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恋なんて、めんどくさい  作者: mi✩.*˚(みい)
7/10

chapter7:一歩ずつ、前へ

 ーーカチャ


夜遅くに、そっとユキミが帰ってきた。今日は僕がバイトから帰ると、珍しくユキミの姿がなかった。家に帰ったのか?と思いすぐにリビングを覗いたが、定位置に荷物は置いてあった。一瞬ほっとしてしまった僕のこんな顔は、誰にも見せたくない。


 一応合鍵は渡してあるし、いつどこに行こうとユキミの自由だ。というか、そのまま帰ってくれればいいんだが、今日はココへ戻ってきたようだ。


僕はすでに就寝体制で、ロフトでいつものラジオを聴き始めていた。それを察したユキミがそっと風呂へ向かった気配は感じたが、ドライヤーの音にも気付かないくらい早くに寝落ちしてしまった。




次の朝起きると、少ししてユキミも起きて身支度を始めた。今日もどこか行くの?なんて聞く権利もないので、僕は僕でバイトへ行く支度を進めていた。窓際で出かける前のタバコを1本取り出すと、煙を追い返すようにコチラに扇風機を向けながらユキミが話しかけてきた。


「きのうね、オーディション行ってきた」


いつもユキミの行動は衝動的なので、あまりの展開の速さにも慣れてきたつもりだったが、少しだけ驚いた。


 「え、家の人には?」


 「全然だめかもしれないし、一次とか二次とか?少し前に進めたら話そうと思って…その方が反対しにくいでしょ?」


 「たしかに、さすがだなユキミらしいよ」


衝動的に見えて、計画的。まさにユキミらしいやり口を見つけたわけだ、さすがだな。なにか他にも聞くことあるでしょ?という顔でユキミが待機している。しょうがない、聞いてやるか。


「ところで結果は?」


「一次審査は、残れましたー!」


「だろうな、すごいじゃん!」


さすがにココは褒めどころなので、タバコを持っていなかった方の手でユキミの頭をくしゃくしゃっとしてあげた。お気に入りの方法で褒められたユキミはご満悦ながらも、少し不満そうに聞いてくる。


「なんでもっと驚かないの?」


「ユキミの夢は、叶うから」


「なんで私のことだけは予言者みたいに断言するのよ、心強いけど」


ユキミの夢は、きっと叶う。一歩ずつ進み始めたユキミのことが、なんの夢もない僕はすでに眩しく感じ始めていた。このまま一緒にいるわけにはいかない。


「もうすぐキラキラのスターになっちゃいますね、ユキミさん」


僕がインタビューのようにふざけて聞くと、ユキミもそれに合わせて答える。


「私が例えどんなに輝いたって、それは始まりに背中を押してくれたコウタくんのおかげです」


「うまいこと言うね、それ覚えとけよ?」


そう言いながら、気付けばまた僕は右胸の前に人差し指を立ててしまった。今日はそれにユキミも気付いた。


「コウタくん、私のジェスチャー多いのうつってる!」


「気のせいだよ、真似しただけだって」


「ふふ、なんか嬉しい」


「ごまかせなかったか…」


そして僕たちはお互いの真似をして、くしゃっと笑いあった。ユキミの夢が叶うということは、スキャンダルNGの世界に飛び込むということ。僕たちはなぜ、このタイミングで出会ったのだろう。

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