ヒロインタブーⅡ
あの伝説の逆転満塁ホームランから一週間。
出がらしオーンズ対ふにゃふにゃ銀行の試合が映し出されている。
音は限定的だ。
プレーボールから三十分。静かに放送中。
苦情の電話が本社に寄せられたそう。
また謹慎させられては敵わない。
ぼちぼち始めるとしますか。
ふああーあ。
ええお久しぶりです。実況の熊田です。
前回の放送でえらい数のお叱りの言葉を頂きました。
その為一週間の謹慎処分を命じられました。
困るんだよなあ。迷惑なのよねえ。おっと本音がついつい。
解説は今回もボウ田さんです。
余りにもクレームがくるもので三十分ほど場内音声のみでお送りしていましたがもうそろそろ限界と思い切り替えました。
場内音声のみ三十分とは画期的だと思うのですがいかがだったでしょうか?
あれマイク入ってないや。
では改めてボウ田さん。今日の試合展開はいかがでしょうか?
うーん。寝ていたので何とも。
それ言っちゃダメ! 私も同じですがね。おっと失礼いたしました。
それでは試合に戻ります。
おっと! 再びボウ田さん戻してしまいました。
大変ですね。条件反射とはこれ致し方が無いですね。
ええ。試合へ。
五回の表を終え七番からのピッチャーにとっての好打順。
どうですかボウ田さん。
二分とみた。
惜しい! 一分で三者凡退。試合は後半戦へ。
ふふふ……
ずいぶん余裕ですねボウ田さん?
今日は楽ちん楽ちん。
そう。何とここは副音声なんですね。
だから誰も聞いてないや。はははハッピー!
まさか副音声に飛ばされるとは思っても見ませんでした。
ギャラが同じなら文句ないよ。
ボウ田さん。前向きだ! しかし前回の放送でボランティアだと言っていませんでしたかね?
ふふふ…… ノーコメントで。
しかしやってられませんね。
こっちに振らないでくれ!
えーここでゲストを紹介します。
アイドルの球っ子さん。
始めまして地元の野球アイドル。球っ子です。
一人なんですね。珍しいな。
へへへ…… 二人組だったんですけど先月辞めて私一人なんです。
おーっと謎多きアイドル爆弾発言だ。
うーん。興味ないね。
場内と共に静まり返った。
ごめんごめん。スタイルはいいね。
おーっと堂々のセクハラ。これは許せませんね。
ミャアミャア
どうしたのこの子?
何と嘘泣きを始めたぞ球っ子。
ミャアミャア
これは強敵現れた。
それではお叱りのメールでも…… ああ、ある訳ないか副音声だから。
しかし君遅くないか?
おーっとボウ田さんまさかの叱責。これはまた泣いてしまうのか?
ミャアミャア
だって遅いし…… 遅刻だよ。
ボウ田さんまさかの名推理。私も少しだけ思ってましたが触れてはいけません。
それでは試合をどうぞ。
次回球っ子の正体が判明。物語は急展開を迎える…… かもしれない。
<完>