両手と微笑みでもってそれを抑えた。

「どうぞ、(かしこ)まらないでください。お忍びなんです。内々にお伝えしたいことがありまして。」


「2〜3日のうちに、国土経営大臣との面会があると思うのですが、それはそのままお受けくださいますよう。その後・・・」

と、パラタノ補佐官は声をさらに落とした。

「王宮のせせらぎの間においでください。ウリル大臣が内密にお会いしたいと申しております。名にし負うスリーセンス殿に。案内(あない)役の衛士(えじ)には言い含めておきます。」


 そして最後にさらに微妙なことを言った。

「くれぐれも、カリンドア大臣には気取られませぬよう。」



しばらく間が空いてしまいました。

覚えてます? 前の話・・・。

王宮内での政治的力学をどう描こうか、ちょっと迷っていたんです。

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